平均点13点下落
共通テストが始まってからずっと、物理の平均点は化学・生物に比べて高いという状況が続いてきました。生徒に毎年「今年こそは難しくなるぞ」と言い続けて、警戒を促してきましたが、今年ついに大きく難化しました。
2025年の平均点が59点、2026年の平均点が46点と、なんと13点も下がっています。GHSでは「難化の年こそ飛躍の年!」ということで、GHSの平均点は全国平均より+17点をマークしました。
去年が平均点と同じ点数からのスタートだった生徒が、難化の年に平均点より17点アップという事実は、一年でしっかりと実力を付けたことの表れでしょう。
A(天野):やあやあ、田川先生(本部新宿校で物理担当)。今年も物理解説を一緒にやりますか。
T(田川):もちろん歓迎です。今年の化学は解説は書かないって先日ブログに書かれてましたね。
A: 2022年から骨のある問題が少なからずあったので、フルでの解説を書く気になったんですけど、今年はそういうのが姿を消して大人しくなってしまった。その結果がこれですよ。
( 駿台予備学校/ベネッセコーポレーションより引用 https://dn-sundai.benesse.ne.jp/dn/center/doukou/dl/2026-dn-gaikyo-05.pdf)
ダイヤモンドヘッドかーい! wwと叫びたくなるような、歪つな分布になっています。つまり高得点者がごそっといるわけで、これではGHS生のアドバンテージが発揮できません。「体系化学でやれば、こんな優位性が・・・」を示す素材としては落第なので、「どこよりも早い解答解説!!」のモチベーションがロストしたわけです。
T: 昨年までの物理はまさにそうでした。でも、今年は「難化した」というから、今年は物理の番か!! と立ち上がりかけたのですが・・・。ちなみに、物理の分布はどうなっていますか?
A: 昨年までが、右(高得点)に偏位しすぎていたのが、上位がごそっと削られて、平均点付近がピークになっています。まあね物理も化学もできない層は一定数いるということで、山は二つありますが、その間が長いか短いかの違いでしかありません。
T:度数分布としては化学よりはまともな形になっているし、難しくなって上位層が減るのはGHSのアドバンテージですから、その点は良しとしましょうか。ただ、重要なのは、どういう点で難化したか、という分析です。
共通テストの問題についてですが、今年の難化の中身は何でしょう? 大きな原因は、第2問の「重心単振動」の問題です。この問題を検討する前に、他の第1問・第3問・第4問を検討していきましょう。
第1問・第3問・第4問の検討
第1問
T: 小問集合です。交流・慣性力・原子物理など、扱う題材はレベルの高いものでしたが、中身はというと・・・な問題がほとんどです。
交流は、式を立てずとも定性的なイメージで解ける“骨抜き”問題です。慣性力についても、同じく定性的な問題です。問題の前に、ひとつ実験があり、この実験結果を手掛かりにすれば、慣性力の知識がなくとも正解できます。これも骨抜き・・・。
原子の問題は「コンプトン効果」の問題でした。
コンプトン効果の問題は、「原子物理の公式を用いた二次元衝突の問題」でエネルギー保存則と運動量保存則を連立して解いていくという、私立医学部にも出題されるややレベルの高い題材です。
しかし、本問では、運動量保存則がすでに与えられているというわけのわからないアシスト(というかほぼ答え)があり、さらに θ=90°, λ≒λ’という二つの条件が使えます。 λ≒λ’はコンプトン効果で定番の近似であり、そこは問題ないのですが、θ=90° という設定により、エネルギー保存則を立てなくてもよいという問題設定になっています。
解答に必要な式が与えられて、あとは条件を代入するだけ・・・これは題材がコンプトン効果である必要もなければ、物理の問題である必要もないという今までの共通テストでも最大の骨抜き問題、いや、中身が全部なくなって、題材だけ物理的な“皮だけ”問題になっています。これで「原子物理を出題した」という建前を作ったつもりなのでしょうか・・・?
総じて、第1問は今までの共通テストの(悪しき)特徴を踏襲した“骨抜き”問題でした。物理のテストかと問われれば、微妙なところです。
A: 第1問は小問を集めて、「全範囲を満遍なく出すぞーという」方針(建前)を満たす役割ですが、物理は問題すうが少ないため、ここが不可欠です。それでも、5つも問題があれば、一つくらいは、オッ! と言えるややハードルの高い問題を配置してもいいはずですが、みんな見掛け倒しのコスプレ問題です。「骨抜き・皮だけ」というご評価はムベなるかな、です。
第3問
T: A問題とB問題に分かれています。
A問題:熱力学 PVグラフの読み取りの問題です。難易度は低く教科書の例題レベルです。
B問題:波動 センター試験時代でもよくあった、波の図を読んでいく問題です。こうした波の図的問題は、難易度が低いため、国立の二次試験ではあまり出ませんが、波の学習において、基本的であり大切な問題なので、それが共通テストでも引き続き出題されるのは二次試験でカバーできない部分を補っているという面で良いことです。
第4問
T: 前半の問題はコンデンサによってつくられた電場の中での斜方投射で、後半は磁場中の円運動でした。後半の最後の問題は、斜方投射→磁場中の円運動の流れを、電荷の質量を変えたらどうなるか、という合体問題で、答えを得るために必要な式の数が多く、計算に時間がかかります。難易度もここまでの問題に比べて急に上がっており、正解できた人は少なかったでしょう。
A:第4問で電場+磁場+力学のミックスワザで出題範囲を広くカバーしましたから、第3問は波動・熱力学の折半で、全範囲カバーしたことになりますね。特に、二次試験には出ないというか、出しにくいところをカバーするというコンセプトは、たしかに功徳ある善行でござりしょう。
T:ここまでの問題は、例年の共通テストと、質(定性的な骨抜き問題)・難度ともに例年通りで、強いて言うならば、第1問の題材がハイレベルなので、平均点はここでもやや下がるかな・・・?という印象です。やはりネックは第2問でしょう。
第2問 のハードル
T: 重心系単振動の問題です。重心系単振動とは、重心を中心に二つの物体が単振動する、という<二体問題>の代表例で、昭和の終わりに東大で初めて出題され、やがて地方国立・私立大学でもふつうに出題されるようになった“難問”の系列の一つです。
ただし、重心系単振動には、問題の出し方によって、難易のレベルがあります。簡単な問題は、運動量保存則とエネルギー保存則を連立して解くというもので、どの参考書にも載っている解き方です。
難しい問い方は、この両端で振動している物体の単振動を、<重心>から見ると(=重心系座標)、2つのバネが対称的に単振動しているように見えるので、物体について、
① まずは重心の速度を出す (VG=1/2V1) [問題の設定ではこれがV]
② ①で出した重心速度と同じ速度で動く座標を設定する
という準備をしておきます。
A: すると、長さが半分になるので、バネ定数は2kとなり、独立した二つのバネの単振動として解けばいいのです。質量M が共通なので、振幅についてはB1だけ考えて2倍すれば終わりです。重心から見た初速は1/2V1です。
これは、体系物理ADでは、Theme3として、例の東大の問題を取り上げて(タイトルは「歴史はここから始まった!」)、解説するので、どちらの解き方でもGHS生ならスイスイと解いてしまうレベルですね。
しかし、このテーマ自体は世間では「難問」であり、かつ、問題集にも一つくらいしかなくて、しかも、それを避けて通っていたりするので、多くの受験生は、文字通り「面食らった」ことでしょう。すると、設問10と11で-10点ですね。
T: さて、今回の共通テストの第2問はどうなのかというと、「問題あり」です。
問題で求めたいのは、簡単な問題の解き方で求められるものであるにも関わらず、難しい解き方(重心から見るとき方)で誘導し解かせている
というねじれが起きているのです。共通テストの誘導に乗らずに普通に解いた方が解きやすい問題を、重心を意識した誘導で間違えやすくさせているとも言えます。
実際、GHSで96点を取った生徒は「誘導を無視して解きました。簡単でした。」というコメントをしています。つまり、「誘導に乗る方が難しい」わけで、これは問題作りとしてダメでしょう。そういう意味では、今年の平均点低下は“人災”の面が強いと言わざるを得ません。
A:バネが最も伸びた時ですから、重心の速度と両球の速度は一致します。ならば、重心の速度など持ち出す必要はないわけで、力学の二つの保存則でスッと解けます。・・・これだと差がつかない、とでも思ったのか、そこにここでは必要ない重心の話を無理やりくっつけているので、保存則で解いてから、最後に重心の速度に置き換えるというステップが入ってしまいます。
衝突直後のB1の速度V1だけでできるので、無駄な置き換えです。
重心速度を出すなら、重心から見た運動がどのようになるかの誘導をかけて、周期を求めるとか、各球の速度のグラフを選ばせるとか、単振動の特性に設問をふるべきだったでしょう。
T: こんな基本的なことを改めて言うのもおかしな話ですが、誘導は難所を突破するための「アシスト」であるべきです。にもかかわらず、出題者の意向に受験生が振り回される、これは物理の問題作りにおいては、「悪問」と呼ばれても仕方がないでしょう。
第1問の“骨抜き・皮だけ”の物理的希薄さ、第2問の誘導のねじれ、第4問の最後の問題の難易度調整不備、これらを総合すると、今年の共通テストの完成度は過去最低と言われてしまうかもしれません。物理の問題はどういうものであるべきか、という基本的なことが分かっておらず、受験生がどういう解き方、考え方をするかという視点も足りていません。
A: なかなか手厳しいですね。大学入試センターににクレーム入れてください。(私は気が弱くてそんなのでできませんが…Ww)
T: いつものトークですね。
結論は毎年の繰り返しです。ようするにセンター試験のままでよかった、ということです。そして、受験生の対策法も毎年変わりません。二次試験に向けて対策をしておけばよい、ということです。共通テストが始まってから、毎年コメントを載せてきましたが、今年の共通テストにコメントをする価値はあるのでしょうか? 来年も同じことの繰り返しなのでしょうか?化学と生物の得点とも乖離しているし・・・科目間の難易度調整も機能していません。
しかしながら、GHS生が毎年高得点を取っている、ということだけは、毎年繰り返しこのブログに書く価値があるでしょう。世間的に「難化した」と言われる年こそ、本物の実力を付けたGHS生が大きく飛躍する。どういう問われ方をしても、しっかりと自分で考えて解いていける、本物の実力の大切さを改めて証明したテストではありました。 <了>