さて、この「粒子が閉じ込められていれば粒子数保存則が成り立つ」という学びを得たところで、問題集のほかの問題を眺めてみましょう。66-70番まで引用してみます(先の問題番号は64番でしたので、本当は65番から始めるのがよいのですが、65番は気体分子運動論という別のテーマの問題でしたので、ここでは66番から始めます)。
いかがでしょうか?全て「粒子が閉じ込められているから、粒子数保存則が成り立つ」ということが、細かい問の内容を見ずともわかりますね。
しかし、問題ごとに微妙な違いがあります。実は64番の問題を解いた後に66番の問題を解くのは、粒子数保存則を訓練するための順序としては適切ではありません。粒子数保存則を訓練するための学びの順序としては、68番,69番,67番,70番,66番というのが適切です。
68番,69番は、シリンダーの中に封入された(=粒子数保存則が成り立つ)気体の状態変化をグラフで表しています。このグラフから体積と圧力を読み取れば、粒子数保存則を立てていくことが出来ます。
対して67番,70番の問題では、ピストンにかかる力が変化しており、かつその変化に規則性があるため、それを表現する式がもう一つ必要になることから、演習としては後に来る方が適切です。
最後に66番ですが、気体の混合によって、容器12の中の粒子の数が変化しています。ここで、「容器12の合計の粒子数は保存しているな」ととらえることが必要で、これはより応用的な問題となります。
ここで皆さんに実感してほしいのは、「この順序の合理性を理解できるようになっている」ということです。つまり、粒子数保存則について理解が深まり、すでに応用への入り口に立っている、ということです。ここからさらに進んで、自分で演習の順序を作り出して、自学自習ができるようになっていけば、物理が最も簡単で、得意で楽しい科目であると実感できる日はそう遠くはありません。
最後に、63番の問題を見てみましょう。
この問題は文中に「空気の自由な出入りがあり」というところから、「粒子数保存則」が成り立たないということが一見してわかります。ということは実はこの問題では「ボイル・シャルルの法則」も成り立ちません。参考書はこのことについてどのような説明をするのでしょうか。ボイル・シャルルの法則は、閉鎖系で成り立つものであり、粒子が出入りするときには成り立たない、という「但し書き」をつけるのでしょうか。そんなことをするくらいであれば、最初から粒子数保存則を使えば、この問題をわざわざ特別視しなくても、「粒子数が保存していないため、粒子数保存則は使えない」で済むのです。
最後に―GHS卒業生の声―
「入試問題というパズルを解くためにはまず適切な「視点」を見つけ、そこから見えてくる適切な「かたまり」を選び出していけばよいということを私は物理から学びました。特に、京都大学の数学の問題は誘導がないことが多く、「まず何をすればいいのかわからない」ことが多かったのですが、物理のおかげで全ての問題に対しての思考の順序を明確にすることができ、結果的に物理での進歩が数学の進歩となりました。また国語や英語の評論文においても、それを書く筆者は何かを主張するにあたって必ず「視点」を書いてから議論に入っているということに気付き、これらを物理の問題のように扱えるようになりました。私が一年でここまで成長できたのは物理のおかげです。」
「私は入塾前、物理が一番嫌いな教科でした。公式の暗記や問題の暗記ばかりで現象をとらえようと考えられていなかったからです。体系物理・体系物理演習をしっかりイメージを描きながら理解すれば、物理の問題を解く楽しさがわかってくると思います。物理は他の教科に比べ覚えることも少なく、やり方が決まっています。問題を表面的に見ずに因果関係を捉えていくことができれば、得意になれます。」
「全ての運動は単純な運動の組み合わせになっているので、理にかなった配列になっているセメントで、その素である単純な運動をしっかり理解していきます。セメントに沿って学ぶ事で、理解を深めていくのです。
「易しい問題を難しく解くことによって、難しい問題を易しく解く」【思考訓練の場としての体系化学より】。つまり、私が捉えている解釈としては、易しい問題・単純な問題だからこそ、その問題や現象の因果関係や解くためのエッセンスが見えやすいので、それらを考えながら解いていく事で(これが「難しく解く」の意味かなと思います)、難しい問題を易しい問題の組み合わせと見られるような力を養っていこうということ(「難しい問題を易しく解く」の意味かなと思います)だと思います。何事も単純なものにこそ、その物事の性質が詰まっているってことです」
「物理は原理原則が自分で展開できるようにして、運動のイメージと式が頭の中で連動できるようにすることが大切です。イメージし難く、公式が比較的多い単元もありますが、つながりを掴み、全体像を描けるまで深く理解できれば怖いものなしです。
体系化学と体系物理は今まで学校でやってきた授業とは全く違っていますが、習得すれば凄まじい威力を発揮します。」