「難化」とか「平均点」とか、どうでもよいこと
毎年のように言っていることですが(GHS本部HPブログも参照してください)、
「平均点が昨年より低下の予想」「〇〇科目が難しかった」等々・・・なんていうのは、難関突破を目指す受験生にとって、そしてGHSの受験生にとっては、何の価値も、いかほどの意味もないものです。平均的な受験生への取材は、所詮、平均的なものにすぎません。つまり、参考にすべきではないのです。競争する相手は、全受験生の一割に満たない「上位層」だからです。(化学の選択者は18万4千人 これがほぼ理系の総数です。その1割は1万数千人です。以下は、そこにフォーカスを当てての話です。
1980年代からの共通一次からセンター試験、そして共通テストへと・・、相変わらず文科省的行政+マスコミは平均点と科目間格差ばかりを気にして、ニュースを流しています。
確かに建前としては、全受験生を相手にするべきなので、そうなるのでしょうが、難関突破を目指す受験生の立ち位置からは、何の参考にもなりません。平均レベルの学力の受験生というものは、難化すれば得点が大きく下がり、平均点を下げるように足を引っ張るからです。だから、色々な統計の中で「上位層の得点分布がどうなったか」だけを注視すべきです。
私は医学部を再受験した関係で、普通の受験生よりは、共通一次、センター試験を多目に受けてきました。が、平均点や難易度等には関心は一切なかったものです。関心事は、1つ。得点率80%を超える受験生がどれだけいるか。その中でのピークはどこか、自分はどこに位置するのか。これだけです。そして、対策とは、「85-90%を得点するにはどうすればよいか」に尽きていました。
難関を突破するには、それ以外の焦点は無いので、70%の得点率にも届かない層がどうであろうと関係ないのです。問題が難化すれば、そういう層の点数がぐっと下がるので、平均点はその分余計に下方にシフトします。しかし、得点率80%以上取れる学力がある上位層では、たとえ難化しても、得点は下がり具合は小さいものです。だって、日頃からそれ以上のレベルの問題を解いているのですから当然です。実際、ある国立大医学部の判定基準は、昨年より25点ほど下がっています。平均点が50点下がったと騒いでいるのと比べれば、半分です。つまり、他方に70-80点以上、大幅に下がった層がいるからそうなるのだ、ということが分かります。
そもそも、東大(に合格しそうな)受験生なら、かつてのセンター試験までなら90%前後は取れたものです。「9割をどれだけ越えるか」が勝負どころでした。だから、得点8割以上で勝負する、上位層のピークは85%位にありました。かつて、私が京大・経済学部を受けた時の自分の得点率は84.2%でした。やや難化した年でしたので、それでも学部内ピークの少し上でした。現役の時、80%に届かなかった悔しさをバネに、なんとか、目標に届いて安堵しました。
東大・京大等の難関大の二次試験問題の難しさから見れば、「共通テストの難化」なんて、誤差範囲でしかありません。それしきのハードルを越えられないようで、どうして二次試験で合格点が取れるものでしょうか・・・そう思っているのが難関突破を目指す受験生というものです。(でも、まあ、さすがに、こういう受験生の声は、記事としては出せないですよね。)
共通テストは、このピークを下げた
昨年度から改まった共通テストは、どうやら、この得点80%以上の層を削り、高得点者のカタマリを解体し、分岐させることが目的の1つのようです。昨年度の共通テスト解析では、「上位層は減ったけど平均点は変わらず」という謎をグラフの分析を通して説いておきました。昨年度の共通テストでは、得点率90%以上の層がごそっと減ったのです。だから、全体の平均点は変わらなかったけど、上位層のピークは82-83%に低下したのです。それをさらに削ったのが今年の共通テストです。
でも、これは入試としては、実に「まとも」なことだと思います。
なぜ、「まとも」かと言いますと、難関突破を目指す受験生たるもの、「高々、センター試験でしょ、80%は当たり前、難関突破には90%は取れないと・・・」というのが「常識・普通・義務・使命」です。そんな強い気持ちでないとやっていけません。ところで、難関私立医学部に合格するための得点率はご存知ですか? だいたい70%前後です。それくらいで上手く差がつき、上から下まで固まらないように、上手く分布するように作るものです。資格試験や認定試験ではなく、競争試験ですから、差がつかないと試験の意味がないからです。
これまでの共通一次・センター試験の得点分布は正規分布のようにキレイではなく、平均点層に加えて、上位層も膨らんでいて、実に歪(いびつ)な形でした。上位層にとって、できて当たり前という試験は、(国が行う試験だから仕方がないとは言え)入試としては「異端」であったと思います。差がつかないから意味がない、ただの二次試験を受けるための「資格試験」でした。
だから(?)かどうかはわかりませんが、東大は、共通一次が始まってから、一貫して一次と二次の比率を1:4にして、一次の比重を日本一最低にしてきました。私の時代は1000点満点でしたが、これが110点に圧縮、約1/8です。850点と900点の50点もの差がたったの6点に縮まります。こんなの、数学なら半問分でひっくり返ります。
そんな東大生受験生が、50%以上の得点を取るのに苦労するのが、東大の二次試験なのです。
このような観点からは、これまでのセンター試験は易しすぎたと言えるのであり、入学試験として「異常」でした。上位層では差がつきにくく、ほとんど横並びのダンゴ状態。上位層は、全員ほぼ同着ゴールみたいな感じですから、合否判定には大して役に立たないのです。二次試験のための資格試験の様相でした。それがようやくにして、難関私立医学部が入試の判定に採用しても遜色ないレベルになってきた、と捉えればよいのです。
これまでのセンター試験に対する思考基準、ボーダーの感覚、それらを全てリセットして、広く難関入試のレベルを客観的に見ると、これが当たり前に見えて来るはずです。ニュースを流す側にはその自覚がなく、毎年似たような一喜一憂レベルの参考にならないニュースしか表に出ていないのが現状です。
「難化」とは相対的なものにすぎない
先ほど挙げた、東大の二次試験の難しさも逆に、明らかな異常で、各県の進学校のほぼトップクラスが受験しますが、50-60%も取れれば東大に合格できるのです。それくらいに難しい問題ばかりです。
すなわち、東大受験では「センター試験で90%取れる受験生が、二次試験では50%を争う」のですから、その壁の高さが知れるでしょう。だから、東大に合格できるレベルに達した受験生にとって、「共通テストの難化」なんて「なんていうことはない」のです。東大や医学部を目指すなら、そうでなくてはならないのです。
もし、それしきで得点が下がるようなら、既に難関受験の壁に跳ね返されている(=受験資格なし)ということにすぎません。厳しい言い方かもしれませんが、それが現実であり、そうやって自分に謙虚にならないと難関突破は到底できないものです。
要するに、元々、易し目であったセンター試験から見たら「難化」しただけのことで、それを騒ぐ書き立てるのは、記事を書く人の見識がそのレベルか、どこかの受け売りにすぎないということでしょう。易しかった時代の過去問を解いて臨んで、「難しくなった」というのでは、そもそも「甘い」ということです。
文科省下の大学入試センターでは、共通一次の時代からの信条である「文系・理系関係なく同じ科目を受験する」=共通、という建前から、出題範囲が理数科目は文系に合わせて限定され、しかも、解答を公表して批判にさらされるという恐怖もあって、難易度を易し目に設定してきて、そこそこの点数を取らせる、という形式的伝統があるのですが、脱ゆとり、脱センター試験、理科の文理分割、別立ての基礎学力試験創設(予定)等々で、その呪縛から放たれたのでしょう、共通テストは実に「普通の入試問題」らしくなってきました。
「普通の入試問題」とは、70%も取れれば合格できるという試験であり、かなり勉強していないと、平均点の50%にとどまるということ。一般入試では普通のことです。難しくなろうがなんだろうが、資格試験ではなく、競争試験なので、相対的にライバルとなる受験生の中でできていれば良いだけです。
だから、いいまで「90%以上は至難」というセンター試験的ラインを今回は、「85%以上は至難」へと引き直すとよいかと思います。これからは70%の得点率だと優良、「8割越えは優秀であり、大きな壁である共通テスト」になっていくのでしょうし、それでよいと思います。これまでのように、見た途端に瞬殺できるような、教科書そのままみたいな、あるいは「それに毛が生えた」程度の易問、つまり「下駄履かせ問題」が段々と姿を消していくわけであり、それは入試のあり方としては良いことだと思います。
大学入試が易しくてよいはずがない
「共通テストが難化した」というのニュースに対して、「難化する必要ない」「受験生がかわいそう」、「昔のセンター試験レベルでよい」というような共通テストへの批判的コメントの方が多いようですが、GHSではそうは考えません。
だって、「大学という学問の府」に行くのです。医学部なら、人命に関わる学問と技術、必死の研鑽が必要なのですから、易しい関門をくぐってきていいはずがない、と思いませんか? 誰しも、「そんな難関を苦労・努力して突破した賢い人が医師であってほしい」と思いませんか?
GHSのカリキュラムとメソッドは、そういう目線で創られ、それを当然として指導しています。共通テストは、「難関私大・国立二次試験問題を薄めて答えやすくした問題だ」そんな風に見える受験生であれ、と言い続けています。難化すればするほど有利になる、そんな受験生になってほしいのです。
では、次回は、例によって、各科目についての分析を述べたいと思います。