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GHSの勉強法-数学-

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 GHS卒業生の合格体験記の中に「塾長による最初の二次関数の授業に衝撃を受けた」という記述をよく見かけます。どういう授業に彼らは感動したのでしょうか。詳しくは授業でしか示せませんが、ここで一度そのエッセンス(文章としては実際の授業の10分の1くらいしか伝えられませんが)を公開してみることにします。興味のある方は以下お読みください。 

 

 数学の「二次関数」という分野の中の一つのテーマに次のような問題が出てきます。これらはあえて無秩序に並べています。

 

① 実数x,yがx2-2xy+2y2=2を満たすとき、x+2yの最小値を求めよ。

② 実数x,yの2次式 x2-2xy +5y2+6x-14y+5の最小値を求めよ。

③  実数x,yがx2+2y2=1を満たすとき、2x+y2の最大値を求めよ。

④  実数x,yがx+2y=3を満たすとき、x2+4y2の最小値を求めよ。

⑤ 実数x,yがx2-xy+y2-x-y-3=0を満たすとき、x+yの最小値を求めよ。

⑥ 実数 x,y ,z の2次式 x2+ y2 +z2+xy+yz+zx+2x+2y+2z+4の最小値を求めよ。

 

 さて、もしあなたが数学の教師であれば、この6つの二次関数の問題をどういう順序で教えますか? つまり、どの順で教えると、生徒がこれらの問題の理解を深め、このテーマを体系的に把握でき、したがって類題や応用問題を解いていく学力をつけていくことにつながるでしょうか。

 

《やってはいけない勉強》
 GHSは体系的な学習を強調していますが、逆にその反対の「やってはいけない学習」を先に記すと、上の問題を意味のない順(たとえばこの①→⑥の順)でバラバラに解いていくような学習です。そういう学習をすると、一つ一つの問題の解き方(解法マニュアル)を覚えるだけに終わってしまい、一つ一つの問題が持っている意味(テーマ全体の中での位置づけ)をつかめずに終わってしまうからです。そうすると、ほとんど同じ問題がテストに出たときしか解けず、本質的には同じなのに見た目が異なる問題を出されると全く歯が立たないという、薄い学力しか身につきません。たとえば、⑥が②と同じ問題だ(上位のレベルで共通性を持っている)ということに気づかなくなってしまうのです。

 

《体系的に学ぶとは》

上にあげた6題の問題は次の順で学ぶべきです。

② 実数x,yの2次式 x2-2xy +5y2+6x-14y+5の最小値を求めよ。

⑥ 実数 x,y ,z の2次式 x2+ y2 +z2+xy+yz+zx+2x+2y+2z+4の最小値を求めよ。

④  実数x,yがx+2y=3を満たすとき、x2+4y2の最小値を求めよ。

③  実数x,yがx2+2y2=1を満たすとき、2x+y2の最大値を求めよ。

① 実数x,yがx2-2xy+2y2=2を満たすとき、x+2yの最小値を求めよ。

⑤ 実数x,yがx2-xy+y2-x-y-3=0を満たすとき、x+yの最小値を求めよ。

 

 上の問題全てに共通するテーマ(すべての問題が持つ一般性)は、「実数である複数(2つまたは3つ)の変数からなる数式の値のとりうる範囲(最小値または最大値)を調べたい。その際出てくる数式は2次式の範囲は越えない(大きくはあくまで「二次関数」という分野の中の一つのテーマです)。」ということです。

 では次に個々の問題の間の違い(特殊性)はどういう点にあるかというと、それは「条件と目的式とに少しずつ違いがあって、そこから、解き方、処理の仕方、別解のあるなしの違いが生じてくる」という点です。それを考慮して上に並べた順に学習していくのが良いということになります。少し説明しましょう。

 まず、②がはじめに来るのは、「条件式がない」という点で条件が緩いからです。つまり、「変数は実数」という以外に拘束はなく、それぞれが自由に独立して動ける数だという点に特殊性があります。その点で⑥も同じ性質を持っていますから②の類題だと見ることができ、次に来ます。ここでのテーマはその点(条件の特質)こそが重要であり、2変数か、3変数か、あるいは対称式か否かという点をここで問題にしてはいけません。対称式という特殊性を取り上げるとすれば、最後です。それが体系性です。今ここは「二次関数」という大きな枠の中にあり、「対称性」というのはその外からやってくる特殊性だからです。

 したがって解き方としては一つの文字に着目し、その二次関数と見て平方完成していく流れになります。これも正しくは、ただ《解き方のマニュアル》を教えるのではなく、それはどういうことをやっているのかをビジュアル化して(グラフを描いて)教える必要があります。

 残りの4問は条件式が加わりますが、その中で最初に学ぶべきなのは④です。理由は条件式が一次式だからです。条件式を目的の式に代入して(この場合xとyのどちらを消すと数式がスリムになるかを判断する思考の柔軟性も副次的ですが求められます)処理します。

 次は③ですが、これは条件式が二次式になっていることから条件が少しタイトになり、二つの特殊性が生じます。目的式との兼ね合いから、代入する際yを消すしかない(そうすべき)という点と、条件からxの定義域を吟味しなければならない点です。

 この「定義域を吟味しなければならない」という点について二つの論点が生じます。(1)なぜ③では変数の定義域を吟味しなければならないのか、(2)その定義域をどのように導き出せばよいのか、の2点です。(1)は逆に一つ前の④ではなぜ定義域を吟味しなくてよかったのかと対比させることによって、それぞれの特殊性を浮き彫りにしていく必要があります。それが論理の筋ということであり、系統立てて理解するということであり、その流れの全体がついには「体系」になっていくということの学びの端緒になります。

 次に①です。これは今までの解き方と少し異なります。これまでは、条件を目的式に入れ込んで調べていくという解き方をしています。ところが①ではそれができません(得策ではない)。なぜならば、条件式の次数が、目的式より大きいからです。要は、条件式を目的式に代入できないのです。そこでどうするか。ここでまた《やってはいけない学習》をさせるケースが出てきます。「x+2y=kとおいて、これと条件式x2-2xy+2y2=2との連立方程式が実数解を持てばよいのだから、判別式≧0を解けばよい。」という《解法マニュアル》です。確かにそう解くことになるのですが、これはどういうことをやっているのかをxy平面に視覚化して教えるのでなければ、体系的な理解にはなっていきません。ここに「教師力」の差が出ます。

 そしてそこからより一般化して、ここに“数学らしさ”が如実に表れていることを捉えて、そもそも数学という教科がどういう特徴を持っているのかを説明することも、生徒の今後の体系的な理解に大いに有効になります。

 高名な数学者が「数学とは異なっているものを同じとみる学問だ」と述べたという話を聞いたことがあります。もっと言えば、「異なっているものを同じと見、同じものを異なるものに表現する学問だ」と言ってもよいでしょう。もっともそれは数学に限らないので、ここでは、「数学的に同じと見、数学的に異なる表現をする」と理解しましょう。数学になぜ別解が多々出てくるかというと、この点に大本の根拠があるからです。

 少し話が発展しました。①でこの問題が含んでいるテーマを体系的に理解させることができれば、では同じ考え方でこれまで解いてきた②、⑥、④、③も処理できないのかということになるのが当然の体系性です。それができること、そしてその際問題によっては条件を丁寧に入れ込まなければならないものの出てくることを、やはり視覚化して教えられれば完璧と言ってよいでしょう。

 ⑤は見ての通り①の分かりやすい類題ですから、同じように処理できます。x+y=kとおいて、判別式に持ち込む解き方です。しかし、⑤は①と異なり、さらに「対称式」という特殊性を持ちます。そこから、その対称性を利用して解く特殊な解法が可能となります。

 「対称性」というのは先ほど述べた意味での特殊な性質ですから、二次関数の体系的な理解の流れにおいては最後で(が)よいのです。最後にこの対称性に着目し、特殊テーマとして取り上げれば、⑥も対称性を持っていますから、同じくその対称性を利用した処理の仕方を追加しておくことになります。

 数学は先に述べた性格上いくつか別解が生じますから、では試験の際にどの解き方をすべきなのかという問題が出てきます。その判断をできるためにこそ体系的な理解が大事になります。そしてそれはまたは、与えられた問題の全体像の把握、試験時間との関係でもきまります。それらをすべて加味した全体から判断する力を付けるのもいわば“体系力”の問題になるのです。

 これで、このテーマは終わりです。

 GHSでは入会直後(新年度開講前)に私が以上のような指導をします。ここに取り上げたのは二次関数のテーマの一つですが、実際は二次関数のすべてを私が入会者に対して授業を行います。上の解説はあえて中身には触れていませんが、実際の授業ではすべてビジュアル化し、生徒が数式をイメージで描け、またすべてが立体的にアタマに整序できるように展開します。このように学習した暁には、生徒のアタマの中に、この二次関数の全体像が整然と視覚的に見えていることでしょうし、そればかりでなく、体系性というものの一端が理解できはじめています。それとともに、関数とはどういうものなのか、さらには数学という教科がどういう性格を持つ教科なのかということにも少しずつなじみ始めていることになります。そしてそれは考えるということの共通性ですから、ついにはすべての科目に通じていく“アタマの働かせ方の方向性”を示すことにもなります。そうした展望性に、入会したばかりのGHS生は今までの学習とは全く異なる真っ当な“分かった感”をえて感動するようです。このような学習こそが「本物の学力」を創るプロセスであり、GHSでしかなしえない指導です。

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