先日の毎日新聞の記事である。
スイス在住のある女性が15年前に日本に来た時
次のように感じたという。
「なんと洗練された人たちだろう。粗野で品のない私たちの国に比べ、
この国にはちゃんと文明が根付いている。」と。
今70歳になる彼女が日本に来て
道でぶつかっても「ごめんなさい」とも言わず、
つえをついた人が電車に乗り込んできても子供たちは大きな顔で座り続け、
大人たちはスマホに見入って誰も注意をしない、
そんな状況に
「日本もだんだんヨーロッパのようになりつつあるのですね」
と心を曇らせている、という記事である。
これは日本人でも心ある大人なら常日頃感じていることであろう。
さてこうなってしまった原因はどこにあるのだろうか?
人間が目先のことを追い求め
腰を落ち着けてじっくり考えることをしなくなったとき
文化はどんどん劣化していくのである。
大学入試はやたら長い英文を速読即解することを要求し
文科省はすぐに実利の上がる研究に特化するよう大学に通達を出す。
これも根っこを同じくしている。
われわれはもう一度何が人間の価値なのか
じっくり考える時間を持つべきである。
15年前、スイスの女性がなぜ日本に、日本人に感心したのかを問うべきであろう。
それが人間の文化なのだということを問い直すべきなのである。