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2025 共通テスト 点差がつやすい化学の攻略法

 GHS長野校では毎年、共通テストについて、オリジナルな解析と解答・解説を公開しています(下の「長野校ブログ」もご参照ください)。今年の化学は難化して、平均点が理科3科目で最低でした。しかし、理系全員が必修ですからここで差をつけたいものです。80点越え続出のGHS体系化学メソッドによる解答解説を公開しています。

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[36]2023 共通テスト 化学・分析と解説《前編》

2023年1月22日 by ghs-yobikou

 

例によって、どこよりも早く?!
今年は、共通テスト・化学の問題分析とともに解説編も作ってしまいました。
共通テストになってから、毎年問題のグレード分析をやるようになりました。
それは、センター試験の末期から共通テストに至って、そういう分析や解説を書く気にさせてくれるような難易度となり、GHS『体系化学』のカリキュラムに沿った(とした思えない?)出題が増えてきましたので、授業・テキストとの相性もよく、今年度は、それを検証する意味も込めて解説編も作ってみた次第です。。

実際に、マジメに解いてみて解説を書いたので、どれどれ大手予備校はとTやTやらのサイトをのぞいて見ると、解答速報は早い(発表されるので)が、どこにも解説はアップされてなくて、設問分析という「具体性のない、誰でも言えるような一般的感想」止まりしかありません。
大手になると、各科目の解説の足並み揃える必要あり、それなりに会議など開いて協議・確認して・・・となると数日ではできない仕事ですから・・・。

とりあえず、1/20月曜日に国語・漢文の解説を書いて、本部校HPのブログにアップしておきましたが、その後、化学に取り掛かって順次配信していくというのはGHSならではのフットワークです。田川講師による物理の解説編も同時進行中です。

まずは傾向分析 
よく、「去年よりやや難化」とか「平均点はやや上昇か」とか、「グラフやデータを使って解かせる問題が増加」とか、何の参考にもならない傾向分析ばかりです。そんなの、分析しなくても受ければわかることだし、昨年との比較は今年のにとって大した意味はないし、来年度の受験生の参考にもならないわけです。まあ、大手だと(昔々K塾におりましたので)少ない字数制限で速攻で書くように依頼されるので、大したことを書けないのです(と弁護しておきましょう)。

とりあえず、結論としては75点を合格点とする、理系の化学一次試験としては適切というべきです。それは昨年度の分析結果と同じですから、共通テストが目指しているのは、「中堅私立医学部の一次試験」としても遜色ない難易度と出題範囲の試験ということでしょう。

以前にも説いたことですが、共通一次からセンター試験にかけて、国が行う試験としての遠慮と高校の現場への配慮と、方面からの批判をかわそうとする忖度によって「易しい試験」作りをずっとしてきました。
平均点は60点台、範囲は文理共通という暗黙の掟に縛られて、高校の履修範囲の1/2以下で問題を作る。
だから、その頃は上位受験生であれば、60分の試験時間は余って仕方なく、かつ、90点以上は当たり前、というものでした。
(ちなみに、私が受験した時は、化学は40分で終わり、ゆっくり見直して100点!!が可能でした。)

ただ、こんなレベルでは、私立医学部の試験としてはへなチョコすぎます。それじゃ選抜に使えないね、ウチの大学は、センター試験に参入するのは嫌だ・・・という大学の声もあったことでしょう。
そこで、センター試験の晩年には、文系と理系の理科を切り離し、徐々に範囲を広げ、難易度を上方に段階的にシフトし、共通テストに至ります。

したがって、昨年や今年のような形式と内容が、ほぼ到達点なのだろうと思われます。

ちなみに、1/19の中間集計では、
        化学49.95点(前回47.63点)
ですので、難易度は昨年と同等ということがその証左です。

50点を真ん中にして、それ以下の層の方がやや多い方に偏移し、かつ、80点以上の上位層が少ない分布になっていることでしょう

再度、述べますが、合格点が75点というのは、テストとして実にまともな作りであり、実力によっていい感じにバラけて分布することで、選抜を容易かつ適正にするための目安です。

。長年、理科の平均点の下方圧力であった文系(悪意はないですよ、事実であり、統計です)を切り離して、理系だけの化学にしたことで、問題づくりの幅が広がり、要するに「まともな入試問題になった」と思います。

設問グレードと配点の分析
共通テストが始まってからの分析は、まず設問のグレード分けと点数配分をまず分析することにしています。

ちなみに、設問数は、29です。単純平均では一つあたり2分です。とはいえ、実際にやってみましたが、それなりに手間がかかるものもあり、時間的にはあまり余裕はなく、したがってゆっくり見直す時間は残りませんでした。
そのため、チェックミスが発生し、残念ながら満点を逃し97点でした。(解説編ではそこにも言及しています)

しかも、「難度A」の問題については、GHS・化学アドバンスのスキルを使って、速攻・スキップ解答をしましたから、多くの受験生にしてみれば、全問を解くこと自体が時間的に困難であったのではないでしょうか。

体系化学のカリキュラムから、問題のグレード分けは以下です。

C: 一つの化学知識、ワンステップの計算で、速攻で解ける問題。ここで基礎点と時間を稼ぐ。
B:複数の化学知識を併せて解く。計算はハードルが二つ。標準問題レベル。
A2:Bの少し上の知識や、さらなるハードルがある、「差をつける問題」
A1:化学ADレベルで演習している計算問題。ただし、ADレベルから見ると基本例題のレベル。

このグレードで分類すると、

  問題数 配点
C        9            29
B     14             49
A2    4              14
A1    4                8

となりました。つまりAは手付かずで、Cをほぼ確実にとって、 Bがほぼ半分取れるとするとほぼ平均点の50点付近となります。

昔の易しかったセンター試験の頃は、BとCの比率が逆で、平均点が60-65点くらいになり、しかもAレベルの問題がほとんどなかった頃は、平均が70点になったりしたわけです。

では、体系化学的に、定量と定性に分けてみましょうか。

   問題数 配点
定量      9               32 [A:16,B:13, C:3]
定性    16               55 [A: 6,B:29, C:20]
その他 4                13

「その他」というのは「化学の計算ではない、算数・数学的計算」のことです。すると定量化学、要するに計算問題はグレードAが最多であり、定性問題のようにスイスイとは行かないので「難しい」と感じるわけです。Aの定量計算問題に手も足も出ないとすると、すでに84点満点になります。定性のAも得点できないと74点満点です、上でも述べたように、平均的受験生が、この状態でBを半分とれたとすると、-22点で、平均点50点位に下がってしまうのです。
要するに、そのようなグレードと配点で構成されたセットになっています。
昨年度の分析を引用します。

2020 設問  32個 A 32  : B 13 : C 55    平均54.8点 センター試験最後
2021            29個 A 18  : B 44 : C 38      51.0  共通テスト1
2022           30個  A 33 : B 43 : C 24            47.6        共通テスト2
並べると
2023           29個     A 22 : B 49 : C 29    49点(中間暫定) 

共通テストになってからはほぼ同程度のグレード比率であり、同程度の難易度だということがわかります。つまり形はほぼ定まったということです。

・・・・では長くなりましたので、問題についての解説・講評は、次の稿にゆずることとしましょう。<続>

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[35] 物理「交流回路」の入試事情

2022年10月19日 by ghs-yobikou

New! 10/19 [35] 物理「交流回路」の入試事情

「交流」という名の狭い難道
かつての私もそうでしたが、

「交流のところは何のことかさっぱり分からない。」
「たくさん公式が出てくるので、とにかく暗記して解いているだけ」
「訳がわからず、覚えることもできない」
「サーっと授業が進んで何も分からないまま終わった」

 まあ、このどれかで、レベル学力を問わずほぼ受験生全員に当てはまるでしょう。 昨年、現役で国立医学部に進んだN君も物理はかなり得意ではありましたが、交流回路については‘特に消化不良'との主訴でしたので、‘消化促進剤を処方’してあげました。

消化不良の原因は、ズバリ「微積分の排除」です。

交流は、コイルを磁場中で回転運動させて発生する電流ですから、周期的に変化します。つまり、三角関数です。その時間的変化を把握するには、時間tで微分・積分すればよいだけです。ここは、数学3で履修する、微分・積分を駆使してこそわかる、というか、そのために数3の微積があると言っても過言ではありません。

・・・が例によって、「高校生が物理で微積分を使ってはいかーん」とかいう考えの高校教師の方がほぼ100%ですから、当然にうまーくそこら辺をぼかして、天下り式に公式を示して、当てはめるというような授業になってしまいます。

代ゼミと駿台の想い出
実は、私がかつて、東京は代ゼミ本校の東大クラスに在籍していたときも、このレベルでの交流の授業でしたので大いに不満でした。「トップ予備校のトップの講師がこれかい!!」と怒りました。化学は代ゼミの大西先生が日本一でしたが、物理は駿台の後塵を拝していました。

真なる教えを求めて、次年は、駿台の市ヶ谷の東大理3αに移籍しました。やはり、物理は駿台!! トップのS先生は、何の配慮も忖度もなく、バンバン数学を駆使して、物理を明快に講義し、もちろん交流も微積でスッキリわかりました。数学と物理が一体化してこそ、電磁気学およびその応用としての交流回路は記述できるのだ、と。こんなのは大学教養レベルでは普通であり、常識です。
高校物理だけが、真実を隠し、いびつな形で知識を、天下り式に与えるのです。昔も今も、そんな物理教育の歪みは、ほんの1mmも進歩しておらず、旧態依然です。ここが解決されていたら、私などがわざわざ物理に関わる必要はないのです。

私は求め求めて、本物に出会うまで随分遠回りして、長い月日を費やし(その分感激は大でしたが)ましたが、せめてこの長野の地で、同じ憂き目にあっている、しかし、本物を求める夢を諦めていない若者がいると確信して、GHS長野校で、かつての私が受けたかった物理の授業を展開しているわけです。

処方
具体的には、『物理重要問題集』(数研出版)の交流の章の問題を、本来の微積分を駆使した解答に書き換えてみせることです。10問もありませんが、それで必要十分です。交流は「難所」ではありますが、範囲は狭く、踏破するのに手間はかかりません。それでもう追加で問題を解く練習はいりません。法則と式の操作は論理的には全て同一ですから。

「ああ、そういうことだったんですか。回路の法則を作って微積でチョンとするだけじゃないですね!!」
「公式なんて覚えなくても勝手に出てくるじゃないですか。だから、もう完璧に覚えてしまいました(^^)v」等々・・・心晴れやかに完全治癒します。

 昨年、今年と数名の生徒に個別指導(ということは同じ内容を繰り返することになるわけで・・・)したおかげで、自分の中でコトバと流れがテキスト言語として固まってきて、長年の懸案であった、交流の基本テキスト(ただし、難関入試から見た基本ですが)を一気呵成に書き下ろすことができました。

どうしても、交流回路はマイナー分野だけに、テキスト作りも後回しになってしまいます。特に、数式の入力が手間がかかるので、板書した方が断然早く、それで済ませて、データ化を先へ先へとのばしてきたのです。が、このタイミング、二学期開始後の9月の繁忙期にそんなことをやっている暇は本当はないはずのに、何でだか「原子物理」とセットでテキストが出来てしまったことは、自分でも奇跡(=奇行かつ気まぐれ、ないし何らかの啓示?)とさえ思っています。
ただ、テキスト作りっていうのは「結果オーライ」です。一度作ってしまえば、次の場所に進むことができます。

で・・・今回は、その交流テキストを全ページ、無料公開します ! その理解をふまえて『重問』を解き直せば、入試対策は完成です。

これは、このHPに辿りついて、このブログをここまで興味を持って読んでくれた受験生へのささやかなギフトです。・・・かつて不遇な受験生であった自分への、遅ればせのギフトを兼ねて。

『GHS 体系物理読本_特講2_交流回路 他 』全46頁 電子ブック版

(もちろん、冊子もありますが、これはさすがに有料です。)

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[34]「原子物理」の入試事情

2022年8月30日 by ghs-yobikou

1.力学、2.波動、3.熱力学、4.電磁気学ときて・・・
高校の理科科目である「物理」は、高校2年生から大体こんな順で進んできたでしょう。(高校1年生の間は、「物理基礎」といい、共通テストの文系の範囲ですから、「物理」のほんの一部分です。) 進度が速いところでは、この辺りで最終章である「原子物理」に入る頃です。

もっとも、GHS長野校では、物理は高校の進度と関係なく、GHSのオリジナルテキストで、どんどん先に進みますので、現在の3年生は、すでに「原子物理」は入試レベルの問題演習も含めて8月中に修了しています。
例年、微積分を学んだ2年生の二学期半ばから始めて、生徒のレベル次第ではありますが、概ねこういうスパンで物理1周目が修了するようになっています。もちろん、これは学校の補習ではなく、難関入試の基礎づくりですから、この間に、リードαとか、基礎物理問題集とか、さらに、物理重要問題集もこなしています。さあ、二学期から、いよいよ<物理アドバンス>です。

「原子物理」の入試事情
ここまで、高校物理の四大柱である力学・熱力学・電気磁気力学・波動(力)学を学んできました。入試問題としての主要なエリアはこれで終わりです。しかし、教科書には「原子物理」という短めの章が最後に控えています。
・・・かつて、高校時代の授業では、ここまでの主要範囲の授業で時間を取られてしまい、現役生は「原子物理」はほぼ手付かずか、申し訳程度の駆け足授業やプリント配布等で「やったこと」にされてしまい、実質的に未修状態で卒業させられるのが常態と化していました。
だから、大学入試センターの共通試験では、「実質未修」という現場の声を反映して(?)、「原子物理」は選択問題の扱いにするという「救済措置」がありました。

・・・ということは、人は易きに流れるもの。「原子物理はやらなくても大丈夫」という思い込みを生徒も教師も持つことになり、それが永年放置されていました。今でも、そういう高校が少なくないのです。しかも、単に時間的に不足というだけでなく、内容的にも20世紀の物理学として大学教養の物理学につながる「難解さ」がありますので、授業すること自体のハードルが教師にとっても高いのです。

ところが、センター試験から共通テストへと切り替わる流れと同時に進行した難化の傾向には、明らかに「原子物理は必須」という項目が含まれています。大問として「原子物理」が出題され配点は15点程度もあります。以前のような選択の余地がなく、高得点を取ろうと思ったらここをスルーするわけには行かない、というのが現実となりました。

「現実に妥協して入試問題を作るのではなく、指導要領として設定された履修範囲に、現場が合わせなさい」という、文科省のお達しです。もちろん、これは本来の、あるべき姿であり、この「難化」は実にまともな教育的メーッセージと言えます。

これまで、「原子物理」の分野は、以上のような捻れた理由から、私立医学部入試では容易に差をつけることのできる分野として昔からふつうに出題されてきましたし、年々難易度が上がってきています。
しかしながら、一方、国立大の二次試験レベルでは、この「原子物理」は大問としては出題しにくく頻度が下がります。というのも、二次試験に見合う「原子物理」の新作問題を作るのは困難・事実上不可だからです。その理由は後々述べることになりますが、確かなことは、「原子物理に体系物理アドバンスレベルの問題はないのだ」ということです。

だから、この時期、この段階で仕上げてしまうことが必要であり、可能なのです。ただし、条件付きです。

上で述べたように、センター試験の末期から共通テストに至る過程で、「原子物理」は「現役生に配慮して選択問題とする」というゴマカシがなくなりました。もはや、避けて通れない「原子物理」に対して、現場の高校側は「やり残し」との批判を受けないように、最低でも形ばかりは履修を終えるようになってきています。
もちろん、その皺寄せはいうまでもなく、「浅く・速く」です。じっくりやっても「原子物理」は理解が難しい内容がほとんどですが、それをそんな風にやられては、できる生徒からも不満が出てくるのは当然でしょう。

優秀な生徒ほどに、その願いは「原子物理」の完習です。何を言っているのか、わけが分からないままに形式的な授業で履修したことにされたり、進度の関係とやらで未習状態で卒業させられる(県立トップクラスの進学校の話です)彼らにとっては、「原子物理」がわかっていないことは、入試での不安を煽る要因となっているのはもちろん、何よりも、「物理の学びが終わっていない」という宙ぶらりんな状況が悔しくてたまらないのです。

かくいう私も、東大受験の時には、同じ思いがありました。高校はもちろん、予備校でも「わかった」と感じることなく問題の解き方を覚えるだけでした。幸い「東大は、原子物理は出さない」という伝統(?)に助けられましたが・・・。

学びの条件
古典力学の土台の上に構築された<量子の力学>は、まさに古典力学の体系的な理解なしにはできないし、さらに、<量子>という概念を、古典力学の考え方と対比しながら論理的に把握することなしには、「何を言っているかさっぱりわからない」となるのは必定です。

だから、他の分野に輪をかけて、ここまでの学びの物理学史をふまえて、原子物理についての<発見の論理の歴史を学ぶ>ということです。入試での原子物理の問題で問われるのは、物理研究の歴史・法則の発見のプロセスそのものであり、その理解です。意味がわかれば、やることは難しくありません。つまり、「応用問題」は出ない・出せないということです。(そうすると難しくなりすぎて、一握りの難関大にしか出せないし問題がつくれないのです。)

科学研究の歴史に沿って、‘歴史的実験’の意味と意義と順番を、理解した上で覚えておくことが極めて重要です。流れのない知識の並びや、飛び飛びの知識の寄せ集めでは、「原子物理」には歯が立たないのです。

そして、朗報!! GHS長野校では、生徒たちの要望に応える形で「原子物理」をわかりやすくかつハイレベルに説いてきましたが、それが遂に読本スタイルのテキストとなりました。
百聞は一見に如かずです。このブログをここまで、読んでくれている人には、ここに電子ブック版で無料公開します。全60ページで、電子ブックで読み切るには大変かと思いますが、教科書や参考書との違い、GHSでやっていることのレベルの違いを知るには十分かと思います。9月第1週には印刷製本も出来上がります。

『体系物理 法則・公式読本』(別冊) 特講-1  第5章 量子の力学 

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[33]共通テスト・解析<5> 数学 対談

2022年2月9日 by ghs-yobikou

恒例! 数学対談

・・・といっても、ブログにアップするのようになったのは昨年からですが。毎年のように、数学担当の依田先生とは意見交換はしてきましたが、センター試験では書くほどのことはなかったのに対して、昨年に輪をかけて今年はさらに評価の芳しくない数学については、やはり今年も文章化しておきたいと思います。

天野(A): 数学は、IA,ⅡBともに「難化」したと騒がれていますので、私も化学・物理の次に早々に一通りやってみました。「早々」と言うのは「漢文よりも先に」ということですが・・・。日頃は数学まで触れる暇はないので、年に一度のリハビリみたいになっています(笑)。

私は私で、感触・感想がありますがそれを言う前に、まず質問です。色々と言われている「形式」はともかくとして、純粋に<数学の問題>として見た時の難易度はどんなもんでしょうか?

依田(Y): 私立の医学部の入試問題より難しいね。数学ⅡBより、数学Iの方が難しい。

A:確かにそういう感じです。そのまま、私立医学部の入試問題としても使える、ということですね。私立医学部が共通テストを利用する定員枠を作っていて、その選抜に相応しいように作られている、と思えてしまいます。

「入試数学あるある」になりますが、数学ⅡBでそんなに難しい問題は作れませんよね。これに対して、数学Iの整数問題なんて「難問」はいくらでもあります。

ということは、別の見方をすると、共通テストだの、私立医学部だのという数学の区分けや境界がなくなって、数学そのものを極めれば良くなったとも言えますね。私も、「センター試験の数学」対策として取り立てて勉強した覚えはありませんね。数学は数学であり、形式がちょっと窮屈なだけで。

Y:そういう点は確かにあるけど、共通テストは、とにかく数学のテストらしくない。数学以外の余計な部分がくっついていて、文章を読み慣れていない受験生は大変だったと思う。二人の対談があったり、ムダに日常的な設定があったりするので、そんな沢山の日本語を読まないと数学に入っていけない。数学にはあんなの必要ないんだよ。

A: 「二人の対談」は、解答の方向性や、別解の可能性を絞ったり、ある方向に誘導するのに使ってますね。そういうのは、昔から、ふつう、問題文の中に埋め込まれていて、問題文の誘導にしたがって解くようになっているものです。それを「対談形式」にしたところで、やることや拾うべき情報は変わりないので、無駄といえば無駄です。

Y:そんな風に、誘導だとわかって、必要な情報だけ拾って読み飛ばせれればいいんだけどね。それは「デキる」受験生だよ。真面目に読んじゃうと無駄に時間がかかるんだよ。数学に辿り着く前にエネルギーを使う。

A:ふつうは、問題を見て、解き方の方向性をいくつか想定して、出題者の誘導の方向に合わせるものです。解答の自由度を制限するのは共通一次からの伝統です。しかし、確かに、そのための対談形式は要らないと思いました。問題文に書けば良いだけです。読んでから考えるのではなく、自分で解き方を色々と想定しておいてから読むと、その網に引っかかってくる、という感じで解くものでしょう。なので、私としては、「親切だなあ」とさえ感じましたが。

数学問題における「日常性」について

A:では、もう1つの無駄「日常性」です。数学IIBの問題4<「自転車と歩きの行ったり来たり」という設定ですが、これは物議を醸してますね。そんなにヒドイのか、と逆に興味が湧いて実際にやってみました。

問題4 (pdf で開く)

ん?・・・やってみると 中々良い問題じゃないですか?  そういう規則的な動きをする二点があって、その繰り返しの規則から漸化式を作る。与えられたグラフを利用して、作図しながら交点を求めていけば難なくできます。漸化式の応用として良い問題だと思いましたが・・・。所詮、数学ⅡBの範囲ですから、こんなもんですよ。

Y:いや、そりゃ、できる人は、そんな風に、余計なところをスキップして、問題の本質を見いて、要するに漸化式作ればいいのか、と見切ってサクッと解けるんだけどね。普通はそうはできない。真面目なヤツほど文章に付き合って、無駄に時間を使ってしまうんだよ。そこに到達するまでに余計な時間がかかってしまう。でも数学の試験としてはその部分は全く要らない。

A:70点以上の合格点をとった生徒達に「あれ、どうだった?」と聞いて見ましたが、「楽しかったですね〜」とか、「ふつうに解けましたが・・・」のようなリアクションで、苦労なんてしていないようです。出来るできないの本質的な差が顕れる、という意味でも良問ですよ。

あれが出来なかった人は、数列の、漸化式の学びがしっかりと出来ていないということでしょう?それを棚に上げて、事例が非現実的だから・・とか文句を言うのは、勉強不足を白状しているようなもので、本当は恥ずべきことなんだ、とわからなきゃいけないでしょう?

Y:数学の実力としては、そう。数列の問題としては難しくはない。

A:ところで、自転車が人を追いかけるとかいうような、具体的な状況設定は、数学Iにも、昨年度も見られましたね。

Y: 昨年も話したように、共通テストの数学のコンセプトに「日常性」というキーワードがある。数学教育の現場では、数学離れが問題となっていて、日常的な例で数学が活用できる、ということを示して興味を持ってもらおうというような意図があると思う。共通テストの数学は、その「日常性」をこういう形で取り込み、範を示そうとしているわけ。

A:だったら、「日常性」と言うことを取り違えていますね。数学で役につ日常性なんて無いですよ。平凡に暮らしている人間が、数学を役に立てる場面なんてないですよ。そんな日常性は、寺子屋的な「算数と読み書きそろばん」で十分間に合うですから。

この日常性は、せめて、民間で宇宙ロケットを飛ばすとか、斬新な形の建物を立てるとか、津波の到来を予測するとか、コロナのピークを予想するとかいう、人類レベルで解決したい問題としての「日常性」に立ち向かって初めて、数学を役立てるべきものでしょう?

Y:そう、「日常性」ということの解釈が変なことになっていて、こんな「非日常的な設定」になってしまっている。

A:なんだか、どうも、具体化するにあたってのセンスがないんですよ。せめて、「二点がこんな動きをするゲームを考える」くらいに抑えておけばよかったかと。将棋だって特異な動きをする駒がありますから。

Y: 日常的な例を持ってくるときのセンスが無いのは確か。

A: 私は、問題を解いた後に考えたんですよ。こんな動きをする例ってどんなんだろうと。たとえば、目的の方向に向かって進む部隊と、それを後方で支援する補給部隊ってのはどうかなと。すると、補給する間は互いに止まってないといけないし、補給部隊は、いちいち補給物資を調達に戻らないといけないし、そこで一定時間止まらないといけない。・・・といっても、これもゲーム的設定ですけど。だから、そんなに凝らないで、最初に挙げたような「規則的な動きをする二点」としておけばよかったと思いますよ。この問題の設定は、日常性でもなんでもない。

Y:「日常性」ということを履き違えているんだよね。

A:これでは、むしろ逆効果でしょう。かえって数学離れを助長することになるんでは? 「数学と日常性」というテーマはよいにしても、その「履き違え」とともに、数学は役に立つんだ、ということを具体化する際の「空回り」です。

Y:数学の試験は、こんな余計な部分をなくして、数学の問題として、難易度を保てばいい。余計なところで時間を使わせることになんの意味もない。これだけ批判されているから来年どうなるか、わからないけど、こう言うのはやめてほしい。そのまま行くなら文章を読む時間の分、テスト時間を長くするべき。

共通テスト的数学問題への対策は

A:化学の対策として書いたんですが、「共通テスト対策をしないこと」=「化学アドバンスレベルをしっかりやること」ですが、数学ではどうですか。

Y:その点は同じ。長い文章を読む力というのは、小中学から本を読み、文章を書く、ということの積み重ねだから、今からすぐにどうかなるものではない。だから、そういう人は、数学力を上げる、つまり、数学的思考の特徴としての、抽象力と形式をみる力をつけるような問題演習をすること。見たことがなさそうに見えるものでも、抽象化すれば同じところに行き着く、そういう数学的論理能力とししての思考力をしっかりと訓練すること。これは他の科目にも通じることだけど、何だか見たことある問題が解ける、というのは記憶力・知識力であって、論理的思考力ではない。そこにシフトすることだよ。  

A: 化学の問題では、教科書では決してお目にかからない物質や反応式を出してきて、必要な知識は与えて、その場で読解して、でも、やはり同じように解く、基本を応用して解く、ということが普通になっています。今年は、そういう問題の比率がさらに増しています。これは<体系化学>の指導で当たり前にやっていることなので、GHS的にはWellcome!!です。

 そもそも国語では、絶対に見たことのない文章が出ますよね。小説も昭和の昔の作品の切り取りだから、絶対に知らないものばかり。予想しようがない。よくそんな小説を引っ張り出してくるな、といつも思います。古文も漢文も、絶対に教科書に載っている文章、いわゆる「有名古典」は出題されない。なぜなら、その文章を収録した教科書を採用した学校が有利になってので、そういう不公平がないように、必ず誰にとっても初見の出典を選ぶのが共通一次試験以来の30数年変わらない鉄則です。だから、「朝日新聞の天声人語は入試に出るから、朝日新聞を読みましょう!!」というようなオススメとは対局です。そんなのは国語の対策じゃない。宝くじ的対策に過ぎない。国語は現代文も古典も、100%見たことない、初見の文章を読む力を持つしかないのです。もちろん、英語だってそうです。英文のネタはそれこそ無限にあるので、同じ文章に遭遇することはまず無い。だから、文法や単語を覚え、構文を習得し、読解力を鍛える、それがまともなテストです。

数学だけ、「どこかでやったことがあるからできる」問題を解くだけでOKという体だったセンター試験は、本当はおかしい、と考えるべきです。そこから、数学的な考え方、解き方を抽象して、それを初見のものに、適用して解ける、それが本物の力ですよ。

Y:よく言えば、共通テストは、数学教育の本来のあり方の方向を示唆している、と。問題をただいっぱい解いて、記憶と知識だけで勝負できた時代は過ぎ去った、ということかな。原点に返って、数学の実力とは、数学的思考力とは、数学の体系とはを把握して、それを培うための問題演習を指導する、そういうことをGHSではやってきたのだけど、この騒ぎを見ると、世間一般では、そういう面倒臭いことを考えずにやってきた、ということでしょう。

A:結論は出ましたね。

統計処理の問題は「おいしい」

 最後に、「日常性」という点で、付け加えたいんですが、数学IAの第2問の[2]と数学IIB第3問の、統計処理の問題こそ「日常性」ですよ。医学研究にはこの統計処理が不可欠で、むしろ医学部で最も役立つのはこれだと言っていいです。経済・経営学においても統計学は重要で、京大等で、経済学部にわざわざ理系枠を設けるくらいですから、我々の住む社会の「日常性」を支える数学の分野として、統計学はますます重要度が増しているのです。だから、「日常性」を重要視するなら、統計処理の良問を作れば十分と思うのですが。

Y:そういうレベルの「日常性」が数学の活躍の場だね。センター試験、共通テストの統計の問題は、確実にできるし、難問はない(統計処理の手順は決まっているから)ので、選択問題(数学IIBの第3問〜第5問)では、統計の問題を選択するようにと生徒には勧めているよ。

A:私もそう思います。私の受験期には、統計処理の出題は、全く無かったです。私が今受験生だったら、「得点確保のために統計学を集中して完成させてやる」と考えたはずです。だから、もう一度強調しますが、医学部に行って、数学の勉強してよかったなと思えて、実際の勉強に役に立つのは「統計学」だけだと言っても過言ではありません。それを理解する支えが関数であり、微積であり、その他の計算です。医学部を目指すなら、将来のためにもそういう戦略を取るのも一石二鳥だと知ってほしいですね。

では、こんなところで、お開きでいいですか。

Y:今年も、色々と意見交換出来てよかったよ。どうもお疲れ様でした。

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[32]共通テスト・解析<4> 総説 続き

2022年1月25日 by ghs-yobikou

70で合格、80は優秀、90ならほぼ神
共通テストの「難化」についての、GHSとしての見解は[27]の総説に述べましたが、それを端的に述べれば、このタイトルのようなるでしょう。
一般にテストというものは「60点で可」つまりなんとか合格というのが伝統的な成績のつけ方です。
それゆえ、これで50%も取れない受験生は、「不可」、つまり「落第」、すなわち、それまでの勉強は、大学を受けるには不十分ということにすぎません。大学に入ったはいいがついていけない、学問の府で学びに値しない学力で、大学に行く方が本当は間違っているのです。まあ・・・ふつう赤点の生徒には、再試験を行ないますが、それは浪人を意味します。

そもそも易しかろうが、難しかろうが、競争試験なのですから、自分が目指す集団の中で上位になること、そして志望校の要求する水準に達していたかどうかだけが問題です。

さて、世の中はなんだか出来なかった生徒への同情記事と難化への批判記事ばかりが溢れていますが、できる生徒達の意見も聞きたいと思いませんか?・・・なので、実際に及第点をとった複数の受験生との面談をふまえ、ここではそういう声を届けたいと思います。もちろん、これは少数派の意見になりますから、マスコミレベルでは出て来にくいものです。
しかし、本ブログをご覧になっている受験生や保護者の方が知りたいのは、むしろこちらの方ではないですか?「できる生徒」ってどういう感想なのか?と。

そもそも80%の壁超えはどれくらいいるのだろう?
今回の「難化」でさすがに上位層も削られてしまい、90%超えは「ほぼ神」の領域となりました。ということなら、今までと得点基準ラインを変更すればよいだけであり、これまでの80%の壁は76%に下がり、90%超の高い壁が、85%超となったということです。
理系に絞っての話になりますが、「難化した」と言われる中で、今回80%を超えた人は何人くらいいるのか、知りたいものです。
得点分布グラフだけで、人数まではデータとして表てには出てないのですが、分かっているデータを使って以下のように試算することが可能です。特に難関・医学部を志望する人にとっては参考になると思います。

1. 東大・京大の合格=80%越え
河合塾のデータリサーチをみてみましょう。

さすがに東大受験生たるもので、難化もなんのその、ボーダーライン(定員となる順位,BとCの境界)で80%くらいの得点を取っています。(もちろん、理科三類のトップに数十人でしょうが90%越えの「ほぼ神」がいます。かつてのセンター試験の時代はこれが95%超でした・・・)

二次試験の難しさから言えば、共通テストの「難化」は誤差範囲です。むしろ力を発揮できる場面ですから、「難しかった」という数学でも80点くらいは取るものです。

つまり、東大の前期合格者=前期定員が80%超えと見なせます。京都大学についても同様のデータが出ています。それぞれの定員を足してみます。

東大2958名 + 京大2823名-(医学部97+107)=5577名

2. 旧帝大医学部+α
国公立大の医学部のデータについては、今回は今までにない特徴があります。それは二層化とその境界が80%という点です。
旧7帝大(北大・東北大・東大・名古屋大・京大・大阪大・九州大)および都市圏の医学部(東京医科歯科大、千葉大、横浜市立大、大阪公大[大阪市大]、神戸大)の5校は、ボーダーラインが80%超と高止まりしており、これらの医学部の前期合格者=前期定員が80%超えと見なせます。

上記の医学部の前期定員を足し合わせると1106名

3.2以外の医学部の上位合格者
上記の大学医学以外の、いわゆる「地方の国立大医学部」のボーターは見事に横一線で76%±1です。つまり、80%を少し切ったとしても、今年は地方の国立大医学部には十分いけるという、まさに前代未聞の事態です。だから、ラインの引き直しが必要だというわけです。
ということは、その上位合格者、すなわち定員の半分くらいは80%越えのはずですから、
国立大医学部総定員 3597名-1106名(2.の定員) これを1/2にして 1246名

よって、1.+2.+3.=5577+1106+1246=7929名  約8000名

もちろん、東大・京大・医学部志望でない高得点者もある程度はいるでしょう(とは言え、それだけ得点できてそこを目指さない受験生は稀)から、その分を多めに見込んで

今回の共通テストの80%越えは全国で9,000人程度

と試算されます。
理系全受験生は約39万人(理科科目物・化・生・地の受験者数を足せばよい)なので、これは理系受験生全体の2.3%程になります。統計学の正規分布で言えば、標準偏差の2倍以内に入らない少数派です。

今回は、国立大医学部のボーダーが76%付近となりましたので、ここまで範囲を拡大するならば5%程にはなるでしょう。

改めて、「医学部を志望する」ということは
「医師になりたい」という希望を抱くこと、そこに情熱とやる気を集中することは誰でも可能ですが、それを口にする以上、学力的には「全国レベルで上位5%に入る」ということが必須であるということを正面から認識することです。そこを目指し、その壁をよじ登り、乗り越えるということです。
そこに到達するためには、ハイレベルな質の学びの場、とそれに耐える能力と、誰にも引けを取らない勉強量が必要だということです。

では、次回は、そういう域にある生徒達の声をお届けすることにしましょう。

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[31]2022共通テスト・解析<3> 物理

2022年1月22日 by ghs-yobikou

フラット&ハーフ

物理の平均点は、60.7点で、昨年度62.3点と同じ位、違いは誤差範囲でした。
得点分布グラフを見ても、ほぼ形は同じです。化学や生物のように、低得点層に山がシフトした形ではなく、60点ぐらいで三年間安定した作りであるように見えます。

配点の刻みが大きいのでギサギザしてしまうので分かりにくくなっていますが、物理選択者の特性もあって、高得点層が厚くなっています。滑らかにトレースしてみましょう(青線)。

分布として本来あるべき形は、・・・・・・線のように高得点になるほどに減っていくものです。こうすると高得点層がかなり膨らんでいることが明らかです。

満点が2000人以上いるようです。92点以上だと6000人以上でしょう。物理選択者は15万人ほどですから、5%近く。80点以上は10%を軽く超えるでしょう。

これは物理という科目の特性であり、物理選択者の特性でもあります。物理がある水準以上にできるようになった者にとっては、センター試験・共通テストレベルだと、満点近く取れてしまうのです。

今年の物理の問題について、全体を端的に表現すると、’ flat & half ‘ です。

「フラット」というのは、全問題に難易度の差がないに等しく、これはイージー!,  これは結構ムズい!!という問題の起伏がなく、皆んなほぼ横並びだということです。私も順番に解いていって、「さて、どこに勝負問題が来るかな」待ち構えていましたが、何も起こらず終わってしまいました。サスペンスドラマではなく、大した事件が起こらないホームドラマのごときです。

だから、設問の難易度分析は必要ありません。皆んなグレードBです。分かっている人には時々Cレベルが混ざっているように見える、というところです。

化学の問題解析では、難易度のグレード分類をしておきました。まさに山あり谷ありで、解くのはスリリングです。どの大問にもそういう「勝負問題」が入っていて、「来た来た!」と気合が入り、結構楽しませてくれます。「あのタイプの難問をこう薄めて来たか!!」とか、「ついにここまで出しちゃったか!!」とか。

ハーフ?

要するに、物理の問題として中途半端、竜頭蛇尾、ということです。これは、昨年の共通テストから顕著になった傾向です。ふつうの物理入試問題を解く場合、与えられた物理現象をイメージしながら ①物理法則を適用して、②未知数を含んだ式を複数立てて、③数学的に解いて答えを出す ものです。

ところが、計算らしいことをするのは第4問の一部にすぎず、それ以外は、式を立てるどころか、①のイメージの部分だけて答えが出たり、法則や式を選べば済むようになっていいます。日頃からしっかりと物理の問題を解いている人からすると、良く言えば
「イメージするだけで解ける省エネ問題ばかり」てあり、悪く言えば、
「不完全燃焼!! もっとちゃんと計算までやらせてよ、せっかく勉強してきたのに!」
となります。
まさに、中途半端なのです。運動会で、駆けっこも騎馬戦もなく、準備体操とダンスだけで終わっちゃうような、肩透かしというか、握った拳を持て余すというかごときです。

これが文系専用の「物理基礎」ならこれで良いし、文系としては、それで十分エラい!!と言えるのでしょが、「脱ゆとり」アフターの難化の流れにあって、なんだか物理だけ一人取り残されている感が拭えません。だって、数学ではあんなにたくさんの計算を強いられるのに対して、この物理のお手軽さとはギャップがありすぎです。教科ごと、科目ごとの縦割りで問題を作成しており、全体を統括(全ての科目に明るい、オーケストラの指揮者のような)できる人材はいないのだ、というお家事情が見えてきます。各教科で、命名が「新しいコンセプトのテスト」を思い描いで、作った結果がこのようにバラバラです。

ベリー・グッド!!

こんな事情で、化学でやったような解析をする気になりませんし、必要もありません。ただ、作成者を褒めてあげたい設問があります。

物理学における<頂点の法則>である、《運動の法則》の成立過程からの根本的・基礎的理解を問うものです。医・自然系の小論文問題のようなネタです。決して難しくはありませんが、法則式や公式を覚えて当てはめる、というだけの薄っぺらなやり方では面喰らうことでしょう。根本法則の理解の深さを問うているという意味で、教育的良問です。

もし、誤った仮説に基づいて法則をグラフ化したらどうなるか?という「架空の法則」を問うという発想には、問題作成者のセンスと見識を感じます。

こういうのは、共通テストだからこそ出せると言えます。私立医学部のような振い落としのための試験ではボツになるかもしれません。

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[30] 2022共通テスト 得点分布グラフを見る視点<2>理科

2022年1月20日 by ghs-yobikou

理科科目の得点分布から見えてくること
化学に続いて、物理の問題解析に移りたいところですが、得点分布グラフが公開されましたので、理科各科目(地学除く)についての分布解析を先に済ませることにしましょう。

生物科目は、直接指導はしていないので問題解析は行いませんが、グラフは示唆に富んでいるので、最初に取り上げます、

点線—-が平均点、実線がピークです。この2つが離れているほどグラフがどちらかに歪んでいることを示します。

「生物を勉強してなくても、問題文を読めば答えが出る」と言われた驚くほど簡単だった昨年度2021の生物は、入試問題づくりとしては失敗です。こんな分布になるようでは、受験のプロからみるとまるで素人の作りです。初年度は足並みが揃わない、という「恒例のバグ」です。あまりに易しいので、昨年は「ジリ貧の生物選択者を増やしたい」という政策意図か?との仮説を出しておきましたが、どうやら違うようです。実際、おおよそ生物:物理=1:3で、生物の割合が減りつづけています。

ところがどっこい!!  まさに掌を返したように、今年は大きく「難化」し、平均点が-15点と大きく低下しました。ただ、グラフの形を見てみると中々いい具合で、平均点を軸として対称的な分布になっており(左側が少しカットされているので補いましょう)、うまい具合に広く差がつく問題となり、高得点層が総合点分布と同様に著減しています。

公的な「共通テスト」だから、「難しいのはけしからん」だのなんだのと物議を醸すのですが、もし、3000人受験するうちの1割、300人を選抜したい、という入試であればこれで適切なわけです。
 実際、私立医学部の一次試験は、そうなっています。70%くらいの得点でそれくらいの人数になれば理想です。問題を易しくすると、狭い範囲の得点に高得点者が集中して、本当の実力を見極めるのが困難になるものです。2021はまだまだ高得点層が厚く、分布はやや右シフトしていてイビツです。50点くらいが平均点で、60点取ればよし、70点で合格、80点なら優秀!! これはテストとしては良い出来です。

「ジリ貧の生物選択者を増やしたい」という政策意図か?の真偽

この三年分の3パターンの得点分布グラフから読み取れることは、
「出題側に平均点や分布をコントロールしようとする力量や意図はどちらもないのではないか」
ということです。
こんなに分布がブレる問題を大手予備校が模試でやると、担当者は降格・交替させられかねません。受験者から「あそこのの模試は必要以上に難しい」との悪評が広がると、受験者が減り予備校の利益を損ね、経営に影響するからです。いつもいい具合に分布するようにできるだけのと力と工夫を重ね、それ相当の人員を割くものです。それが経営感覚・危機意識というものです。

しかし、受験者が減る心配がない公的試験ですから、このブレを見ると、要するに、危機意識の薄い、お役所的仕事の匂いがしてきませんか?
実際、理科や社会の科目間格差は何十年前からの課題のはずですが、一向に解消できないし(得点調整でお茶を濁し根本的解決から逃げています)、今回みたいに制度が変わる節目に当たると決まって難易度が上下にブレるのも、何ら過去を学習していない、ということを示しています。
その意味で、センター試験は30年以上の経験と問題づくりのノウハウを蓄積し、データ的にはかなり安定していましたので、それを惜しむ声、昔に帰れという声があるのもやむなしです。

受験生の現実、教育の現場を知らない「試験委員」が「有識者」から選抜されて問題を作ることになります。完全秘密裏に選抜された大学関係者(余談ですが、実は、医師国家試験は試験委員の教授がバレバレで、その教授の専門や論文を踏まえて出題を予想することもあったりします)は大変なプレッシャーで問題を作るのでしょうから、その苦労は偲ばれますが、任期が単年か複数年か知りませんが、如何せん、本来の仕事ではないですし慣れていません。さらに、事前にモニターとしてその時間内に問題が解けるか等を、学生に試験問題を解かせることができないので、結局、蓋を開けてみての結果論となります。任期が終わればお役御免です。

「前年、易しすぎた」という反省があるとその反動で気合が入り、またはその逆です。
本来は全体を統括できる(つまり全科目の難易度がわかり調整できる)人材が必要なのですが、多分そうなっておらず、そういう人はおらず、やっていることは科目・教科縦割りなのでしょう。各科目のリーダーはいるはずですが、要するに、その人の教育者としての力量と現場把握力や調整能力が、問題づくりの良し悪しに反映されるのです。もちろん、こんなことはどの入試でも多かれ少なかれあることですが、公的試験では、責任の所在と危機意識が曖昧なのです。

「問題が起こったら調整すれば良い」、「新しい試みなのだから、多少のブレは仕方ない」等々言い訳して、誰も責任を取らないから繰り返されるブレと混乱。・・・もっとも予備校関係者なら、長年問題作成やっていることですから、いい感じで問題を作れるのでしょうが、そういう人材を試験委員に選抜するのは、それはそれで公平性の立場からは問題となるので採用されません。だから、こういうことが性懲りも無く繰り返されるわけです。

ちなみに、大学入試センターは試験後に、「高等学校教育関係者から成る外部評価分科会」や、全国的な教育団体(生物は、日本生物教育会)から意見を集め、「問題作成部会」の各問題作成分科会の分科会長・副分科会長から成る自己点検・分析・評価分 科会委員が,各科目の問題作成について自己点検するとともに,上記の意見・評価について検討 し見解を取りまとめたものを公開しています。

「こんな色々なご批判、ご意見がありました。失敗については再発防止に努め、この反省を生かして、より良い問題づくりにとり組んで参ります。」これを繰り返しています。

これが「責任を取らない」ということの顕れです。

まあ、さすがに問題作成までは不可であっても、事後の「ご意見・ご批判」は、忖度をせざるを得ない高校の先生に止まらずに、歯に絹着せぬ、忖度のカケラもない予備校講師達に求めるくらいの度量がないものか、と思います。《続く》

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[29] 2022共通テスト 得点分布グラフを見る視点<1>理系総合

2022年1月20日 by ghs-yobikou

大手予備校関係から、得点分布グラフが公開されました。「平均点」の上下ではわからない情報を読み取ることができます。[27]で述べたことですが、まあ予想通りというか、否、それ以上に効果的な「上位層削り」が遂行され、正規分布に近いものになってきています。

理系総合点の得点分布グラフ: 解析
昨年度の分析でも得点率80%越えの上位層が削られている点を指摘しましたが、今年はそれに輪を掛けた形にシフトしています。


あくまでも、図の上での概算なので、正確な統計分布表で若干補正するは必要はありますが、

  • 平均点付近で折り返した形で、昨年度と今年度で、上位層(オレンジ)と下位層(赤)が対称的に入れ替わっていることが見て取れます。
  • 昨年度は一昨年度と得点率80%ラインを境に上位層(青)が下(緑)にシフトしたにのに比較すると、大幅に削られ半分以下になったことがわかります。(1/22追記: データネットによると前年比38%、つまり6割減。)
  • 得点率90%以上は著減し、ほんの一握り。全体の1%(2000人)にも満たないでしょう。

しかし、この分布は異常ではなく、両端ほど著減するのが、統計分布としてのあるべき姿であり、むしろ、これまで高得点者層が歪(イビツ)に膨らんでいたのが異常だったのです。上位層が「削られた」と表現しましたが、この観点からは「補正・修正」とも言えるでしょう。科目別で見ると(偏差が薄まらないので)更にわかりやくすなります。

医学部の合格水準
昨年度の試算と同様ですが、
国公立大・医学部の定員は約5500名。
医学部以外で東大・京大等を第一志望とする人もいます。
理1が1108人、理2が532人で合計1640人、
京大理系が合計約2150名、合わせると3800人程。
旧帝大の東北大・阪大などの理系でも高得点者はいます。
それらを正確に把握するのは困難ですが、医学部志望者が得点が勝る場合を考慮して、
合計4000人程度がこの層にいると考えますと、概算では、
4000+5500=9500人
理系受験生は化学選択者を参考にすると18万人程度ですから、その5%ほどです。とりあえずこの中に入ることが、国立医学部合格の必要条件といえるでしょう。

ある難関国立大医学部のデータリサーチを観ると、判定基準が25点ほど下がっています。平均点が50点下がっても、その半分しか下がらないのはさすがというべきですが、かつては85%であった目標(ボーダー)が、昨年82.5%に、そして今年は80%程度に下がったことになります。すると80%越えも2万人程度、全体の1割にも満たないでしょう。(注: 正確なデータが出たら数値は補正します)

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[28]2022共通テスト・解析<2> 化学

2022年1月18日 by ghs-yobikou

数学・国語の「難化」の影で

ニュース記事というものは、インパクトを求めるので目立つところばかりが取り上げられ、結果的に横並びの記事ばかりになりがちです。記事は、字数やニュースソースが限られていたりするので、仕方ありません。でもここでは、字数やページを気にする事なく、GHSの日々の指導レベルから、存分に展開したいと思います。

こういう時、「例年並み」とか、「昨年と同等」という科目は、報道としてはあまり価値がないので目立たないものです。ニュースというものは、50万人近くのほぼ全員が受ける英国、7割が受ける数がメインとならざるを得ません。選択科目の理科や社会については、なんかの「異常事態」がないと、まずは報道されません。最も選択者が多い化学でも、全受験生の1/3ほどですから。

そこで、まずは私が主に担当している理科科目の化学・物理から述べていきたいと思います。

1. 化学

  • ・ほとんどの理系が選択する科目です。GHSでの<体系化学アドバンス>の指導レベルから言うと、特に易しくも難しくもなっておらず、昨年並み、難易度は同程度に見えるのですが、世間一般では、平均点は「難化した」とされる昨年より10点下がり、50点を少し下回るようです。センター試験時代の、平均点60点以上というのは今は昔。それゆえ、平均的受験者層からすると「さらに難化した」と言えるのでしょうが、この感覚のズレはどこから来るのでしょうか。これが今回の焦点です。
  • 設問としては30問あります。1問あたり3-4点が配点されます。「9割以上とる」を目標にした場合は、失点は3問まで、8割目標なら5-6問に留めなければいけません。
  • 「平均点云々」では測れない、解答にあたっての各設問の「難易度の質」が変性していることに気づく必要があります。

この点を明確にするため、問題解析にあたって、まずは例によって、問題をグレード分けしておきしょう。

  • <C>: ・教科書をまじめに学び、学校の傍用問題集の基本問題をきちんとやれば答えられる。・使う知識は単発、つまりハードルは1つ。要するに受験生なら誰もができる、できるべきだという想定の問題。・平均点を調節するための「下駄履かせ」問題として、「ゆとりの時代」までは4割もの配点となることもあった。
  • <B>: ・大学入試としての標準問題。学校の傍用問題集なら「発展問題」レベル。二次試験入試レベルの問題演習していれば、半分以上は解けるような問題。ポイントは2つあり、両者の基礎がしっかりしていることが必要。複数のハードルをクリアしないと解けない問題。これらは実力により適度に差がつく良問となります。配点が最も大きくなるグレードです。このレベルの計算問題は、『体系化学』テキストを核にして修練すればすべて同じように手早く解くことができます。時間の確保と得点率7割越えにはここを各自にミスなく取ることが必須です。
  • <A>: ・私立医学部や国立大二次試験に出るような、教科書を超えた内容で、差をつけるためのテーマ・素材(といっても難関入試には必出である)を共通テスト用に薄めて、答えやすくした問題。・通常の高校の授業レベルでは全く太刀打ちできない。こういうテーマは、既存の参考書でも十分のページが割かれていない。
    • →GHSでは『体系化学アドバンス』(以下、化学AD)というオリジナルテキストで、開講時から分厚く指導しています。

→さらに、ここを化学ADの授業の観点からA1とA2に分けます。

  • A1 : 難関私立医学部、国立二次試験に出てもおかしくないような、いわゆる「難問」。みたことのない反応、初見の知識をその場で読み解いて答える。そのレベルの指導を受けていないと解けない問題。学校の授業だけでは、全く歯が立たない。→このレベルは昨年と同様、さすがに出題はありません。
  • A2 :  A1のレベルの問題を共通テスト的に「薄めた」もの。 日頃からA1レベルの問題演習をしていてはじめて、ふつうに解ける。これは、センター過去問演習や高校の通常授業では手が届かない。つまり、ある程度知らないと、問題の意味さえわからないこともあり、読解に時間がかかる。逆に、このように上から見ると「薄めてある」とわかるので、そのように見下ろすことができると楽にできる。上位層が8-9割を得点する理由はここにあると言える。

以上の観点から仕分けしたのが、以下です。

結果は、A:33点,  B:43点,  C24点 計100点です。この配点から考えるべきことは以下です。
  1. グレードCが1/4にあたる24点分しかありません。 つまり、教科書レベル+センター試験過去問程度の、普通の高校の授業程度の勉強では、Bが半分できたとしても50点にも届かないということです。 かつて、ゆとりの時代は、このCが40点近くあり、Bの半分と合わせれば、平均的受験生でも60点前後は取れるようになっており、少し易しい 年には、平均点が70点にもなる、ということもあったくらいです。この易問群が多かった頃は、上位層なら、試験時間60分に対して40分もあれば解けてしまい、ゆっくりと見直して満点を狙ったものです。この部分の縮小傾向が2016年(ゆとり時代の終焉)から始まり、ここに至ります。
  2. グレードAが33点あります。これは昨年から増加しています。センター試験の頃に比べて明らかに増えています。Cが減った分、こちらが増えていると言えるでしょう。つまり、上で述べたように、二次試験の「難問」を演習するような本格的な勉強をしていないとまず正解できないので、Bが全部できたとしても67点満点となってしまいます。つまり70点を超えること自体に高いハードルが設定されていることがわかります。「共通テスト対策」と称して共通テスト的問題の、そのレベルの問題練習やセンター試験過去問の解き直しなどは、ここに対しては無意味ということです。
  3. 8〜9割の得点を取るための共通テスト対策とは、グレードAをどうするか、ということに尽きるのです。グレードAの問題の「難問からの薄まり具合」がわかるような「大は小を兼ねる」学びをやっておくことが必須です。
  4. 過去3年の分析ょ並べてみましょう(ブログ[19]参照)。  
    • 2020  32個の設問   A 32点 : B 13点 : C 55点
    • 2021  29個の設問   A 18点 : B 44点 : C 38点
    • 2022  30個の設問   A 33点 : B 43点 : C 24点
   こうやって比較すると、Cの比率が年々縮小して、A+Bが拡大したことがわかります。とにかく、イージーなCレベルの設問が減ったので、平均的な学力の受験生は、その分得点が大きく下がるわけです。今後もこの程度であろうと予想します。したがって、Cレベルの過去問ばかりを見て、これならできる・・・なんてナメていると酷い目に遭うゾ、という警告を発しておきたいと思います。実際、そんな問題の割合はすでに1/4しかないのですから。

「難問」を薄めるとは?

グレードA2の問題を具体的に挙げて、「難問」を薄めたように見えるとはどういうものか、簡単にお話ししましょう。

問題例1 第5問 問2

大問は5つあり、この第5問は有機化学の問題枠ですが、この設問は、素材は有機化学ながら、やることは、純粋な熱化学の問題になっています。有機化学ではない!! とすぐに見切って、熱化学に頭を切り替える必要があります。つまり、この設問に限っては有機化学の知識は必要はなく、かつ、問2を構成する前後の設問a,cと連動しない独立問題となってます。

前の設問のaは、「アルケンのオゾン酸化」という教科書には出てこない、かつ、難関入試の定番(「有機アドバンス」の授業では常連です)ですので、aで「ダメだ、こんなの知らない!!」と思った人にとっては、bまで解けない気がしてきます。本当は、aと関係なく解けるのですが、ふつうの受験生は、そこまでは頭が回らないものです。ここの見切りが第一のハードルです。

この設問bは、<化学AD>の熱化学の問題として見ると以下のようになります。まず、与えられた熱化学方程式は合わせて6個です。教科書レベルの解法では、式を足したり引いたりして目的の式を作るのですが、このような解法では4つくらいが限界で、6つもある熱化学方程式を書き出し、足し引きの操作をして、目的の式を作るのにあれこれ試行錯誤をやっていると、できたにしても時間を浪費します。これまでのセンター試験の過去問は、式が3-4個程度でしたからそれでも何とかできたのですが明らかに「難化」しました。こういう事態であっても通用する解法を習得しているかが、第二のハードルです。

実際、<化学AD>の授業では、熱化学の「難問」として10-11個もの熱化学方程式が与えられる問題を集めて、旧来の解法に頼ら図、スバリと解ける統一的方法を伝授していますから、式の6個くらいならむしろ余裕であり、スイスイと解けます。具体的には、『体系化学』テキストを参照していただくしかないですが、解法の要点を述べると、「物質エネルギーの基準(0KJ)を単体として、(2)式をエネルギー値で表せば、一行で鮮やかに解けて、終わり!! です。

これが「難問を薄めた形」ということです。

問題例2

 一見易しそうに見える知識問題です。選択肢も4つしかないので、何とか消去法とカンで行けそうな気がしますが、確信を持って即答できるでしょうか? 易しい順に見てみましょう。

  • ④は、中学理科レベルです。要するに凝固熱(融解熱)ですから、吸熱反応しかありません。
  • ①は、炭化水素が燃焼してCO2とH2Oになる反応ですから、発熱に決まっています。まあ常識です。
  • ②は、高校化学の教科書にある、「中和熱」のことです。これはH++OH–→H2Oという反応によるものなので、酸や塩基の種類によらず一定値であることは、標準的な計算問題を通して知っているべきことです。
  • よって、正解は③です。まあ、ふつうは上の消去法で答えが出ればよいのでしょうが、<化学AD>の視点から下ろすと、これは「溶解熱」のことを言っており、溶解熱=結晶の解離エネルギー(吸熱)+水和熱(発熱)なので正負どちらもある、ということまでを学んでいれば「瞬殺」です。実際、化学ADの熱化学演習においては、それを具体的に計算する問題をいくつもやった経験があるわけです。「あの問題でやったことだな」と想起できて、確信を持って選択できます。要するに、選択肢の背後に、ここまで積み上げた経験がどれだけ見えるのか、ということが「正解への確信」なのです。
  • ちなみに、これまでのセンター試験の問題づくりは、③のような「難し目」の選択肢はあってもそれは頭数で、正解ではなく、それ以外の基本的なものがわかれば、③は知らなくても正解できるという形式でした。ところが、本問は、易しい選択肢が頭数にすぎず、最も難しい選択肢を理解して、選択するという形式となっています。これだけでも難易度が上がっていることが明らかです。

問題例3 第1問 問5

  • 言わずとしれた気体溶解の「ヘンリーの法則」です。「ヘンリーって?」とかいう人も少なくないでしょうが、そういう人はすでにに蚊帳の外です。昔から、ヘンリーの法則を用いる計算問題は「難問」とされていて、私の受験時代は、東大や東京医歯大や早慶が難問を競ったものです。それから、私立医学部や国公立大での出題もふつうになって、ついに、共通テストでもふつうに出るようになった=ふつうの入試レベルになった、ということを示しています。
  • 「ヘンリーの法則」は、90年代までのセンター試験には出ていましたが、ゆとりの時代は、「難しい」ゆえに真っ先に目をつけられ、教科書そのものから駆逐され、10年経って「発展事項」として復活しました。2016年以降のゆとり世代の終焉以降は、センター試験でも復活し、今回の問題は、ヘンリーの法則としては標準的な計算問題です。ただ、ヘンリーの法則そのものが「難問」であるので、受験生にとっては「ヘンリー」というだけでA2レベルと言えます。
  • これも『体系化学』テキストで説いてあることですが、教科書的には、ヘンリーの法則は「公式化」されていないため、計算式を作ること自体が難しいのです。したがって、高校の授業では軽く触れる程度で、なるべく避けて通るものです。もちろん、『体系化学』では、化学基礎公式❽としてmolにリンクするようになってますので、GHS生にとっては 「おいしい問題」であり、差をつけられるチャンス、超Welcome!!です。

さすがに長くなったのでサンプルはこの程度にしておきましょう。結論はシンプル。

共通テスト・化学の対策は、二次試験レベルの問題演習をしっかりとやること。つまり、「共通テスト対策をしないこと」という逆説になります。いいことじゃないですか。やるべきことが一本化するのですから。

・・・ブログでは、全ての問題についての具体的コメントは伝えきれません。それで数十ページのテキストになってしまいます。具体的な解き方と知識は、体系化学な授業を通して、その中に位置付けて説くことになります。ましてや、ニュース記事や字数制限のある大手予備校のコメントなどで具体的なリアルな情報を得ることはできないのだ、ということが伝わればよいかと思います。

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[27] 2022 共通テスト 解析<1>総説

2022年1月18日 by ghs-yobikou

「難化」とか「平均点」とか、どうでもよいこと
毎年のように言っていることですが(GHS本部HPブログも参照してください)、
「平均点が昨年より低下の予想」「〇〇科目が難しかった」等々・・・なんていうのは、難関突破を目指す受験生にとって、そしてGHSの受験生にとっては、何の価値も、いかほどの意味もないものです。平均的な受験生への取材は、所詮、平均的なものにすぎません。つまり、参考にすべきではないのです。競争する相手は、全受験生の一割に満たない「上位層」だからです。(化学の選択者は18万4千人 これがほぼ理系の総数です。その1割は1万数千人です。以下は、そこにフォーカスを当てての話です。

 1980年代からの共通一次からセンター試験、そして共通テストへと・・、相変わらず文科省的行政+マスコミは平均点と科目間格差ばかりを気にして、ニュースを流しています。
 確かに建前としては、全受験生を相手にするべきなので、そうなるのでしょうが、難関突破を目指す受験生の立ち位置からは、何の参考にもなりません。平均レベルの学力の受験生というものは、難化すれば得点が大きく下がり、平均点を下げるように足を引っ張るからです。だから、色々な統計の中で「上位層の得点分布がどうなったか」だけを注視すべきです。

 私は医学部を再受験した関係で、普通の受験生よりは、共通一次、センター試験を多目に受けてきました。が、平均点や難易度等には関心は一切なかったものです。関心事は、1つ。得点率80%を超える受験生がどれだけいるか。その中でのピークはどこか、自分はどこに位置するのか。これだけです。そして、対策とは、「85-90%を得点するにはどうすればよいか」に尽きていました。

 難関を突破するには、それ以外の焦点は無いので、70%の得点率にも届かない層がどうであろうと関係ないのです。問題が難化すれば、そういう層の点数がぐっと下がるので、平均点はその分余計に下方にシフトします。しかし、得点率80%以上取れる学力がある上位層では、たとえ難化しても、得点は下がり具合は小さいものです。だって、日頃からそれ以上のレベルの問題を解いているのですから当然です。実際、ある国立大医学部の判定基準は、昨年より25点ほど下がっています。平均点が50点下がったと騒いでいるのと比べれば、半分です。つまり、他方に70-80点以上、大幅に下がった層がいるからそうなるのだ、ということが分かります。

 そもそも、東大(に合格しそうな)受験生なら、かつてのセンター試験までなら90%前後は取れたものです。「9割をどれだけ越えるか」が勝負どころでした。だから、得点8割以上で勝負する、上位層のピークは85%位にありました。かつて、私が京大・経済学部を受けた時の自分の得点率は84.2%でした。やや難化した年でしたので、それでも学部内ピークの少し上でした。現役の時、80%に届かなかった悔しさをバネに、なんとか、目標に届いて安堵しました。


 東大・京大等の難関大の二次試験問題の難しさから見れば、「共通テストの難化」なんて、誤差範囲でしかありません。それしきのハードルを越えられないようで、どうして二次試験で合格点が取れるものでしょうか・・・そう思っているのが難関突破を目指す受験生というものです。(でも、まあ、さすがに、こういう受験生の声は、記事としては出せないですよね。)

共通テストは、このピークを下げた
 昨年度から改まった共通テストは、どうやら、この得点80%以上の層を削り、高得点者のカタマリを解体し、分岐させることが目的の1つのようです。昨年度の共通テスト解析では、「上位層は減ったけど平均点は変わらず」という謎をグラフの分析を通して説いておきました。昨年度の共通テストでは、得点率90%以上の層がごそっと減ったのです。だから、全体の平均点は変わらなかったけど、上位層のピークは82-83%に低下したのです。それをさらに削ったのが今年の共通テストです。

でも、これは入試としては、実に「まとも」なことだと思います。

なぜ、「まとも」かと言いますと、難関突破を目指す受験生たるもの、「高々、センター試験でしょ、80%は当たり前、難関突破には90%は取れないと・・・」というのが「常識・普通・義務・使命」です。そんな強い気持ちでないとやっていけません。ところで、難関私立医学部に合格するための得点率はご存知ですか? だいたい70%前後です。それくらいで上手く差がつき、上から下まで固まらないように、上手く分布するように作るものです。資格試験や認定試験ではなく、競争試験ですから、差がつかないと試験の意味がないからです。

これまでの共通一次・センター試験の得点分布は正規分布のようにキレイではなく、平均点層に加えて、上位層も膨らんでいて、実に歪(いびつ)な形でした。上位層にとって、できて当たり前という試験は、(国が行う試験だから仕方がないとは言え)入試としては「異端」であったと思います。差がつかないから意味がない、ただの二次試験を受けるための「資格試験」でした。

だから(?)かどうかはわかりませんが、東大は、共通一次が始まってから、一貫して一次と二次の比率を1:4にして、一次の比重を日本一最低にしてきました。私の時代は1000点満点でしたが、これが110点に圧縮、約1/8です。850点と900点の50点もの差がたったの6点に縮まります。こんなの、数学なら半問分でひっくり返ります。

そんな東大生受験生が、50%以上の得点を取るのに苦労するのが、東大の二次試験なのです。

 このような観点からは、これまでのセンター試験は易しすぎたと言えるのであり、入学試験として「異常」でした。上位層では差がつきにくく、ほとんど横並びのダンゴ状態。上位層は、全員ほぼ同着ゴールみたいな感じですから、合否判定には大して役に立たないのです。二次試験のための資格試験の様相でした。それがようやくにして、難関私立医学部が入試の判定に採用しても遜色ないレベルになってきた、と捉えればよいのです。
 これまでのセンター試験に対する思考基準、ボーダーの感覚、それらを全てリセットして、広く難関入試のレベルを客観的に見ると、これが当たり前に見えて来るはずです。ニュースを流す側にはその自覚がなく、毎年似たような一喜一憂レベルの参考にならないニュースしか表に出ていないのが現状です。

「難化」とは相対的なものにすぎない
 先ほど挙げた、東大の二次試験の難しさも逆に、明らかな異常で、各県の進学校のほぼトップクラスが受験しますが、50-60%も取れれば東大に合格できるのです。それくらいに難しい問題ばかりです。
 すなわち、東大受験では「センター試験で90%取れる受験生が、二次試験では50%を争う」のですから、その壁の高さが知れるでしょう。だから、東大に合格できるレベルに達した受験生にとって、「共通テストの難化」なんて「なんていうことはない」のです。東大や医学部を目指すなら、そうでなくてはならないのです。
 もし、それしきで得点が下がるようなら、既に難関受験の壁に跳ね返されている(=受験資格なし)ということにすぎません。厳しい言い方かもしれませんが、それが現実であり、そうやって自分に謙虚にならないと難関突破は到底できないものです。

要するに、元々、易し目であったセンター試験から見たら「難化」しただけのことで、それを騒ぐ書き立てるのは、記事を書く人の見識がそのレベルか、どこかの受け売りにすぎないということでしょう。易しかった時代の過去問を解いて臨んで、「難しくなった」というのでは、そもそも「甘い」ということです。

 文科省下の大学入試センターでは、共通一次の時代からの信条である「文系・理系関係なく同じ科目を受験する」=共通、という建前から、出題範囲が理数科目は文系に合わせて限定され、しかも、解答を公表して批判にさらされるという恐怖もあって、難易度を易し目に設定してきて、そこそこの点数を取らせる、という形式的伝統があるのですが、脱ゆとり、脱センター試験、理科の文理分割、別立ての基礎学力試験創設(予定)等々で、その呪縛から放たれたのでしょう、共通テストは実に「普通の入試問題」らしくなってきました。
 「普通の入試問題」とは、70%も取れれば合格できるという試験であり、かなり勉強していないと、平均点の50%にとどまるということ。一般入試では普通のことです。難しくなろうがなんだろうが、資格試験ではなく、競争試験なので、相対的にライバルとなる受験生の中でできていれば良いだけです。

 だから、いいまで「90%以上は至難」というセンター試験的ラインを今回は、「85%以上は至難」へと引き直すとよいかと思います。これからは70%の得点率だと優良、「8割越えは優秀であり、大きな壁である共通テスト」になっていくのでしょうし、それでよいと思います。これまでのように、見た途端に瞬殺できるような、教科書そのままみたいな、あるいは「それに毛が生えた」程度の易問、つまり「下駄履かせ問題」が段々と姿を消していくわけであり、それは入試のあり方としては良いことだと思います。

大学入試が易しくてよいはずがない
「共通テストが難化した」というのニュースに対して、「難化する必要ない」「受験生がかわいそう」、「昔のセンター試験レベルでよい」というような共通テストへの批判的コメントの方が多いようですが、GHSではそうは考えません。
だって、「大学という学問の府」に行くのです。医学部なら、人命に関わる学問と技術、必死の研鑽が必要なのですから、易しい関門をくぐってきていいはずがない、と思いませんか?  誰しも、「そんな難関を苦労・努力して突破した賢い人が医師であってほしい」と思いませんか?

GHSのカリキュラムとメソッドは、そういう目線で創られ、それを当然として指導しています。共通テストは、「難関私大・国立二次試験問題を薄めて答えやすくした問題だ」そんな風に見える受験生であれ、と言い続けています。難化すればするほど有利になる、そんな受験生になってほしいのです。

では、次回は、例によって、各科目についての分析を述べたいと思います。

 

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[26] 数研出版 『物理重要問題集』というもの、その位置付けとトリセツ(2)

2021年9月10日 by ghs-yobikou

「今年は物理選択者ばかりだ」という話から、タイトルに掲げた本題に行く前に、「今も昔も受験物理は変わらないな・・・」という思いからついつい長い回想シーンに入ってしまい、先送りとなりました。今回こそ本題です。

チャートの数研
 数研出版といえば、数学のチャート式です。昭和の時代からの老舗ブランドです。私が高校生の時は、参考書といえばチャート式ぐらいしかない、という勢いでした。今のように、迷うほど沢山の選択肢はなく、数学の赤、青、物理、化学、四冊は中身もわからず、評判だけで買いました。・・・いやいや、ここで振り返るとまた回想シーンに入るので、中身はすっ飛ばして・・・とにかく、どれも後々の、そして今の自分には全く繋がっていません。

 学参だけでなく、数研出版は、学校で用いる数学の「傍用問題集」をいくつものグレードで出している、副教材配給会社でもあります。数学の授業で使っていました。簡単な答えしか載ってなくて、ヒィヒィ言いながら予習して行って、当てられたら黒板に書いて、それを教師が解説する・・・それだけの授業でした。今でもそんなものでしょう。できないのは参考書を片っ端から調べたり、'出木杉くん'に聞いたり。

昔と大きく違うことといえば、そこに物理傍用問題集もラインナップされるようになったことです。

実際、長野高校では「リードα物理」という問題集が採用されています。こんなの昔はありませんでした。
それを二年生で副教材として買わされて、三年生になると「物理重要問題集」を購入させられます。
つまり、「リードα物理」は「物理重要問題集」の一段下の問題集です。
どちらも市販物として手に入るのですが、装丁がシンプルになっていてやや安く設定されています。 いつの間にか、「リードα物理」は、第一学習社の「セミナー物理」の牙城に食い込み、覇を競う存在になっているようです。後者は、長野日大高校や、屋代高校などで採用されています(いました?)。
「物理重要問題集」は、数研物理のトップの位置付けですから、現役生では手が出せない(出木杉くんを除いて)ものです。 「物理重要問題集」のフットワーク編集 この「物理重要問題集」は、とても良い問題集です。「化学重要問題集」もありますが、物理の方がハイレベルです。
編集方針は、入試物理全体の出題に全て触れられるようにテーマやパターンを130ほどに細分化し、そのテーマに合った問題を20年以上の射程で歴代の入試問題からセレクトして並べています。もちろん、こんなことはどんな問題集でもやることなのですが、それを毎年更新するというフットワークが特徴です。2割程度の問題が差し替えられるようですが、替えの効かない名作問題、つまり「このテーマはこの問題の作りが最高、完成形態!!」というのは10数年経っても生き残っています。つまり、次第に名作問題が集まってくるわけです。  一方で、いくらでも差し替えのきく、類題もあります。いわゆる頻出問題ですが、すると新しい年度の問題が入ることになり、問題集としての鮮度をアピールすることができます。例えば、2010年版と2021年版を比べてみると、この問題まだ代わりがいないんだな・・・と感慨深いものです。だから毎年売れる、というわけです。  受験生にはそんな感慨に浸る余地などないでしょうが、だから、新年度版だから良いということはなく、極端な話、2010年版を使っても入試物理の本道の学びには、ほとんど問題はないのです。指導要領改訂で、枝葉の問題の出入りがあるだけです。  だからアマゾンで年度落ち在庫崩れをほぼ送料だけで購入してやれは安上がりで良いのですが、やはり、「何だか新年度版でないとダメな気がする」という受験生心理を巧みに攻めてくる憎い商品コンセプトです。  物理法則はすでに前世紀の初めまでに全て発見されていて、物理現象もまた、自然の摂理ですから、数学みたいにありもしないシチュエーションを想定することはできません。自然科学は、現実とのリンクが数学より断然強いので、数少ない物理法則の持つ埒内で、作れる問題の範囲は自ずと決まってくるからです。  要するに、どんなに「見たことない問題」に見えても、物理法則の埒内で、その組み合わせとして解けるようにできていますから、高々10年の出題年の差なんて全く関係なく、新しい年度の問題を追いかける意味は全くないからです。 それよりも、「名作」と言える問題をしっかりと理解し(物理法則の本質を教えてくれる)、解法を次に繋がる形で覚えることだけが必要なので、この「物理重要問題集」はその善き見本市となっているのです。
こういうことが出来るのも、物理という科目が、ニュートン力学以降、偉大なる先人達によって物理学が体系性を持って構築されてきたからです。(「化学重要問題集」が劣って見えるのはそのためです) 「物理重要問題集」をやり切るのは至難  実はこの「物理重要問題集」は、かなり難しい問題集です。物理ができるようになった人は、必ず私が上で述べたような点を理解するようになりますから、「これをやり切れば東大・京大も合格!!」とか言うものです。  それは本当です。だって、東大や京大等のハイレベルかつ名作問題もしっかりと含まれているからです。だから、もし余力があれば、先に述べたように、10年落ちの古本(といっても古在庫なので中身はキレイ)を入手して、そのテリトリーの問題(いわば東大・京大枠)で差し代わったものを見つけてやってみるのは、確かにベストな入試対策です。  毎年出題される、沢山の入試問題を選別し、その中から「宝」を見つけていくという作業は大変ですから、数研セレクトで生き残った名作問題を優先してやれるのは効率が良いことはいうまでもありません。  ただし、これを「やり切れば」の話です。でもそのやり切ること自体が、受験生には困難です。独習では至難です。問題は高々150しかありませんが、どれもが物理法則と公式をしっかりと理解していないと、つまみ食い的にはできますが、やり切るのは至難の業です。  高校三年になって学校で買わされたものの、自学自習に任されていますから、それをやり切れる受験生はほんの一握り、大部分の生徒は、やってはみるものの、150題のツワモノの前に2-3割程度のつまみ食いをして諦めることなります。「高々150問なのに、何でこんなにゴールが見えないんだ・・・」と。でも、150問、全部でワンセットですから、やり切らないと意味がないのです。そのやり切れなかった部分にこそ、合否の分かれ目があるのですから。 かつての私もそうでした。良いということはわかっているし、やり切れる実力があれば東大・京大も合格できることも明白ですが、それが実現が困難、困難の極みで、何度も挑戦するけどある一定以上は進まず、やり切ることができなったのです。
「物理重要問題集」の解答編
 「物理重要問題集」は全部で300ページほど。しかも、解答編は問題編と同じ厚さで150ページもあります。2000年版くらいまでは解答編はもっともっと薄っぺらだったのですが、手元にある2006年版はすでにそうなってきています。
高校教師からすると、「解説が詳しいから、自学自習可能だろう」、「しっかり解説があるから授業では扱わなくて良いだろう」ということで高校ではフォローはありません。  でも、指摘したいのは、この解答・解説のクオリティーです。 いくら詳しくても、理解できない解答、真似のできない解答、遠回りした解答では、読んでもわからないし、次に繋がらないし、進まないものです。問題のレベルが上がるほど、その傾向が顕著になります。  今ここでは細かいことを述べることはしませんが、問題セレクトの秀逸さに対して、(解答編の答えが合っているのは当然ですが)、問題の解き方の解説や解法のレベルについては??と思う点が山積なのです。   ・・・そこで今年GHS長野校では、それに見合う学力の生徒が揃っているので、「体系物理」テキストは独習してもらうことにして(それくらいは学校で真面目にやってきたが、壁に当たっているということです)、「物理重要問題集」の良問群に対して、体系物理的で、筋の通った、かつ、微積分を初めとする数学を駆使した(つまり大学の物理学に通じる)、一刀両断的な解き方を指導し、各自「マイ解答解説集」を作り上げることを指導しています。これは、理系受験生にとっては垂涎モノでしょう。 「問題セレクトは最高レベルなのに、なぜ解答解説編とそんなギャップがあるのか?」
どんなフシギ・不可解にも合理的理由があるものです。 それは数研出版だけの問題ではなく、物理という科目の制度的欠陥にその根元があります。 それについては次回の稿で。

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[25] 数研出版 『物理重要問題集』というもの、その位置付けとトリセツ(1)

2021年9月9日 by ghs-yobikou

なぜか物理選択のみにて

現在GHS長野校に通っているいる受験生(三年生・卒生)が8名いますが、全員が物理・化学選択です。
例年、生物・化学選択者と適当に分かれるものですが、今年はAll & Nothing です。
GHSの体系物理のカリキュラム体系ですが、まずは、HPに公開してあります『体系物理 法則・公式読本(ver.3)』テキストの習得から始まります。
これは、東大・京大・難関医学部レベルの突破レベルを射程に入れた上で、その<基礎>をといたものです。
教科書と範囲は同じですが、決して易しくありません。微積分も普通に出てきます。
それは、「難関突破にはそれが当たり前の基礎だから」です。
そこに繋がらない「基礎」は容赦なく切り捨ててあります。つまり、難関突破に特化した<教科書>です。

想い出ほろほろ

高校の授業をいかに真面目に、頑張ってこなしても、東大や京大の問題が解けるとは到底思えないものです。

私の高校は、山口県立の1-2を争う進学校(昔の話)でした(過去形)が、もちろん、教壇に立つ先生は、地方の国立大の理学部や工学部を出て高校教師の道を選んだパターンですから、そもそもそういうレベルの問題と対決しておりませんし、そこまで教えようと思っていませんし、問題を持って質問に行こうものなら、「そのレベルは自分でやれ」と言われるのが相場です。公立高校だから、青天井(=上限なし)の予備校と違って、そこまでの責任は負わないで良いのです。だから、攻める気持ちはありませんが、物理の「恩師」となれる方は、高校にはいませんでした。

私はとりあえず文系クラスに行きましたが、理由はいろいろあれど、高校で教わった物理も化学も数学も希望が持てなかったというのも一因です。でも物理や化学自体は好きでしたし、ブルーバックスの物理や化学に関する本も自発的に読んでいました。センター試験は物理・化学選択であり、文系としてはしっかりと勉強したつもりです。
結果的は後々理転して医学部を再受験するわけですが、最初の頃、東大の入試問題を見たときに面食らいました。

「なにこれ?」「こんなの教科書のどこにあるの?」「参考書でさえ見たことない」
「こんなの解ける受験生がいるの?」「どこで、どうやって、なにを勉強するとこんなのが解けるの??」
     ?????????????????????????????????????? × ∞
驚きというより、恐怖です。距離がありすぎてビビることさえできない位でした。
だから、東大用の模試を受けても、60点で10点くらいしか取れませんでした。
いやいや、平均点自体が30点もない(東大受験生がですよ)ので、半分の30点も取れば合格点なのです。

そこから上の見えない東大物理という断崖をよじ登ること苦節??年、ようやくにして最後の年、駿台市ヶ谷校の坂間先生(故人)に一年間学ぶ機会を得て、ようやく物理という壁によじ登り、合格点程度は取れるようになったのです。東工大出身で、当時の駿台物理のトップクラスの看板講師の一人です。
その時のノート4-5冊は、ずっと取ってあります。

授業中の走り書きメモを二倍の時間をかけて清書して作った虎の子のノートです。
嬉しかったんですよ、ようやく、本物の物理に出会えた、これこそ求めていた世界だと。
でないと板書に間に合わないくらいの速書きで早口で・・・どこか偏屈で奇人っぽい方でしたが、そんなことは関係ありません。東大受験生にとっては神様でしたから。ついてこれない受験生はそういう点を不満に思っていたようですが、トップクラスのできる受験生ほどに、つまり、自分が本当に知りたいことを教えてくれる人こそが「師」であり「先生」と呼べる人ですから、一心に尊敬を集めていました。

当時、市ヶ谷から20人近く、東大理3の合格しましたが、その皆んなで「恩師」にお礼を・・・という話が出たときに、真っ先に名前が挙がったのが、坂間先生でした。
かくして、入学後しばらくして、理3の数人で授業後の先生を訪ねて、お礼の品を送り(女子が選んだセーターでしたか)、その時初めて直接話をしましたが、やはり「変人」でした。でも、そんなことは関係なし、感謝しかありませんから。

GHSの体系物理への道

現在、GHS長野校で説いている体系物理は、受験生時代の私の物理のレベルからすると遥か上に行っています。
よくあれで、東大に受かったものよ、今ならもっと楽勝で得点が取れるのに・・・と上に述べた「初心の驚きと恐怖」をすっかり忘れてしまいそうです。

最初は、大学5年生から、GHSで化学を教えることからスタートしたのですが、いつの間にか物理も担当することになっていました。その後は基本的には『体系化学』の前書きと同様ですので、公開テキストの最初の方をお読みください。
要するに、問題を解いてみせるだけでは到底合格しそうにない生徒ばかりが集まり、体系的に教えることなしには、鈍才を秀才に伍して闘うレベルに引き上げるのが不可能だったからです。 物理の体系ということは、受験生の時から夢に見てはいました。そういうものがあるのだろうと。なんかおぼろげには見えている気がしていました。しかし、現実にはその姿を捉える論理能力も機会も無かったし、医学部でそれを求めるモチベーションはありませんでした。
 しかし、GHSの教壇がその場所と時間を与えてくれました。そうして徐々にその姿を捕まえられるようになり、漸く入試物理の、法則と公式を体系としてまとめあげたのが、『体系物理 法則・公式 読本(ver.3)』です。 「読本」というのは、授業を受けなくても、授業が再現・再生できるように書いたという意味です。 物理の図版は面倒だし、式の入力も大変なので、多忙な身にとっては、面倒なことは板書で済ませばいい・・・ と先送りにしてきたのですが、本部校に後継者ができて、一旦物理から手が離れることとなったことから、「読本」という形を遺して、後を託すことにしたのです。 ・・・・あらあら、全然本題に入りませんね・・・。長くなったので、稿を改めます。

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[24]共通テスト<6> 物理か生物かという問題

2021年2月2日 by ghs-yobikou

 理系であれば、物理・化学か、生物・化学かの選択となるのが99.99%。(物理・生物選択は超レアながらいます。同級生で一人、GHS生で一人・・・)

 そもそも、昨今の高校では文理選択が二年生になる前にあって、この時に早くも物理か生物の選択を迫られますから、化学とどちらかになるのです。一貫校や私立ではもっと早いこともあるようです。

 昔話ですが、私の出た山口県の県立進学校(まあ長野高校並み…)では、三年生になる時に文系・理系に分かれたので、一年生は地学I・生物I、二年生は化学I、物理Iをやって、三年生で理系は、物理IIなのか、生物IIを決めるという、今から見ればゆったりした時代。文系は、それで理科が一応終了し、共通一次試験に向けて一年間、Iの範囲を復習したのでした。

 時は流れて、制度も、教科内の区切りもコロコロと変わり、今や、高校一年生で、理科は〇〇基礎、これで文系は終わり。理系は二年生から物理ないし生物の選択を迫られることになっています。そこから二年かけてやる全範囲が2016年からのセンター試験、そして共通テストの出題範囲となっています。

物理と生物、どちらがいいですか

 こういう質問をしてくる人は、要するに「どちらを取ったら有利か」「どちらがよりラクに点が取れるか」という意味を含んでいるものです。

 またまた昔話になりますが、私は化学・物理選択です。この件は、『体系物理』テキストのあとがきにも書いたことなのですが、私は迷わず「物理」を選択しました。三年生になる前、当時悩みに悩んで文系志望でしたから、3:1くらいで文系クラスで多くが生物を取る中、少数派でした。その理由は単純。「物理学」という響きに憧れていたからです。物理学こそ、科学の盟主である、という歴史を知っていたからです。要するに、もっと物理を学びたい、という理由です。だからどっちが良いか、なんて他人に相談していません。

・・・それが結局、理系転化、医学部再受験・・・そしてGHSでの体系物理の構築、そして今へと繋がっているのでしょう。

だから、要するに、私の体験談なんて特異なことばかりで、相談者の役には立ちません。こんな青臭い理由で、理科の選択科目を選ぶ、若者は今も昔も多数派であるはずはないからです。

なので、とりあえず「どちらが有利ですか」という質問には、「今年は生物が有利でした」と結果論でしか答えられません。全国平均で、生物73点、物理58点、得点調整しても10点のアドバンテージがあります。さらに、浪人生だけのデータというのがありますが、なんと生物83点、物理は69点にとどまります。

 だからと言って、もはや現高1生は、昨年の内に理科の選択が決まっていることでしょう。今更物理から生物に乗り換えることは不可です。もうクラス編成も決まっているでしょうから。

今年の優勝は紅組!!

「えっ、嵐の解散の餞(はなむけ)で白組優勝じゃないの?!」と思った人もいたかもしれませんが、どうも分からんもんです。まあ、どちらが勝とうとどうでもいいことなんですが・・・。しかし、考えるネタにはなります。

物理と生物も、こんな<紅白状態>です。次のグラフを見てください。

例によって、平均点なんでどうでもいいことです。有利・不利を語るなら、85点以上取れるか、叶うなら100点満点取れるか、この点だけが大事です。

物理は、昨年の85点以上の上位層がごそっと減って、逆に生物では倍増どころではないくらい増えたことが明らかです。ということは、前年は、物理が有利だったのですし、その前の年も物理有利でした。

だから、昨年と比べて難化だの易化だと騒ぐのは、<紅白歌合戦の勝敗>を予想したり、喜んだりしているのと変わらない、つまり意味ないということです。来年は来年の風が吹く。選択行動を決める根拠にはなり得ない、ということです。

今年の物理・生物の平均点を比較して「あぁ、生物を選択していてよかった」と安堵した高1,2生、それは< スイート>なのですよ。

生物は地理・政経、物理は日本史・世界史いや、倫理

 冒頭の昔話に書いたように、センター試験の生物Iは文系がこぞって選択することもあり、点が取りやすい科目でした。だから、文系の物理選択者は、その不利を承知で物理Iをとっていたわけです。だからそんな物理選択者からしてみると生物選択者を「根性なし」呼ばわりしたり(もちろんジョークで)していました。物理選択者が生物選択者より高い平均点となるのは不可能でしたが、ただ、物理はきっちり勉強すると覚えることが少ないだけに、平均点とは関係なく「満点が取れる」という夢とスリルがあったのです。

そしてまた時が流れ・・・2016年から理科は文系と理系に分割されました。するとどうでしょう。

年度BPP/B点
201777,389 155,7392.063.62
2018  74,676 156,7192.168.97
201971,567 157,1962.261.36
202067,614156,568   2.362.89 
202164,623153,140 2.457.56

 理系の生物(Biology)選択者がジリ貧なのがわかるでしょう。物理(Physics)選択者数は2倍強、その差は拡大しつつあります。最右欄はセンター試験生物の平均点です。今年と比較して明らかに低い、というだけでなく、だんだんと難しくなってきていたこと、そして高得点が取りにくくなってきていたのです。

だから、共通テストの生物科目の異変は、この状況に対する<緩和措置>というか<大盤振舞い>なのだとも推測されています。生物で高得点が続出したことは、文科省サイドの「生物離れを食い止めたい」そんな願いが反映されているのではないかと勘ぐられても仕方ありません。

 実は、生物は難しくしようとすればいくらでもできるのです。生物の新たな知見は毎年毎年、いや日々積み重なっています。生物はまだ発展途上の自然科学分野ですから、医学の発展と並んで、知識はどんどん膨れ上がっています。

我々の時代、免疫機構なんてわかってなかったから当然問題にもならず。ところが利根川博士が1987年にノーベル賞を取ったくらいから免疫学が興隆し、入試にもL鎖・H鎖とかが出るようになりました。DNA・RNAにしても然り、私が当時医学部で「最先端」として教わったことが、入試に出ています。それと相まってウィルス学、古生物学等々、追いかけても追いかけても、追いつかないくらいの知識が増えているのです。生物には、常に、未知のデータ、未知の知識に出会う怖さとストレスがあります。

 それは社会でいうと地理に似ています。地理は一度覚えても、毎年データが変わり順位などが入れ替わるし、国名も国境も変わるし、貿易のあり方も政治情勢等で変化しますから、毎年毎年更新しないといけない。それは政治・経済も同様です。

ところが物理の内容は、1900年代初頭で完結しています。物理法則や公式が変わることもありません。未知の法則はあり得ません。地球人が見たことない運動をする物体もありません。その分安心して学べます。ある範囲を学んだら、どんどん深めればいいだけです。これは、すでに確定した事実を学ぶ歴史に似ています。ただ、日本史・世界史は範囲が広すぎますので、むしろ倫理(要するに思想史)に相当するでしょうか。

 残念ながら、物理学は、今後そう大きくは発展しないでしょう。否、仮に新たな発見があったとしても高度すぎて早々に入試に降りてくることはありません。

これに対して、生物学そして医学は、まだまだまともな法則の一つも定まっていませんから、どんどんと知識は拡がりを見せ、知見は集積していくのは間違いありません。だから、将来それを担い発展させる研究者の卵、生物学という学問の担い手が減っていくのは、科学的亡国の警鐘がなっていることに等しい・・・それが国家的視点からの深刻な教育問題なのでしょう。(小さくいうと、高校の生物の授業が成り立たず、生物の先生が困る・・・クラス編成が・・・)

共通テストの難易度をいじって生物離れを食い止める、というのはいかにも愚劣で怪しからん発想ですが、でも影響は少なくないですから、ブレーキの一助になるやもしれません。少なくとも、「生物はキリがなくて難しい」「生物選択ではそこそこ取れるが、物理のような高得点は取りにくい」という<悪評>を払拭するためには、少なくともここ数年の難化路線には歯止めがかかるでしょう。でも、今年ような拍子抜けするほどには易しくできないでしょう。

 ただ、所詮、共通テスト=一次試験ですから、物理は上に述べた経緯は不変であり、いかに難化しようともしっかりやれば「満点が狙える」というドリームもまた健在です。物理ができるやつは、もっと難しい方が楽しく解けるとさえ言えます。これは、科学としての完成度の差異という本質的な問題ですから、問題の難易度で何とかなるようなことではないので、自ずと限界があります。

だから物理・生物の選択は

だから、「どちらが楽ですか、有利ですか」という問いは ‘futile’ なのです。問い自体が無意味であることを悟るべきです。そして、誰かの意見に従う心のあり方も、本当の高みを目指すならNGです。

どちらの道を進んでも楽な道はなく、それ相当に登り詰めるまでは辛く厳しい試練です。だから、自分が少しでも愉しいと思える方、好きだと思える方を選ぶ事です。好きだからこそ耐えていける、続けられるものですから。

だから、他人の意見など聞くべきではありません。自分の責任で決めるのです。人に決めてもらうと、辛い時に逃げ道になりかねません。苦しい時に人のせいにせず、自分の選んだ道だから歩き切る、それが大事です。

さてさて、今年はどちらが勝ちますか。さすがに白組かな・・・。いや・・・。

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[23]共通テスト<5>第二日程ってどうよ

2021年2月2日 by ghs-yobikou

本試・追試と第一日程・第二日程

 これまでのセンター試験では、「追試」は不可避のトラブル等による許可制であり、希望しても受けることはできませんでした。だから、追試者は少数で、問題が新聞にデカデカと載ることもなく、出題内容についてのコメントなどもなかったものです。

 しかし、今回は、コロナ休校による学業の遅れ等への配慮から、生徒の判断で日程を選べるという前代未聞の試験となりました。しかも、今回からセンター試験改め、「共通テスト」の節目です。

 どんな変更があるか、どんな新機軸があるか・・・それを見極めてから第二日程で勝負する=「後出しジャンケン」の方がいいんじゃないか・・・という戦略もありでしょう。だから、私の予想としては半々、少なくとも1/3くらいは第二日程に回るかと思っていたのですが、実際は・・・豈図らんや、

「第2日程を志願したのは718人で、追試に回ったのは1721人。・・・
 共通テストは大学入試センター試験の後継として今年初めて実施。コロナ対策で日程が二通り設けられ、16、17日の第1日程は約48万人が受験した。」 [ https://www.jiji.com の記事より]

なんと、第二日程を志望したのは、雪や病欠で止む無く回った人数を合わせても1%をかなり下回りました。

本試・追試と第一日程・第二日程の難易

昔から、追試の方が難しいというのが常識でした。実際の問題も、少しひねくれたもの、やや応用的なもの、解きにくい感じのものは、追試に回され、優等生的・模範的的問題が本試に出るのが相場でした。というのも、受験生だけでなく、全国の高校・塾・予備校の先生たちの評価に晒されるので、なるべく良いもの、無難なものが本試にでるようになっていました。だから、追試はなるべく受けたくない、得点が上がらない・・・・そういうイメージがあったのです。

ゆえに、共通一次からセンター試験を見てきた大人にアドバイスを求めると、「無難に第一日程がいいんじゃない」となるものです。それに加えて、1月末では私立のの入試真っ只中ですから、こんな極端な偏り具合となったのではないでしょうか。

 ところが私が昨日、そのフタを開けてみたら、まだ具体的には化学と物理を見ただけですが、第二日程の方が、従来のセンター試験と遜色(いや変わり)なく、どこが共通テストかな・・・と。要するに第一日程より、解きやすい、あるいは丁寧な誘導のある問題が多くを占めています。まあ、昨年までと同じです。

受験者層が違うので、後に出る平均点の比較は意味をなしません。あくまでも推測ですが、同じ受験者層であるなら、こちらの方が高得点者層が厚くなったと思われます。あぁこれなら、第二日程を選んだ方が良かった・・・でもそれは、後の祭り、結果論でしかありません。そんなのが予見できたら苦労はしないです。

まあ、要するに、作る側に立ってみると、「新テストらしさ」を打ち出すために、第一日程の方に、より新機軸、より目新しい感じのする問題が集められたのでしょう。だって、もし第二日程と問題が逆だったら、多くのコメントのように、「あまりセンター試験と変わり映えしない」、「何のための共通テストか」「制度変更の意味があるのか」「思考力だの何だの気張ってみたって、所詮ペーパーテスト、そんなに新しいことができるわけない」等々の辛辣なコメントが寄せられたでしょうから。

しかし、来年度はこんな特別措置は(コロナワクチンが予定通りすすめば)なくなるでしょうから、こんな分析も来年の参考にはならないかなと思います。

ただ一つ言えるとしたら、やはり、そんな新規な問題なんて作れませんよ、ということです。だって、第二日程では、もはやネタ切れの兆候が見えますから。 化学も物理も、他の科目も、範囲のある試験です。その範囲をしっかり深く理解すること、そして二次試験レベルの問題を解ける実力をつけることが肝要であり、それを薄めて解くやすくした「共通テスト」の対策など特別に要らないということです。

そうやって上から見下ろすと、実際、難しい問題、手が付かない問題なんて一つもないのですから。

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[22]共通テスト・数学対談-2

2021年1月31日 by ghs-yobikou

GHS数学主任の依田先生との対談の後編です。


高得点を取るという観点から

天野(A):ここまで、全体的な難易度の動向、出題コンセプトの変化について見てきましたが、次に得点分布についてもっと具体的に考えてみたいと思います。

というのも、どこの予備校の分析を見ても、平均点がどうのこうの、科目間格差があれこれ・・・そういう大づかみな話ばかりです。しかし、GHS生が目指す難関・医学部の受験生にとっては、「平均点」なんてどうでもいいことことです。それは、問題を作る側、入試センターの行政的視点であって、受験生にとっては関係ないことです。

この分析シリーズ、最初の[18]に述べたように、「85%以上の得点をとって、上位層の総定員に入ること」という1点にフォーカスすべきです。例によって駿台・ベネッセが提供している得点分布データを見てみましょう。

依田(Y):昨年度(’20)はピークの位置が明らかに低いし、85点以上の高得点者も少なかった。’19と’21は平均点は2点くらいしか下がってないが、上位層は減っているね。昨年は上位層も苦戦したことがわかる。

A: 今年の数1は、’19と’20の間をとった感じですね。数学がデキる層にとって見れば、文章が長かろうが、見かけが日常であろが、数1はやはり数1Aなんで、全く未知の問題なんてないと思って解いてしまうでしょう。

Y:第3問から第5問は選択問題で2問を選択ですが、第5問は図形の性質で、円の位置関係が難しく,選択問題の中では一番難度が高かったと思われます。

第3問は確率,条件付き確率で頻出の内容です.最後の箱を3個から4個に増やしたときの計算は3個の場合のヒントを利用して,各箱での確率を計算すればいいことに気付かないと計算量が多くなってはまってしまいます。

第4問は整数の性質です.「振り返り」で逆回りもあることに気付けば最後まで難なく解けるでしょう。5個の点の最小回数を考えるのも同じことですが,+3とー2の組合せの個数を考えるのがポイントでこれが分からないと大変な計算になります。

A: ショートカット・ポイントに気付くかどうかで得点差がでる。いかにも数学らしい作りですね。ポイントを見逃して、自分で問題を難しくしてしまい遠回りしたり、道に迷ったり・・・。そこを上手く切り抜けるための修練が数学の勉強というものでしょう。公式や計算だけではなく、出題者が散りばめている<隠しヒント>を嗅ぎ分ける嗅覚の養成です。では、数2Bです。

Y: 平均点が20点も上がっていますが、数学2Bとしては以下に解きやすかったかがわかります。満点とった人も相当いることでしょう。

A: 僕らの時代のセンター試験ってこんな感じでした。満点取るのは当たり前、というか、9割以上取れないと恥ずかしいというか、文系・理系共通の二次試験の範囲ですから、それを薄めたような問題はできて当然でしょう、と。二年ほど高得点が取りにくい状況が続きましたが、その反省と反動ですかね。

ただ、理科と違って、皆同じ科目を選択するわけですから、科目間格差、有利不利とか、難易度がどうこうは大した問題ではありません。上位層に入るための境界線が動くというだけですし。

Y: さらにいうと、どんな難しいといっても、やはり、所詮、一次試験ですから、二次試験レベルの実力を鍛えている人からすると、「誤差範囲」でしかないでしょう。必要なのは、こんな感想が出せるくらいに、日頃から二次試験レベルの手強い、厳しい問題に当たって、数学的に登り詰めることです。

第1問〔1〕は三角関数の合成に関する問題ですが,cosで合成することを知らないと(ⅱ)でアウトです。sinで合成してπ/2ずらすこともできますが,勉強してないと対応できません。

〔2〕は双曲線関数の応用で,三角関数と同様にsinhx2-coshx2=1などが成り立ちますが,指数法則から計算ができるかがポイントです。

第2問は微・積分の問題で,面積の計算には面積公式で簡単に対処できます.面積公式で計算するか,積分するかで処理量が大きく変わってきます。グラフの選択はグラフの性質が理解できていれば容易でしょう。y座標の差についても同様のことがいえます。

第4問は数列の問題です.等差数列,等比数列からなる漸化式を条件として,一般項を求める内容で基本事項がマスターできていれば十分に対応できる問題ですが,後半の計算が速く処理できるかがポイントです.

第5問は空間ベクトルの問題です.正12面体上のベクトルの計算をするもので,正5角形の黄金比が内分点のベクトルに関係してきます。この図形の性質が理解できれば難しくはないでしょうが,後半の内積の計算には差がつきそうです.最後の図形の考察は図形が読めれば,図を見るだけで解答できます。

A: もう一回、同じことを言います。問題の見切り、 ショートカット・ポイントに気付くかどうかで得点差がでる。いかにも数学らしい作りですね。ポイントを見逃して、自分で問題を難しくしてしまい遠回りしたり、道に迷ったり・・・。そこを上手く切り抜けるための修練が数学の勉強というものでしょう。公式や計算だけではなく、出題者が散りばめている<隠しヒント>を嗅ぎ分ける嗅覚の養成が必要です。それが数学の問題を解き切る、ということなんですよね。

会話形式について

次の質問ですが、他の科目にもみられますが、会話形式が取り入れられています。たとえば、数学1Aの第1問〔1〕の(3)に会話があります。でも、これなんかは「有理数になる条件を求めよ」という設問にすればいいだけじゃないですか?

Y: うん、数学的にはそれでよくて会話にする意味はないね〜( バッサリ(^ ^)d )

A: 第3問の「条件付き確率」にも対話が入っています。こちらの方は、解き方、考え方の誘導するための設問を会話にしたものですから、方向性・ヒントの与え方としてはこんな会話形式の方が作りやすい面があると感じました。

Y:そこが伝われば、会話形式にする必要はないんだけど、まあ、これもありかなと思います。数学的には、これがあることで思考力とか何とかにプラスするものがあるということはないです。(キッパリ(-.-;)y)

解答時間について

A:変更点の一つとして、試験時間が60分から70分になりましたが、その辺りはいかかですか?

Y:昨年まで永らくセンター試験として60分だったことから大きく変わった点かもしれません、しかし,これによってじっくり考えることができるようになった訳ではなく,問題量もそれなりに増加していてタイムトライアルである面は何も変わっていません。

A: 問題文の文字量が増えて、読む時間が増えた分の配慮というところでしょう。数学的な処理・計算等については変わりないということですね。

では、最後に、何か追加すべきコメントはありますか?

Y:「日常性からの出題」というのは,高校生の学習意欲の低下に対応する処置として,如何に数学が社会に役立っているかを意識させようという意図なのでしょう。しかし、そもそも現代の文明が自然科学の発展に根差していることを考えればその有用性は明らかであって,共通テストでアピールするまでもないでしょう。だから、これは学習意欲をもっている受験生,高度な学問を学ぼうという受験生にとっては、当然のこと。その意味で、その前提で学んでいるGHS生にとっては無用なこと、必要がないことだと言えるでしょう。

A:センター試験や共通テストごときで躓いたり、失点しているようでは、難関・医学部なんていっている場合ではありません。その点は昔も今も変わりません。その時にある二次試験の突破を射程に入れての、それを「薄めたもの」としての共通テスト・・・ただし、これは理数科目に限ることですが・・・・を、通過点として攻略するという姿勢であるべきです。

そして、それとは別立てて、国語、特に古文・漢文や、社会科目が足を引っ張らないように十分な時間をかける、これも今も昔も同じことが言えますね。

本日はどうもありがとうございました。

Y:こちらこそ、色々な話ができて楽しかったです。ありがとうございました。

<了>

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