私の女房の親友がご主人の仕事の関係で香港に住んでいる。

先日1才半の子供を連れて日本に一時帰国した。

女房も久々の再会に喜んで出かけていったことである。

当然いろいろと話が弾んだそうだ。

香港では子供を連れて歩いている人に対して

とてもフレンドリーだという。

レストランでいかにもキャリアウーマンという若い女性が

ニコニコ笑う子供に

隣の席から微笑みかけ、「ハロー!」と話しかけてきたという。

バスを待っていたとき

子供の手が揺れてるなと思ったら、

後に並んでいた人が子供の手をとってあやしてくれていたのだという。

ところが東京に来て電車に乗ってみると勝手が違った。

ベビーカーは使わず、子供を前にだっこして乗ったのだそうだが、

誰も席を譲ってくれない。

子育てをしたことがありそうな中年の女性の前に立っていても

譲ろうとはしてくれないし、声もかけてくれない。

若い男の前に立ったら、いきなり寝たふりをされたという。

香港は長いイギリスの植民地の歴史の中で

人間関係が成熟しているのではないか。

それに引き換え、日本は未開国の印象である。

いや、日本がそうなのではあるまい、

東京という都会がそうなのだ、と思いたいのだが・・・。

しかし、東京であれ、

本来日本人はもっと他人とのコミュニケーションが温かだったはずである。

日本は未開というより

むしろ、退行していると言えるのではないか。

民族の精神のレベルが退行すれば、

国そのもの、社会そのものが退行するであろう。