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2025 共通テスト 点差がつやすい化学の攻略法

 GHS長野校では毎年、共通テストについて、オリジナルな解析と解答・解説を公開しています(下の「長野校ブログ」もご参照ください)。今年の化学は難化して、平均点が理科3科目で最低でした。しかし、理系全員が必修ですからここで差をつけたいものです。80点越え続出のGHS体系化学メソッドによる解答解説を公開しています。

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[41]2023 共通テスト 物理 問題分析とコメント

2023年1月31日 by ghs-yobikou

昨年に続いて、共通テスト3年目の物理についてコメントしておきたいと思います。
今回は、GHS本部・新宿校の物理担当講師、田川先生とのコラボ企画です。

今年の共通テストの平均点とGHSの結果
田川(T): 今年の共通テストの物理の平均点は、2022年の60.7点から、2.7点上がって63.4点(共通テスト中間発表時のデータ)となる見込みです。
ちなみに、GHSの物理選択者の平均点は83.3点です。去年70点台であったのが90点台になっている例が何人かいて一年で確実に伸びたことがわかります。最高点は95点です。

天野(A): 長野校では100点が出ました・・・と言っても今年は生物選択者に偏っていて物理は二人っきりなんですよ。もう一人は90点。でも化学はちと苦戦し、二人とも物理に比して-20点ほどで悔しがっていましたね。
 本ブログ[39]でも書きましたが、物理は昨年と問題の作りが似ていて、かつ、より易しくなっているので、生物や化学と平均点で大差がついて、「得点調整」という‘敗北宣言’が出されましたね。「科目間の差異がなぜ生じるか」ということについては別稿に譲るとして、[39]では、問題についての具体的コメントまではしていないので、本部校と長野校との共通認識として、ここでしっかり掘り下げておきましょう。

各問題について
第1問
T: これは例年通り小問集合です。この後の第2問、第3問、第4問に入りきらなかった分野、力学のエネルギー・運動量保存則、熱力学、電磁気学の磁気分野、原子物理をまとめて入れた形になっています。
後で述べますが、これらの分野はホントはもっとスポットライトを当てて扱われなくてはいけないはずですが、後の方で、設問数を稼いでいる「こだわり問題」に押しのけられて、ここに集合させられています。問題の難易度は「かなり易」であり、教科書レベルの知識の単純な適用で答えられるものばかりです。

A:易しいにもほどがあるというか、問1のバランスの問題なんて、小学生の高学年なら正解できますよ。物理で出していいクオリティーではない。少なくとも、板をもっと長くして、人が位置を変えるくらいの変化がほしいところです。問2,3,4と同じく計算は一切不要で答えが見えます。
 かつてのセンター試験の易問を「ゆとりの時代のヘタレ問題」ということがあるのですが、今年はそれ以下ですね。問5は唯一の「原子物理」ですが、光電効果でのエネルギー保存則の式が書ければよいだけですので、ちょっと手をつけていればできますね。こんなことしていると、また以前のように「原子物理」が現場で軽視されますよ。センター試験の晩期は原子物理もしっかり出るぞ!! という現場への警鐘のような問題を作っていて、高校の現場もここまでとにかく終わらせようとしていたのに・・・。(内緒話: 我々の時代は、授業時間が足りなくなって、プリント配布でごまかしたり、やったことにして・・・というのが普通でしたが・・・。)

第2問
T:「こだわり問題」のその1です。空気抵抗を受けるアルミカップの落下についての問題です。空気抵抗を受けて落下する物体の運動を、どのような式で表すのが適切かを、共通テストでは教科を問わず定番となっている会話形式で検討していきます。
まずはアルミカップについての運動方程式を
    ma= -kv + m g
(m:質量 a:加速度 g:重力加速度 v:速度 k:定数)
と仮定し、実験データを取り、グラフ化してあります。しかし、この「公式」のままではアルミカップの運動をぴったりと表せないので、「新しく速度の二乗に比例する抵抗力」を仮定し、グラフを書いて推論していく・・・という流れです。

A: アルミカップが<質点>ではなく、シンプルではない形を持った物体であり、かつ空気による抵抗力なので、本来は、流体力学が絡む運動です。
 だから、球体モデルで得られた「暗記している公式が破れてしまう!」という事態となるわけです。「抵抗力が速度に比例する」というのは、そこそこ勉強すると、問題集では一度は出会う公式レベルです。これが不成立の場合を考察するという流れは「公式暗記だけではだめ、データから推論するという思考力が必要」という方針に応えての「こだわり問題」ですね。

T:その通り、「仮説を立てて、実験して、検証されなかった点について、また新しい仮説を立てる」・・・というのは、一昨年、昨年の共通テストでも見られた流れです。第1回,2回,3回とこの<仮説→→検証>という科学的手続きを問う問題が出題されていますので、物理の共通テスト作成者は、この科学の実証的流れをミニマム形態で二辿ることを「思考力を問う」問題作りの指針にしているのは確かですし、自然科学では当然にそうなります。

A: それは理科科目全部に共通する方針ですが、化学・生物(地学は同方針だが除外)では、個別科学としてのあり方に応じて異なった様相を呈しています。これについては別稿で考察することにしましょう。

T: そうしましょう。問題2に戻りますが、最後2つの問いについてはその流れをいったん終えてから、先生が「この見方でも同じように考えられるよね」と矛先を変え、別のグラフを出してきて、でも結局、同じ結論に持って行こうとしています。この試みは、物理の共通テストでは新企画です。最初に提示された「仮説と検証」の流れとは違う切り口のため、全体のテーマがもやっとします。違うところに行くのかと思ったら入り口を変えただけで出口は同じということですから。

A: 要するに、付け足し感・欲張り感・こだわり過ぎ感がありなんです。一本の線を引き終わった後に、小さい枝のような線を付け足す感じです。こんなのでページ数を食っているくらいなら、もっと他の分野を太く・広く問うことにした方がよいのではと思います。

T: この点を除けば、第2問は単体で見れば、力学的視点からはよい問題だと思います。

第3問
T: ドップラー効果についての問題です。音源が円運動しており、観測者に届く音の波長が変化していきます。観測者にとって最大の速さに見える地点がわかれば、音源の運動によって波長がどう変化するかをイメージするだけで、ほぼすべての問題が解けてしまいます。残りの問題も、教科書の公式レベルを出ません。

A:「斜め方向のドップラー効果」はどの問題集にもある定番です。よくある物理現象の見慣れたテーマについて、易しい問いであちこちを膨らませて「尺を稼いで」います。つまり、「引っ張り過ぎ」ですよ。変化球もサプライズも何もなく最後まで淡々と解けてしまいます。

T:公的な一次試験である共通テストとしては、教科書の全履修範囲を踏まえて「できるだけ偏りなく色々な分野を問うのが望ましい」わけであり、このような作りは良いとは言えないでしょう。

A:そもそも、こんな、どの問題集にも載っているような「斜め方向からのドップラー効果」という物理現象で、大問を張るのは荷が重いですよ。前半と後半で波動の別問題にするとか・・・。

T: 単体なら、むしろ設問は2つくらいにとどめて、第1問の小問集合に入っているのがふさわしいのではないでしょうか。

第4問
T:「こだわり問題」その2です。はじめは、コンデンサの知識の確認レベルの易問をふまえ、コンデンサの充電過程を、コンデンサの電流−時間のグラフから読み取って電気容量を求めよう・・・という問題です。
 物理をしっかり学んだなら知っている人も多いと思いますが、コンデンサの充電過程について電位の関係を立式すると、第2問の抵抗力を受ける運動の運動方程式と同じ形の式になります。一般的な形で示すと、

x’ (xの時間微分)=-K x +L            [K・Lは定数]

という形の式になります。つまり、共通テストの問題作成チームは、同じ形の運動方程式を大問丸々2問分、力学分野と電気力学分野で出題していることになります。こちらが心配することではありませんが、入試物理で目にする物理現象で、この形の式になるものは、あとは電磁誘導くらいしかありません。つまり、この路線は、あと一年でネタ切れになってしまいますよ。今後はどうするのでしょうか・・・。

A: この数学的背景には微分方程式があり、これを数学的に解くと指数関数になるのですが、提示されているのはそのグラフです。大した微分方程式ではないし、昔々、私が文系であった頃にやった程度のことなので(ゆとりの時代に排除されましたが・・・)、体系物理アドバンスの授業では数学的に普通に教えています。どちらの問題もお馴染みのグラフです。・・・体系物理テキストでは、力学とか電気とか区別せずに、過渡的現象として横断的に並べて教えていますよ。

T: この問題の最後でもまた、第2問と同様「この見方でも、同じことが考えられるよね」的設問が続いています。また設問数稼ぎです。繰り返しになりますが、目先を変えるなら、いっそ別の物理現象・別の単元に飛んで新たに問う方が、しっかり勉強した受験生に応えることになると思うのですが。

  それはそうとして、この問題で一番まずいのは、実はそこではなく、
      「会話の誘導なんか読まないで、自分で式を立てて考える方が素早く答えられる」
ということなんです。「むしろ会話文をまじめに読もうとすると、余計なことを考えて遠回りしたり、混乱したりする元になってしまう」ということにもなります。
「ネタ」(=どの物理法則・物理公式を使うか)が見え見えで、分かり切っているものを、「さあ一緒に考えていこう」とわざとらしく誘導していくと、くどくどと文章ばかり長くなり、できる受験生には無用の長物、一方、まだ先が見えない受験生にとってはかえってわかりにくくなってしまうのです。

A: まあ要するに、元も子もない言い方ですが、「有害無益」、「帯に短し・・・の類」です。そもそも電気回路の現象で、初見のものなんて皆無でしょう。もちろん、現実的には無いわけではないですが、そういう現象は高校物理では数学的に手に負えなくなるから出せるものではない。それでもやろうとすると難関大の二次試験で「必要な知識を与えて解かせるタイプ」の難問題の系統になります。
 そもそも、電気回路の現象については、すべて物理法則・公式で解けるようにできているのだから、結論は見え見えになります。ネタバレしているのに、それを隠して誘導していくのは、「二度目はさすがに笑えない漫才のネタ」のようで、飽き飽きするというか、付き合うのが面倒臭いというか。だから、YouTube観るみたいに、倍速&スキップで丁度いい。

<イメージ重視>=<数式軽視>の増強
T: 各問題について触れましたが、全体としては、「イメージすれば解ける、式は公式レベルで解ける問題作り、難しい数学的計算・式操作はさせない」というのは、昨年度の出題にもみられたもので、<イメージ重視>=<数式軽視>を引き継いで、むしろそれを強化しつつ、かつ、<仮説→検証>という思考力を問うという方針もまた強化した、という印象です。
<イメージ重視>=<数式軽視>の傾向についてのコメントは昨年度と同じく、
「物理にとって数学的部分、数式計算・式操作は物理として重要な側面であり、まじめに物理を勉強してきた=しっかりと数式を立てて解いていく練習を積んできた受験生が力を発揮する場がなくてかわいそうだ・・・」。

「掘り下げ」という名の「引っ張りすぎ」
T:さらに、今年はそれに輪をかけてかわいそうなのが、<仮説→検証>のスタイルを強化したため、1つの問題を同じ物理現象で引っ張って設問数を稼いでいるため、結果として出題分野・単元の偏りが大きくなってしまったことです。
 例えば第2問では、抵抗力による落下だけをずーっと扱っていたために、力学のほかの大事な法則であるエネルギー保存則や運動量保存則が小問(第1問 問3)へと押し出されてしまいました。

A: 力学のヤマの1つである、単振動的なものは影も形もないという有様ですね。慣性力も無いですね。こんなひどい偏りは、センター試験時代でも無かったと思いますよ。大河ドラマの主役級なのに、すぐに殺されて退場となるチョイ悪役をあてがわれたようです。

T: 第4問では、コンデンサにずーっと寄りかかっていため、電磁誘導の居場所がなくなり、とりあえず「まんべんなく出題しましたよ」という言い訳づくり的に、やはり最初の小問(第1問 問4)にちょこっとだけです。
熱力学に力を入れて勉強した人は、今年の共通テストでは涙を禁じえなかったことでしょう。なにせ小問が1問だけですから・・・。

A:涙を通り越して、憤怒じゃない?「おい、そりゃなかろうがっ!!」(山口県人)と。
こんなんじゃ、せっかく体系物理で鍛えし技も使いようがなく、上位層では全く差がつかない。交流回路もないし、波の干渉も屈折もないし・・・。無い無い尽くし・・・。そう、今年の物理の総括は「無い・無い」でどうですかw

T: たしかに、共通テストの制限時間で出題できる問題数には限りがありますから、一つの物理現象について掘り下げようとして設問数を割くほどに、全体として出題分野・単元のバランスが悪くなっていかざるを得ません。「思考力を試す」ために「偏りのない知識力」が犠牲になっている構図です。
上でも述べたように、第2問・第3問はもっと削れるところがありますし、第3問については、小問で問えば十分なはずなので、もし、私が共通テストの出題を任されたとしたら、さすがにこれらの点を修正して出題分野・単元のバランスをもっと良くすることでしょう。

A:「もし私が将来文科省大臣になったあかつきには・・・」というパターンは私の授業ネタの1つですが、君はやはり元GHS生ですなww

そもそもの話なのですが
T: この「掘り下げるような問題作り」について、物理という科目で真新しく見える現象や切り口を探してきて、それを科学実証的な思考力を問う問題に仕上げるには、東大や京大といったレベルの難度の問題でこそ可能なのであり、またそうして作られた問題は、それらの大学を受験するレベルの受験生が取り組むことで意義のある問題です。
それを全国の受験生が受験する、平均的学力を問う一次試験である共通テストに持ってこようとすると、難度の高い問題は作れない関係で、掘り下げようとしていくうちに議論が強制的にストップしたり、定性的な判断で逃げざるを得なかったり、あるいは第2問・第4問のように一定レベル以上の受験生には、すでに「ネタバレ」している題材をくどくどこねくり回したり、ということをせざるを得なくなってしまうのです。

A: あるいは、行き詰まりをごまかすかのように、付け足し的な設問で目先を変えて設問を稼いでみたりね。
 喩えるならば、コンビニの食材で高級フレンチを作ろうとするようなもの、あるいは、50ccのバイクでオフロードを激走しようとするようなもの、または、普段着で2000m級の登山をしようとするようなもの(雪の八甲田山か)・・・作成担当者には大変失礼ながら、でも事実ですので。そもそも出来ないものを崇高な理念の下に強行させれらているのです。

T: 「狭い範囲で、科学的実証的思考力を試す問題を作れ」という無理難題を前にして、一生懸命に問題作成している方々には酷評に聞こえるでしょうが、しかし!! 入試物理を本当に掘り下げて・どんな難関にも立ち向かえるようにと、日々真剣に教えている身としては、まったく正直な気持ちです。

ささやかな改革案
T: 最後になりますが、日本全国の受験生が受ける物理の試験としては、センター試験のままでもよかったのです。今のままでは物理を選択した受験生がかわいそうです。それでも<仮説→検証>という科学的正統派の問題を入れなくてはならないというのであれば、せめて4問のうちのどこか1問はそういう問題にするが、他の問題は、センター試験にならって、範囲に偏りなく設問を作り、というのではいかがでしょうか。

A:そう、1つでいい。そんなにネタはないのだから。
 あとは、立式した後に数式の操作・計算をして答えを出すというプロセスも、物理的処理能力と認めて、それなりに問うということも復活させてほしいですね。
                              <了>

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