GHS長野校・主宰の天野です。
本ブログ[2],[3]に続いて、中高一貫校の現状の問題を取り上げます。
中高一貫校のカリキュラム上の特色は第一に、「高校内容の先取り学習」です。
高校入試がない分、中学三年の内から高校の内容を先取りして、高校二年生で高校の内容を修了して、高校三年の一年は入試レベルの受験勉強に使うことができる—これが、中高一貫校の謳い文句です。そうなれば理想です。
そうであれば、GHS長野校なんてなくていいのです。
しかし、[2]で指摘した通り、これが内実を伴って意味があり可能なのは、それに耐えうる学力を備えた生徒である、というのが大前提です。
灘や開成等の有名私立では、そもそも偏差値が70超の生徒が集うのですから、これくらいの「大食い」や「早食い」で丁度良いのであり、通常カリキュラムでチンタラやっていると生徒たちが持て余すのです。
早く先を知ることが楽しく、次々に知的な刺激があるのが嬉しいのです。だから、「そうでない生徒」に対して同じことをやろうとすると、ひどい消化不良・食べ残しが発生し、難行苦行か、完全に置いてけぼりをくらうかになるのです。
今回は、これを科目別の視点から説いてみましょう。
まず、英語と数学はセーフ
これは「そうでない生徒」に対してもそんなに問題ありません。
なぜなら、英語はこの段階では「語学」であり、語学レベルなら、中学生でも英検準二級くらいは取れるからです。帰国子女なら小学六年生や中一で二級が取れるのですから、その程度の内容の英文でしかありません。そもそも、あくまでも実用英語検定ですから。
数学についても、数学Iの式の計算や二次方程式・二次関数レベルですから、これは中学三年生でやっても構わない内容ですし、数学自体が学習年齢をあまり問わない性質を持っていますので、先取りは普通の生徒でも可能なのです。確率なども中学と高校で大きな溝はありません。
その意味で、数学が長野の中高一貫校で先取りが行われていることは当然のことですし、それに合わせて長野校でも指導しているので、支障はあまりないと言ってよいのです。むしろどんどんやって構いません。
「可」なのはここまでです。とはいえ、「普通の生徒」だと、英語か数学、どちらかについていくのが精一杯となるものです。
物理は完全アウト できる訳がないのに無理をすると……
中学の理科と、高校の物理や化学との間には大きな溝があります。
第一が、「定性と定量」の違い。定量とは要するに「計算問題」です。
特に化学の計算問題は、『体系化学』に示したように、molを中心に、系統的に積み上げていかないと、計算は苦手で「全然出来ない」となります。毎年、そうやって作られ高校から放り出された「化学計算難民」がGHSにやってきます。なんでこんな簡単な計算さえ・・と思うくらいの状態で卒業させられてきます。
ヒドいもんです。
でも、化学はまだマシです。定性的知識の割合が多いので、こちらを優先していれば中三や高一でもなんとかなるのです。
第二は、数学レベルの違いですが、化学は、基本的には四則演算と一次方程式で済みますから、数学的にはさして問題ありません。ただ、化学計算を体系的に教えるメソッドがGHS以外には存在しないので、ここから壁に当たります。これは高校生全てに当てはまることです。
大問題は、物理の方です。
物理は、ほとんどが「定量」です。要するに計算問題ばかりです。しかも、数学のメインツールは普通高校二年生で学ぶ微分・積分と三角関数です。これ無しでは、本当の物理が学べません。
すると、どうするか?数学Iや三角比までの不十分な数学の知識で、説明可能な部分を飛び飛びに、つまみ食いしながら教えるのです。それでは知識がつながらず、物理の姿が見えず、雑学的なモザイク的な知識になります。
それで、「科学の盟主たる物理学」の入試レベルの学びができる訳がありません。
結果、「物理が全くわからない」となるか「モザクイ的な知識を詰め込んでは忘れる」ということになります。
後者は、校内のテストではなんとかなりますが、単なる「内弁慶」であり、難関・医学部入試レベルから言えば笑止千万の、低レベルな・全く歯が立たない・役立たない知識が積み上がるにすぎません。
すると親御さんからは「うちの子は物理の成績がすごく悪くて・・・」と。
心配いりません。
学校内でのできる出来ないは、入試で要求される実力からすると、五十歩百歩、誤差範囲にしか過ぎません。
いざ本当の入試問題に立ち向かって、手も足も出ず、愕然とするのみです。「今まで学んできた物理ってなんだったの?」と。数学との連動も考えず、物理の体系的な学びのカリキュラムもないのに、「先取り」して早く終わらせることしか考えていない物理の先取り学習は、有害無益でしかありません。
本当の物理の学びは、数学で微積と三角関数を学ぶ、二年生の後半からで十分間に合います。長野高校の塾生にはそのように指導して、二年生の二学期から指導しています。
ヨリ詳しくかつ具体的には、体系物理テキストをリンクしておきますので、そのイントロ部分を熟読してください。