今年の数学1Aってどうよ?!
続きまして、恒例ですが、GHS長野校・数学担当の依田先生と、共通テストの数学問題について意見交換をしましたので、ここにまとめて記しておきたいと思います。
天野(A): 依田先生、今年は、数学1AとIIBに分けてお聞きします。・・・・というのも、まだ数学1Aしか見れてないので。化学、漢文、物理、古文をの解析を終えて、やっと数学に手がつきましたが、まだ数学1Aだけです。今回、ちょっと時間があったので、全部解いてみました。
依田(Y):おー、それはご苦労様。共通テストくらいはまだまだ余裕でしょ?
A:一年を通して、数学の入試問題を解く機会はほとんどないので、「リハビリ」兼ねて、です(笑) さすがに、時間内に解くスピードはないですし、連続してこれだけの分量を一気に解くのは無理(&イヤ)なので、1問ずつ、計算用紙一枚表・裏くらいで解いています。とりあえず、解き方の方針を読み取って、答えに至る・・・というのはどの問題もできました。まあ、所詮、数学1ですし、なんやかんや言っても一次試験ですし。
実際にやってみて、いろいろとモヤモヤしたものが残りました。だから自分なりの感想はあるのですが・・・。
まずは、全体を通して内容とか難易度についてはどうだったか、先にお伺いします。
Y:問題文の文章の長さ,会話の冗長さなど、2022年度の最悪だったのに比較して、昨年と同様、無駄な部分は軽減されてきていますが,昨年より内容は濃くなっており,「昨年度よりやや難化」というところでしょう。
A:当HPではおなじみの駿台発表の度数分布では、それを裏付ける結果になっています。
(https://dn-sundai.benesse.ne.jpより)
平均点も今年が、51.3点、で昨年が 55.6点と下がっていますが、グラフを見ると明らかなように、60点から上の層が平行移動したかのようにほぼ等しく削られています。そして、平均点±10点のゾーンにごそっと集まっていて、「〇〇の背比べ」の団子レース状態ですから、75点以上も取れれば差をつけることができるというわけですね。
Y:2年前に指摘したことだけど、共通テストは、数学教育の本来のあり方の方向を示唆している、と。ただ問題をいっぱい解いて、記憶と知識だけで勝負できた時代は過ぎ去った、ということ。
原点に返って、数学の実力とは、数学的思考力とは、数学の体系とはを把握して、それを培うための問題演習を指導する、そういうことをGHSではやってきたのだけど、この騒ぎを見ると、世間一般では、そういう面倒臭いことを考えずにやってきた数学教育への反省が続いているわけです。
今年の数学1A 問題 ランキング!!
A:淡々とやるのつまんないので、ランキングっぽくやりましょうか。今年の問題の中で、数学1Aの入試問題として、出来がいいなと言える問題はどれでしょう?
Y:第1位にするなら、第2問[1]の二次関数の問題です。2点P,Qがそれぞれx,y軸を移動するという設定です。Qの位置で2つに場合分けをする必要があるだけで,二つの二次関数が出てくる。問題文も簡略。数学の問題としてスタンダードな形式となっています。
余計な日常性などがなく,数学の力を正しく判定できる問題と言えます。しかも,最後の不等式の設問なども場合分けの範囲に関わるため内容は濃い。グラフを上手く利用するなど数学の総合力が問われる良問です。
A:共通テストには珍しく高評価ですね。まあ、所詮数学1ですから、ここは二次関数になるはずと見切って、場合分けして・・・と、身につけたスキルをフル活用して進みますね。僕も同意見です。この中では、もっとも数学1らしくて、しかも、見かけは初見っぽくて、二つのグラフを繋げて描いて、視覚的に解く・・・これは楽しかったですね。
では、第2問の[2]のデータ分析はいかがですか? 私の受験時代は、ここは範囲外でしたが、データのグラフのお約束さえ知っていれば、なんていうことはなかったです。むしろ、こんなんでいいの? と。
Y:いろいろと長い記述がありますが,長距離の陸上選手のデータで、前半はヒストグラム,箱ひげ図を読み取るもので基本的なレベル。後半の変量zはおよそ偏差値のようなもので小さい方がいい成績となるのは明らか。定義に従って計算するだけで何の難しさもない。散布図を読み取るあたりも取り組みやすい問題でした。
A:難易度を見切って、余計な記述を読むことに時間を取られず、必要な情報だけささっとみて最短で解いて、他の問題に充てる時間を稼ぐという作戦になりますね。では、ランキングで「並」と言えば?
Y: 第1問の[1]の無理数の計算問題と、第4問のn進法の問題は、どちらも標準的なもので、難所も煩雑さもなく、サクサクとこなすだけ。
A:ではランキング最下位は、第1問[2]の三角比と図形の問題でいいですか。私は図形の問題は好きだった(東大は何気に図形志向)ので、面白いとは思いましたが、第1問にしては「重たい」なあと・・・
Y:数値計算に手間がかかったり、選択肢から選んだり・・・なんか煩雑な感じ。
A:そうですね。図形的にはいろいろとアプローチがあるはずですが、答えの形から出題者が想定する解き方を類推して、それに従う・・・という入試数学の本道からすると、余計な思考というか、要領の良さが必要です。まあ、ある程度年齢を重ねると、その意図が見えるようになるのですが(笑)、それでもちょっと迷いましたよ。
受験生にそういう忖度精神を求めるのはいかがかなと。これが最下位にランクした理由です。昔から指摘されることですが、これはマークシート式と数学との相性の悪さが現れたものと言えます。ここで無駄に時間を食ってしまうと、後々に影響するでしょう。私は、初見では忖度できず、前半だけやって後回しにしました。
選択問題はどれがお得?
最後に、第4-6の選択問題の2問選択についてはいかがでしょうか?
Y:第3問は、重複順列の確率の計算。2種類,3種類,4種類のカプセル・トイがあるガチャガチャで2~6回までに全部の種類がそろうときの確率を背景とした問題とみると「日常性」があるんだけどね(笑)。
で,当然に段々と処理が煩雑になってきますが,誘導が丁寧なので、これをしっかり利用して効率的に処理すればいいんだ、ということが見えたら、第4問とこの二つを選択するといいでしょう。
A:そうですか。私は第6問を選択しました。確率より図形の方が好きなので。確率って、計算しても答えがあっているか検算しようがないじゃないですか。図形なら、視覚的に検証も可能ですから、私はこちらを選びますね。
Y:第5問は、図形の性質で、「メネラウスの定理」と「方べきの定理」が前半・後半のテーマです。まずメネラウスの定理から各線分の比を求め,次に線分の長さから方べきの定理が成り立つか否かを判定し,点と円の位置関係を考える・・・という図形が得意な人にとってはこの流れをつかめれば一本道です。
A:たしかに一本道何ですが、その道が長い!! 前半と後半でそれぞれ、おんなじ思考で済むことを2回ずつ問うていて、道の先へと進めません。これは、第4問もそうですが、同じ思考で済む設問が繰り返されます。その意味では、得点は楽に取れるとも言えますが、私としては「しつこい!!」となる。要するに、次は何? と予想したら、同じ何で、なんか飽きちゃうんですね。GHS長野校の難関大志望の生徒は、日頃やっている問題からすれば、この程度はやはり8-9割の得点に到達していますね。
では、また近々、次の数学IIBの話にお付き合いをおねがいします。 <続>