実際やってみましたが・・・
今年の化学は高得点が取りにかったようで、GHSではトップクラスで82点が最高です。だから70点(ともに得点調整前)で合格点といってよいでしょう。実際、物理で95点,100点という実力者が、化学は73点,74点といって悔しがっているので、
「どこがそんなに難しかったんだろ?」
と知りたくなり、今年はかなりマジで時間も気にしながら解いてみました。
昔々・・・私が受験生だった頃のセンター試験は、40分で解いて、2回くらい見直しして・・・という作りであり、上位層なら90点以上とらないと恥だよ・・・なんていう感じでしたが、前編で説いたように、ここ三、四年は、70点くらいで合格点と言えるような難易取り混ぜての作りとなっており、要するに「まともな入試問題セット」となっています。
さてさて、昼休み、それなりに集中して(?)休まずにやって、60分で丁度くらいの手間と分量でした。2-3箇所をちょっと見直すくらい暇しかありませんでした。といっても、化学ADのスキルをちょいちょいと活用して、スキップ&ワープを何度か敢行した結果(場所については、解説編を参照のこと)です。ふつうの受験生は、解ききれないか、そもそも手付かずの問題が少なからずあったようです。再掲します。
定量 9問 32点 [A:16点,B:13点,C:3点] その他 4問 13点
「その他」というのは、化学ではない算数・数学の処理ですが、それも併せると13問、45点分の計算を要求されています。
もっとも、算数計算はすべて、数値がキレイになるように配慮されていますから、その面での負担はないのですが、ADレベルを薄めた問題も複数あり、立式に手間取る、ないし、立式できない問題が複数あったようです。
まあ、でも、化学ADを学び、体系化学的に立式すればスイスイと解けますが・・・(解説編を参照)。
・・・自己採点は97点でした。Aクラスの計算は余裕で正解したんですが、まあ、往々にしてあることですが、なんでもないBクラスの計算問題で油断して、三つ目のハードルに気づかず(最終的に何の量を求めるかというチェック漏れ)、答えの値が半分になってしまったのが痛恨のエラーです。
化学ADを薄めたサンプル問題・・・
では、例によって、具体的な問題の解説を通して、学びのポイントについてコメントしておきましょう。
[全問題の解説については、電子ブック版で公開しますので、こちらを参照してください。]
問題例1 「 ついに出たっ! 」というか、「おいおい、これは掟破り。やっぱ反則だろっ!!」という 問題
第5問
言わずと知れた、ハイレベル受験生にとってのヤマであり超えるべき壁の一つ、「チオ硫酸-ヨウ素滴定(ヨードメトリー)」の計算問題です。体系化学ADの授業では、夏期期間でしたか、Theme8,9の2回に渡って20問以上演習したので、GHS生にとってはお馴染みのはずですが、普通の受験生にとってみれば、「これは何?」「意味がわからない?」と手付かず状態だったことでしょう。
しかも!!, 後半、Theme9の方の問題です。まあ、それでもADの難易度からすると、例題レベルで数値もキレイなので、フォーマットに従って、ささっと立式して、スイスイと解けばよい「大したことない」問題ですが・・・。
でもこれは、従来は、国立二次試験や難関私立に出るエリアの問題ですから、一次試験で出すのはまさに「掟破り」、前代未聞・空前(絶後ではない)のことです。まあ、とりあえず「これからは、こういうのも遠慮せずに出すぞ!!」という宣言だと受け取っておきましょう。
・・・・つまり、昨年にも増して、体系化学とADの学びが遺憾なく発揮できるように作ってくれているんだな、というGHS的には実にWelcomeな傾向です。
化学AD Theme9では、還元剤の場合のヨードメトリーについての計算フォーマットを与えておきました。
試料の還元剤+ m I2→ 2I– ・・・・
残 I2 +2Na2S2O3→Na2S4O6+ 2NaI
・ 試料は還元剤として、ヨウ素と反応します。両者間の物質量変換係数‘×m’は反応ごとに異なります。
・ 反応で消費されたヨウ素の残りをチオ硫酸ナトリウムで滴定し測定します。
[元I2 mol −試料物質mol×m]×2価 =チオ硫酸ナトリウムmol×1価
化学ADにおいては、このように立式は1行で済み、まさに「一刀両断」です。
ちなみに、問題文中にある4.80mLという数値は、不要です。実験操作中の事実を書いてあるだけですが、これもヨードメトリーの実験操作についての学びによって、平然と「無視」できるようになるものです。
問題例2 AD レベルってほどではなく、どうやっても解けそうだけど体系化学的にスパッと解こう!!という問題
第3問 問3
まずは、情報を仕分けしておきましょう。
・1族 Li 6.9 ,Na23,K39 1価
・2族 Be9.0,Mg24,Ca40 2価 ☞たいていBeは頭数で答えにはならないが…
・塩酸と反応: 全て,水と反応: Be,Mg以外全て ☞絞り込むための情報ではなく確認事項。つまり解く際には役立たず。
反応は
・1族 ex. Li + H2O →LiOH + 1/2H2↑ , Li + HCl →LiCl + 1/2H2↑
・2族 ex. Ca + H2O →Ca(OH) + H2↑ , Ca + HCl →CaCl2 + H2↑
いずれも、水素発生molは、×1/2,×1 の関係です。
・ グラフの横軸に注意…・質量mgでありmolではないので、価数だけでYの側が1族だとは決められません。
原子量によっては、どちらもX,Yになりうるからです。
つまり、w[mg]とv[mL]の関係は、物質量変換係数と原子量がパラメーターになるということです。
グラフはともに比例関係を表しているので、y=●xという関数式になるはずです。例によって、一般的に化学計算式を作って関数化すればよい・・・と方針を決めます。
グラフの両軸の単位への注目→比例直線の作図→原子量と価数の二つで傾きが決まることに気づくこと→データ読み取りと入力計算→原子量による適否の判断+反応の確認
・・・と幾つものステップを踏んで解決しなければならないので、解法の方針を定めるための時間を含めて、解き方によってはかなりの時間を食う問題です。
もちろん、高々6個の元素であり、m=1と1/2ですから、グラフの値を一つ読んで、当てはめていけばなんかできるものですが、正解できなければ時間を浪費するだけの怖い問題です。しかもこれだけやってたった4点ですから、時間的コスパは最低です。こういうのは配点を増やして、段階的に誘導設問にして部分点が取れるようにすべきですよ。
体系化学の演習では、一般的な化学計算式の立式→関数化という流れは何度も演習してきていますから、ここでもその威力を発揮して、このように一気呵成に解決します!!
2023共通テスト・化学 GHS解説編(全33頁)
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