電車に乗っていると、新宿駅で4、5歳位の園児たちが

日焼けした、格闘家のように筋肉隆々の引率者に連れられて

10人ほど集団で乗りこんできた。

30代前半、もしかするとまだ20代とも見える引率者が

車両に乗り込んでくるときに

「お邪魔します」と中にいる乗客に向かって声をかける。

電車が動きはじめると

園児たちはその先生のズボンにみんなでつかまったりして

(それなりに混んでいて手すり側が確保できなかった)

転ばないようにと踏ん張っていて、なんとも微笑ましい。

誰かが少し大きな声を出し始めると

「しぃ〜」と優しく黙らせる。

その先生は大きなリュックを二つ片手で持ち、

もう片方の手は吊革につかまり、

園児たちにはズボンにすがりつかれ、

あるいは一人が「気持ちが悪い」と言いだし、・・・

で大変である。

次の駅で乗客が降りて、ドア側にスペースができたが

誰一人勝手には動かない。

先生が「ドアの窓から外を見ていいよ」と許可を出すと

数人がドア側に移動して楽しそうである。

いずれにしても、

屈強なこの引率者の、まわりへと園児たちへの気遣い、優しさに

感心しきりであった。

こういう先生に子供を預けることができた親は幸運である。

若い指導者の中にこのような人材がいることに

未来の明るさを感じたことである。

学生時代、ヨーロッパを一人旅していた時の光景を思い出す。

同じような年齢の子供たちを一人の女の先生が引率していた。

その先生の目がいわく言い難く

優しくかつ厳しく・・・

何とも形容しがたい凛としたものであった。

「ヨーロッパはすごいな」

そのとき漠然とそう思ったことであった。

しつけ、教育の大事さに対する意識の高さが

その女性の凛々しさから伝わってきたからであろう。

こどもがどう育つかはひとえに大人次第である。

帰りの電車に、十代後半の娘と母とが乗りこんできた。

娘はスマホに夢中である。

前の座席が空くと、母親を見やるでもなく

当然のように自分がどっかと腰を下ろした。

立ったままの母親も問題なしの構え。

「あ〜・・・」

やっぱり、未来は暗いか・・・