昨年同様ですが・・・・・・
今年の共通テストの化学についてだけですが、一言で言うと、「良くも悪しくも昨年同様」です。
すべての問題に対しての解答・解説は、GHSのHPに「どこよりも早い! 2024 共通テスト化学解説」と題して電子ブック版で貼り付けてありますので、個別・具体的にはそちらを参照してください。
まずは例によって、問題のグレード分析です。体系化学のカリキュラムからみた問題のグレード分けはこれまでと同様、以下です。
C : 一つの化学知識、ワンステップの計算で、速攻で解ける問題。教科書レベル。
B : 複数の化学知識を併せて解く。計算はハードルが二つ。入試標準問題レベル。
A2: Bの少し上の知識や、さらなるハードルがある、「差をつける問題」
A1: 化学ADで演習しているThemeに関わる計算問題を薄めたもの、またはその部分。
これに基づいて、昨年の分析結果と重ねてみます。
むこれだけ見ると、BからA2にややシフトして難化したように見えますが、実態はさにあらず。別の観点からも分類してみましょう。
定量化学と定性化学の比率は同様ですが、定量のAが減り、定性のAが増えていることがわかります。つまり、化学計算としては、過去3年からすると、「ややヘタレ」気味で、『体系化学』で化学計算の腕を磨いていたGHS生からすると肩すかしの感があります。
授業ではいつも「共通テスト化学が難化しますように」と祈願しているのですが、巷からは不吉・不条理なお願いゆえに、天神様には聞き届けてらえなかったようです Ww…
B・Cの配分は6割ほどで同様ですので、標準的なBがそこそこ取れると50点くらいになる見込みです。この中間層以下は「良くも」の方で「昨年と同様」です。
これに対して、上位層では様相が違います。Aで20点程、その他で15点程というのは同様なので、70点をクリアすれば合格点というのは共通テスト開始以来、ブレていません。しかし、優秀な生徒でも80点を超えるのが難しく、90点越えは至難という作りになっています。ゆとりの時代のセンター試験のように、高得点層にギュッと固まったイビツな分布は、今や昔の話となったと言っていいでしょう。
総合点で85%を超えた生徒でも、化学は80点にわずか届かずというのが実情です。
生徒に事情を聴いてみると、やはり、その元凶は「その他」の問題にあります。その他問題は今回は分散せず、第5問が丸ごと「その他」でした。つまり、「化学の問題ではない」ということです。
見かけ上は、同位体とか、molとか、有機物の切断とか化学っぽい素材が並んでいますが、やっていることは、分かりやすくたとえると『中学数学でわかる科学読物・化学編』です。
つまり、化学に見えますが、解くために必要なのは、化学の知識や計算力ではなく、中学数学以下で済むデータ読み取りと推論でしかありません。この点については、毎年「こんなん化学しじゃねー」指摘してきましたが、今年はその「悪行」がエスカレートしています。
第5問は「お化け屋敷」問題
簡単にいうと、第5問は「誰もみたことがない」初見問題であり、見たこと無いデータを与えて、必要な知識を与えてその場で読み取らせて解答する・・・・・これは医・自然系小論文とか、総合テストとかいう名称で出される形式です。
そういう意味で、何が出るかわからないので、対策しようがないのですが、ふつうの人は、既視感のないものに対しては恐怖を覚えるものです。
テーマは「質量分析器のデータ解析」ですので、科学基礎論のレベル、つまり、科学実験のベースとなる分析法であり、それで分離・分析した化学物質をもって、化学としての学びが始まる・・・つまり「なんじゃこりゃ、見たこともやったことも聞いたこともないぞ」となるわけです。
そんな恐怖感があると、なんでもない問題を殊更難しく見せてしまいます。つまり「お化け屋敷」です。所詮は、アルバイトの人が被り物をして出てくるわけですから、ホンモノのお化けでもなんでもなく、そう思ってしまうと怖くもなんともないのですし、(そうわかって、絶叫してストレスを発散するというのが健全でしょう・・・。「・・・正体見たり枯れ尾花」
しかし、その場の雰囲気に呑まれ、恐怖にかられるとそれが「オバケ」に見えてしまうのでしょう。具体的には解説を読んで貰えばわかりますが、本問は、「お化け屋敷に過ぎない」、ホンモノではない=化学ではない(化学と思うから、該当する知識がないことに焦る)、化学の被り物(お化けの扮装)をしているが、その中身は化学基礎の用語と、中学数学で十分(=中身は人間)と思って取り組む心構えができれば、あっさりと解けてしまうのです。
常日頃から、そういう類の、科学読み物に触れている人にとってみれば、こんな楽勝な問題はありません。化学の実力を問わず、読解力と常識的推論と算数で解けるのですから。
ところが、そういう経験がないと、お化け屋敷の入り口でもう、ビビってしまって、かつ、長大な文章にモンスターを重ねて、これは「難問だ、自分には解けるはずがない」という暗示にかかってしまいます。
多分、共通テスト初年度の、悪名高い数学問題と同様に、????とと思って手がつかなかった人が多数いることでしょう。すると、第5問丸々で20点です。もっとも、第5問の問2はとりあえずmolを扱うので、一応化学Bに分類しておきました。やることは、化学計算以前であり単発ならできるかもしれませんが、「その他」の中に埋もれているので、これも「オバケ」の仲間に見えるはずです。
すると、ベースとして80点満点ということになり、化学が抜群にできる人でも80点に届かないという現象が起こったのです。
GHSのHPのオリジナル解説を読めば、「オバケ」と思って避けてしまった自分が、実に歯がゆく悔しく思えてくるはずです。
要するに、心の持ち方次第で解答可能なんだ!!とわかること、これは二次試験等でも役に立つはずです。
大学入試センターのエライ人へ
こういうのは、化学教科ではなく、たとえば「科学基礎」(理科基礎)として、科目選択に関わりなく解くようにしてもらいたいものです。そろそろ、「お化け屋敷」のカラクリがバレて、優秀な生徒たちは、その正体に気づき、易々と解くようになっていくでしょう。ならば、化学という枠から外してほしいものです。もっと化学の枠内で問うべき事項があるでしょう?
もし、それは色々と手続きが・・・という官僚主義の返答でしたから、化学問題と呼べないもので20点も占めてしまうことは避けて、せめて過去問のように10点以内にとどめるべきです。これが落としどころじゃないですか?
エスカレート
さて、どういう風の吹きまわしか、今年は、解答・解説のEB版だけでなく、解説動画を前編・後編(各30分程)で作ってしまいました。もちろん、私自身が解説しています。これもコロナ禍中のzoomがもたらした「副産物」です。
基本的にはオープンにするつもりはありませんが、たとえば、次年度の捲土重来を誓って、GHSに入塾等のお問い合わせいただいた人には、しっかり観てもらって、GHSの指導の一端を知ってもらう形で活用しようかと考えています。ご希望あれば、問い合わせフォームからご連絡ください。