New! 10/19 [35] 物理「交流回路」の入試事情
「交流」という名の狭い難道
かつての私もそうでしたが、
「交流のところは何のことかさっぱり分からない。」
「たくさん公式が出てくるので、とにかく暗記して解いているだけ」
「訳がわからず、覚えることもできない」
「サーっと授業が進んで何も分からないまま終わった」
まあ、このどれかで、レベル学力を問わずほぼ受験生全員に当てはまるでしょう。 昨年、現役で国立医学部に進んだN君も物理はかなり得意ではありましたが、交流回路については‘特に消化不良'との主訴でしたので、‘消化促進剤を処方’してあげました。
消化不良の原因は、ズバリ「微積分の排除」です。
交流は、コイルを磁場中で回転運動させて発生する電流ですから、周期的に変化します。つまり、三角関数です。その時間的変化を把握するには、時間tで微分・積分すればよいだけです。ここは、数学3で履修する、微分・積分を駆使してこそわかる、というか、そのために数3の微積があると言っても過言ではありません。
・・・が例によって、「高校生が物理で微積分を使ってはいかーん」とかいう考えの高校教師の方がほぼ100%ですから、当然にうまーくそこら辺をぼかして、天下り式に公式を示して、当てはめるというような授業になってしまいます。
代ゼミと駿台の想い出
実は、私がかつて、東京は代ゼミ本校の東大クラスに在籍していたときも、このレベルでの交流の授業でしたので大いに不満でした。「トップ予備校のトップの講師がこれかい!!」と怒りました。化学は代ゼミの大西先生が日本一でしたが、物理は駿台の後塵を拝していました。
真なる教えを求めて、次年は、駿台の市ヶ谷の東大理3αに移籍しました。やはり、物理は駿台!! トップのS先生は、何の配慮も忖度もなく、バンバン数学を駆使して、物理を明快に講義し、もちろん交流も微積でスッキリわかりました。数学と物理が一体化してこそ、電磁気学およびその応用としての交流回路は記述できるのだ、と。こんなのは大学教養レベルでは普通であり、常識です。
高校物理だけが、真実を隠し、いびつな形で知識を、天下り式に与えるのです。昔も今も、そんな物理教育の歪みは、ほんの1mmも進歩しておらず、旧態依然です。ここが解決されていたら、私などがわざわざ物理に関わる必要はないのです。
私は求め求めて、本物に出会うまで随分遠回りして、長い月日を費やし(その分感激は大でしたが)ましたが、せめてこの長野の地で、同じ憂き目にあっている、しかし、本物を求める夢を諦めていない若者がいると確信して、GHS長野校で、かつての私が受けたかった物理の授業を展開しているわけです。
処方
具体的には、『物理重要問題集』(数研出版)の交流の章の問題を、本来の微積分を駆使した解答に書き換えてみせることです。10問もありませんが、それで必要十分です。交流は「難所」ではありますが、範囲は狭く、踏破するのに手間はかかりません。それでもう追加で問題を解く練習はいりません。法則と式の操作は論理的には全て同一ですから。
「ああ、そういうことだったんですか。回路の法則を作って微積でチョンとするだけじゃないですね!!」
「公式なんて覚えなくても勝手に出てくるじゃないですか。だから、もう完璧に覚えてしまいました(^^)v」等々・・・心晴れやかに完全治癒します。
昨年、今年と数名の生徒に個別指導(ということは同じ内容を繰り返することになるわけで・・・)したおかげで、自分の中でコトバと流れがテキスト言語として固まってきて、長年の懸案であった、交流の基本テキスト(ただし、難関入試から見た基本ですが)を一気呵成に書き下ろすことができました。
どうしても、交流回路はマイナー分野だけに、テキスト作りも後回しになってしまいます。特に、数式の入力が手間がかかるので、板書した方が断然早く、それで済ませて、データ化を先へ先へとのばしてきたのです。が、このタイミング、二学期開始後の9月の繁忙期にそんなことをやっている暇は本当はないはずのに、何でだか「原子物理」とセットでテキストが出来てしまったことは、自分でも奇跡(=奇行かつ気まぐれ、ないし何らかの啓示?)とさえ思っています。
ただ、テキスト作りっていうのは「結果オーライ」です。一度作ってしまえば、次の場所に進むことができます。
で・・・今回は、その交流テキストを全ページ、無料公開します ! その理解をふまえて『重問』を解き直せば、入試対策は完成です。
これは、このHPに辿りついて、このブログをここまで興味を持って読んでくれた受験生へのささやかなギフトです。・・・かつて不遇な受験生であった自分への、遅ればせのギフトを兼ねて。
『GHS 体系物理読本_特講2_交流回路 他 』全46頁 電子ブック版
(もちろん、冊子もありますが、これはさすがに有料です。)