70で合格、80は優秀、90ならほぼ神
共通テストの「難化」についての、GHSとしての見解は[27]の総説に述べましたが、それを端的に述べれば、このタイトルのようなるでしょう。
一般にテストというものは「60点で可」つまりなんとか合格というのが伝統的な成績のつけ方です。
それゆえ、これで50%も取れない受験生は、「不可」、つまり「落第」、すなわち、それまでの勉強は、大学を受けるには不十分ということにすぎません。大学に入ったはいいがついていけない、学問の府で学びに値しない学力で、大学に行く方が本当は間違っているのです。まあ・・・ふつう赤点の生徒には、再試験を行ないますが、それは浪人を意味します。
そもそも易しかろうが、難しかろうが、競争試験なのですから、自分が目指す集団の中で上位になること、そして志望校の要求する水準に達していたかどうかだけが問題です。
さて、世の中はなんだか出来なかった生徒への同情記事と難化への批判記事ばかりが溢れていますが、できる生徒達の意見も聞きたいと思いませんか?・・・なので、実際に及第点をとった複数の受験生との面談をふまえ、ここではそういう声を届けたいと思います。もちろん、これは少数派の意見になりますから、マスコミレベルでは出て来にくいものです。
しかし、本ブログをご覧になっている受験生や保護者の方が知りたいのは、むしろこちらの方ではないですか?「できる生徒」ってどういう感想なのか?と。
そもそも80%の壁超えはどれくらいいるのだろう?
今回の「難化」でさすがに上位層も削られてしまい、90%超えは「ほぼ神」の領域となりました。ということなら、今までと得点基準ラインを変更すればよいだけであり、これまでの80%の壁は76%に下がり、90%超の高い壁が、85%超となったということです。
理系に絞っての話になりますが、「難化した」と言われる中で、今回80%を超えた人は何人くらいいるのか、知りたいものです。
得点分布グラフだけで、人数まではデータとして表てには出てないのですが、分かっているデータを使って以下のように試算することが可能です。特に難関・医学部を志望する人にとっては参考になると思います。
1. 東大・京大の合格=80%越え
河合塾のデータリサーチをみてみましょう。
さすがに東大受験生たるもので、難化もなんのその、ボーダーライン(定員となる順位,BとCの境界)で80%くらいの得点を取っています。(もちろん、理科三類のトップに数十人でしょうが90%越えの「ほぼ神」がいます。かつてのセンター試験の時代はこれが95%超でした・・・)
二次試験の難しさから言えば、共通テストの「難化」は誤差範囲です。むしろ力を発揮できる場面ですから、「難しかった」という数学でも80点くらいは取るものです。
つまり、東大の前期合格者=前期定員が80%超えと見なせます。京都大学についても同様のデータが出ています。それぞれの定員を足してみます。
東大2958名 + 京大2823名-(医学部97+107)=5577名
2. 旧帝大医学部+α
国公立大の医学部のデータについては、今回は今までにない特徴があります。それは二層化とその境界が80%という点です。
旧7帝大(北大・東北大・東大・名古屋大・京大・大阪大・九州大)および都市圏の医学部(東京医科歯科大、千葉大、横浜市立大、大阪公大[大阪市大]、神戸大)の5校は、ボーダーラインが80%超と高止まりしており、これらの医学部の前期合格者=前期定員が80%超えと見なせます。
上記の医学部の前期定員を足し合わせると1106名
3.2以外の医学部の上位合格者
上記の大学医学以外の、いわゆる「地方の国立大医学部」のボーターは見事に横一線で76%±1です。つまり、80%を少し切ったとしても、今年は地方の国立大医学部には十分いけるという、まさに前代未聞の事態です。だから、ラインの引き直しが必要だというわけです。
ということは、その上位合格者、すなわち定員の半分くらいは80%越えのはずですから、
国立大医学部総定員 3597名-1106名(2.の定員) これを1/2にして 1246名
よって、1.+2.+3.=5577+1106+1246=7929名 約8000名
もちろん、東大・京大・医学部志望でない高得点者もある程度はいるでしょう(とは言え、それだけ得点できてそこを目指さない受験生は稀)から、その分を多めに見込んで
今回の共通テストの80%越えは全国で9,000人程度
と試算されます。
理系全受験生は約39万人(理科科目物・化・生・地の受験者数を足せばよい)なので、これは理系受験生全体の2.3%程になります。統計学の正規分布で言えば、標準偏差の2倍以内に入らない少数派です。
今回は、国立大医学部のボーダーが76%付近となりましたので、ここまで範囲を拡大するならば5%程にはなるでしょう。
改めて、「医学部を志望する」ということは
「医師になりたい」という希望を抱くこと、そこに情熱とやる気を集中することは誰でも可能ですが、それを口にする以上、学力的には「全国レベルで上位5%に入る」ということが必須であるということを正面から認識することです。そこを目指し、その壁をよじ登り、乗り越えるということです。
そこに到達するためには、ハイレベルな質の学びの場、とそれに耐える能力と、誰にも引けを取らない勉強量が必要だということです。
では、次回は、そういう域にある生徒達の声をお届けすることにしましょう。