以下は、ある雑誌に収録された「医学部入試の変化と予備校の正しい選び方」をテーマにしたGHS村田塾長の対談です。
-近年医学部入試が大きく変わり、それに応じて受験勉強の内容も変わってきたということです。具体的にどう変わり、どのように対策していかなければならないのか、GHS代表に聞いてみました-
ー私大医学部の入試は以前とは大きく様変わりしたそうですね?
村田塾長
昔から医学部は人気がありましたが、さらに拍車がかかって、現在では国公立大学はもとより、私立大学もかなり難しくなりました。
ーそれに伴って起こっている変化があるそうですね?
村田塾長
はい。医学部受験生のレベルが上がり、層が厚くなったということですから、それに合わせて入試問題自体が難しくなってきたことです。
ーそうすると、それに対処する受験勉強の仕方そのものも当然
変わっていかなければならないことになりますね
村田塾長
そういうことになります。この点を私大医学部の受験生とその保護者の方々はぜひ理解する必要があります。
たとえば『勉強の方法』を説くにもレベルがあります。最も浅薄なレベルは「一日12時間勉強しよう!」の類です。失礼ながら昔はこれでも立派な「学習方法」で、予備校によっては「寮に缶詰めにして朝から晩まで○○時間勉強させます!」を売りにできた時代がありました。四十年前はこれでも合格できたのです。もちろん今はダメです。
それから、「まずしっかり基本を学んで基礎力を付けてから、応用力を養おう。」「習ったことを繰り返し反復することが大事です。」という類の「学習方法」があります。言葉としては響きがいいし、正しいことを言っているわけですが、中身が何もないということにお気づきでしょうか。基礎力とは何か、応用力とは何かの説明がありません。おそらくそれを尋ねると、「まず基本の問題集をやって、それから応用問題集をやりましょう。」という漫才のような会話になります。ただ、中学の学習はこういうレベルの「学習方法」の説明で何とかなります。中程度の高校の定期試験もある意味これでクリアできます。
しかし、今の医学部入試では、このような中身のない「学習方法」は通用しません。親たちの時代に東大や京大を受けていた有名進学高校の優秀な受験生が国公立大学の医学部をこぞって受験しているのが今の時代であり、何とその一部が普通に私大医学部受験にも流れ込んでいるのが現代なのです。そこに「反復が大事です!」では・・・・。
ーでは、どういう受験勉強をすればよいのでしょうか?
村田塾長
一度現在の医学部の入試問題を全科目にわたって眺めてみることをお勧めします。こうした問題を解けるようにするためには、まず指導者の実力が本物である必要があります。本物というのは、本当の意味でその科目の全体像を理解していて、受験生に今の入試問題が解ける実力を付けさせるためには、何をどう理解させ、どうすることでどういう学力がついていくかを体系的に分かっている必要があります。
数学で言えば、関数の最初に二次関数という分野をやりますが、二次関数を教えるということは二次関数を教えることではなく、二次関数を通して関数一般、数学一般を教えることでもあり、それはまた数学以外の教科にも通じる普遍的な思考力を養成することでもあるということです。
ーどうもよくわかりませんが・・・
村田塾長
大学入試は高校入試と違って専門性を持ってきますから、受験生や受験指導者だけの狭い世界でしかわかり合えないのは仕方がないところです。そこを悪用すると大変な〝悪問〟〝奇問〟〝珍問〟の類が横行しても、社会問題として取り上げられないということも起こります。実はかつての私大医学部の入試問題はこの類がたくさんあったのです。でも幸い上質な受験生が医学部入試に大挙して流れはじめた関係で、彼らがいわば監査役を果たすことになって良問が増えてきました。その良問でしっかり実力を発揮させるのが予備校の指導者の役割ですが、やはりその指導の中身を一般の方々に分かっていただくのは難しいです。それは医学の専門外の一般人が医学の専門的な説明をされても付いていけないのと同じです。しかし、その専門的な中身は分からないながら、その先生が正しいことを言っている、中身のある先生だな、ということはある程度推察できるものです。同じように予備校から送られてくる資料から中身のあるなしを感じ取ることはできるはずです。
現代はますます個人の自由や主体性に依存する時代に変わってきています。その分私たち一般市民はさまざまな売り込みに対し、自分でその真贋を判断しなければならなくなっています。ネット社会にいる私たちはそれを日々切実に感じていますよね。
医学部受験でもそれは同じだということです。保護者の方が直接受験勉強を分かる必要はありません。ただその指導が本物かどうか、中身があるかどうか、それを判断することはできますし、判断できる眼力は持たなければならないはずです。
その際、一番注目すべきなのは、出身者の合格体験記です。合格体験記(本人が書いているかどうかしっかり見極めることも現代社会に必要な眼力です)は、何をどう学んでどういう学力がついたのか、本人の学力がそのまま出ます。合格体験記を読み比べてみると、どういう指導を受けてきたが分かってたいへん参考になるはずです。
ーでも合格していれば、みなちゃんとした学力がついたということではないですか?
村田塾長
残念ながら、受験でだけ通用する(受験でしか通用しない)学力をつけてしまうということが起こるのです。つまり、入試問題には問題のパターンというものがある程度あって、いわばパターン認識の訓練をやらされて合格してしまうことが現実としてあります。とくに中位以下の私大の入試では少なからずあります。数学も物理も化学も生物も分かってはいないのですが、標準的な問題は解法を覚えこんで見事に入試をクリアしたというケースです。合格したことはおめでたいのですが、さて大学に進んで膨大な医学の治験・知識に対応できるか、国試に苦労せずスムーズに合格できるかというその先の問題をしっかり見ることも受験指導の責任ではないでしょうか。
ーなるほど、そこまで見据えるのが若者を育てるということなのですね。
ありがとうございました。