2、3年前から生徒の中に

硬い参考書を読みたいという声が聞かれるようになった。

今年もある生徒に

読みごたえのある古文の分厚い参考書はないかと相談されたことである。

我々の時代の受験参考書と

現代のそれとはだいぶ違っていて

今は文体が話し言葉調、語りかけ調であったり、

表紙が漫画であったり、である。

受験参考書の幼稚化が始まったのは20年以上も前からであった。

こうした流れにだんだん飽きが来ているのかも知れない。

物足りなさを感じている受験生が増えてきたのであろう。

そうした傾向の反映か、

昔の懐かしい参考書が復刻版で出ていたりする。

『新釈現代文』もそのひとつである。

私が受験生の頃、これは一つの本質を語って

隠れたベストセラーとなった。

私がすぐに挫折した思い出がある『古文研究法』さえも

復刻している。

我々の時代もこれを読み切った受験生は

ごく少数ではないだろうか?

ただ、皆『漢文研究法』とともに本棚には置いてあったのである。

多田先生の『思考訓練の場としての英文解釈』が

時代を超えて実力派受験生に読まれているのもうれしい。

参考書ではないが

加藤周一『羊の歌』(岩波新書)正続2冊を

あっという間に読んで

「面白かった」と言ってきた生徒もある。

軽さが続いた時代のあとに

少しずつ本物志向が再び芽を出し始めているのではないか。

頼もしい若者が増えてきつつあるのではないだろうか。

私はひそかに期待と希望とを抱いている。