共通テストで何が変わるかという話
<化学>
他科目では、記述式導入や資格試験代替等の「改革案」が色々と問題噴出して大きな変更は見送られました。形式はセンター試験的なマーク式問題のままで「思考力や判断力をみる」という重荷を背負うことになりました。
GHS本部の化学のクラス授業では早々に言っておいたことですが、「高校化学の知見・知識の枠自体は同じなのだから、やるべきことは何ら変わりはしない。」「難化上等、それならばGHS生にますます有利に働くだけ」と。
体系化学の実力をつけた生徒にとって、形式上の変更など何ら関係ないものです。中身である化学的思考に変わりはないのだから、当然のことです。むしろ、それしきで右往左往するのは、学び方が表面的・小手先である証左、つまり、実力がないということを言っているにすぎません。テスト形式が少々変わったくらいで点数が取れない・・・というような言い訳に頼るレベルでは、難関・医学部なんて語る資格はそもそもありません。
翌日、化学と物理を解いて、分析・比較する時間が持てました。まずは、化学について昨年の分析(本部HPブログ参照)について振り返ってから、こちらに戻ってきていただくと良いでしょう。
まずは、度数分布グラフです。前回の、総合点の分布と相関していることがわかります。化学では、60点付近から上の上位層が減った分、それ以下の層が同じくらい増えていることが読み取れます。すると「平均点はあまり変わらないが、難化した」ということになります。実際の平均点は、2021年52.7点、2020年56.9で4点ほどの差にすぎません。ちなみに、2019年に60-80点取れた「ちょっとできる人たち」は2020年には跳ね返され沈み、逆に実力のある上位層はここぞとばかりに点を伸ばしたということです。昨年度はA問題(下記参照)で意味がわかれば答え易いものが多かったからでしょう。
要所を昨年と比較してみます。GHSの『体系化学』によるカリキュラムの視点から設問をグレード分類してみます。
2020 32個の設問 A 32点 : B 13点 : C 55点
2021 29個の設問 A 18点 : B 44点 : C 38点
C問題は、教科書にある知識と基本演習でカバーでき、できる生徒にとっては「秒殺」問題です。「高校課程をしっかりやっていればできる問題を入れる」ということが、1979から始まった「共通一次試験」から「センター試験」へと引き継がれた立ち位置であり、指導要領からの逸脱した問題を排除する、優良な問題を提供する、というのが統一的一次試験導入の基本精神でした。
ところが、上を見ると、どんな勉強のやり方でも(体系的でなくて詰め込みでも)正解を選ぶことが可能なC問題は明らかに減りました。C問題で下駄を履かせて、平均点を60点台に持って行くという政策判断を文科省は引きずってきたのですが、「ゆとりの終焉」の反省(反動?)から、このような基礎部分を切り離して、「基礎学力テスト」とし、「共通テスト」はここから逸脱してもよい、私立の医学部などが入試の代わりに使ってもよいレベルにする、という風に旗を振っています。つまり、「難化」ということですが、それは、元々が易しすぎた訳であり、今回の「共通テスト」は、上位層からすれば、「二次試験を薄めたようなものなので、むしろやり易い部類だ」ということであり、これしきを「難化」」とっているようでは、やはり、難関・医学部受験生たる資格なし、ということです。
B問題:センター試験の過去問に十分に取り組んだ人なら確実にできる問題レベルです。GHSの授業で言えば、ST(スタンダード)にあたります。『体系化学』テキスト、『有機化学』テキストをベースに、定性化学/定量化学演習をこなしたレベルです。いわゆる「標準問題」が増えました。だからBには標準といえどレベルに幅があります。B1>B2に分けてもいいくらいです。だから、そこそこ勉強した場合は、Bの半分くらいは取れて、60-70点というところです。
B,Cの得点を足し算すると、昨年と変わりありません。しかしBが増えた分、「難しく」感じるのです。
でもそれは、薄っぺらな知識と、闇雲な暗記では通用しない、という至極まともな話です。むしろ、それで済んできた今までのセンター試験(特にゆとり時代の)のあり方の方が問題でしょう。ゆとりの時代は、どんな勉強のやり方でも、Aが半分以上、Bも半分取れば70-80は取れるので、そういう問題ばかりやっていると共通テスト対策を軽くみてしまうのです。「まあ、何とかなりそうだ」と。
残りのAランク: 18点分は、二次試験レベルから見れば決して難しいというわけではないのですが、これを迷わず確実に解くためには、二次試験の「難問」を超えて行くための『体系化学AD(アドバンス)』の演習が必要です。算数計算自体は、手間がかからないように配慮されているものの、問題の意味の把握、化学計算式の立式などは、もっと上のレベルの、二次試験レベルのアドバンス問題で鍛えておかねば、正確に読み取り、予定時間内に解くことはできないのです。ここを鍛えて点を上積みしないと、90点越えはできないのが共通テストです。
BとCの境界線をどこに引くのかでCの割合はもっと増えるかもしれません。が、まともな実力があってこそ迷わず解ける問題が20点分はあるということは確かです。得点率9割を目指す難関・医学部志望者にとっては、このC問題の攻略如何が明暗を分けるのです。
思考力・判断力を要する問題が増えた・・・?! このような「分析」が大手予備校から揃ってなされているます。実は、私には、何を言っているか判りません。
初見の化学反応(=教科書には絶対に載っていない反応)や、データを与え、最低限必要な教科書外の知識は与える。これを元にその場で読解・解析して答える。
それは、化学にとって当たり前の<思考力>です。それが<実力>というものです。
だから、<実力・思考力>を要する問題が増えて、「やや難化した」という分析評は????です。基準がおかしいのです。
これは「難化」ではなく、「正常化」というべきではないですか?
Cのような「秒殺問題」を増やし下駄を履かせて、平均点をいい具合にアップ・確保してきた。それがセンター試験の常套手段でした。つまり、歪(イビツ)な問題づくりをしていたのです。そして、もうそんな愚策をもう止めたということでしょう。歓迎すべきです。
さらに、共通テストは「共通」なので、国立だけでなく私立もさらに参入し利用してもらいたいとの願い。そういう意味で、難化した中堅以下私立医大でもそのまま採用しても遜色ない仕上がりになっただけです。
しかも、万人の目に晒されるので、奇問はありえず、ほめてもらえる問題づくりを目指しています。
すなわち、「GHSで学んだことがしっかり活かせる問題づくりです。」というのが私からの評価になります。
二次試験と一次試験の範囲的な境界線がなくなってきています。だから、共通テスト対策・・・なんて講座はいらないのです。二次試験をやり易いように、短時間で解けるように「薄めた」だけですから。
だから、化学の実力をつけるべく、体系的な学びを進めていけば良いだけです。世間が「難しくなった」と言っているのを余所に、もっと先へと歩を進めればよいのです。
ちなみに、「難化」したにも関わらず、昨年から40点ほどアップしてついに9割ごえを果たしたGHS本部生がいます。やはり、共通テスト対策は授業と模試のみ。ひたすら二次試験レベルの記述問題を解いていただけです。前回ブログで示した上位層とは、こういう人たちです。要するに「大は小を兼ねる」、すなわち「二次は一次を兼ねる」ということなのです。
これから難関・医学部を目指そうという人、そういう人の群に入るしか道はありませんよ。そう決意したなら、GHSの門を叩くのも一つの道です。