もう40年近く教師の仕事をしてきた。
それだけたくさんの生徒(したがって親たち)を見てきたということでもある。
これまでの経験でひとつ面白いと思っているのは、
本当に分かっていて知性の高い生徒は、感謝の心をもしっかりと育てているということである。
英語に「appreciate」という単語がある。
辞書には、「正しく認識する、鑑賞する」などとともに「感謝する」という意味が載っている。
要はこれらの意味は重なるのである。
物事が正しくわかれば、感謝の心が生まれるのだ。
なるほど自分が教えられていることがすごいことだとわかり、
親であれ教師であれ、相手の存在のすごさと素晴らしさと稀有さが分かり、
自分の独力ではそれは到底獲得できないものだったと、その「有難み」をわかってくる。
感謝できるとは分かることであり、分かる知性が育っているということである。
それは同時に大変さを知ることでもあるから、
大変さが分かってくると、その有難みが分かってくる。
だから何も分かっていない最初は、「医学部に進みたい、東大を受けたい」と簡単に言う。
何も分かっていないし、当然のことながらありがたみも分かりようがない。
その状態では当然に学力の成長も亀の歩みである。
しかし、あきらめずに、頑張り続ける者は、少しづつ分かり始めてくる。
いろいろと分かり始めてくる。
勉強の面白さも、そして大変さも・・・。
大変さが分かり始めてくると、それは掛け値なしに「大変!」なのだから、
苦しくなってくる。
だいたいそれがこの時期、つまり9月、10月である。
大変さにつぶれそうになるのがこの時期である。
それは分かってきたからなのだが、そんなことより「苦しい」ことが先に立つ。
受験生の頑張りどころである。
これを頑張った先に、appreciate の段階がやってくる。
そこまで頑張った受験生は大きく成長することになる。
知性とともに感謝する心が育っているのであるから、
人間として以前とは別人になっているのである。
それはそういう大変さをくぐった者にしか分からないものである。
その価値を分かっている親は、子供の受験のこの1,2年に本当の有難みを感じてくれる。
これまでも何回となく感謝のお言葉をいただいてきた。
親の知性が高いのである。
GHSはそういうコミュニティを創ってきた。
GHSのコミュニティが少しずつしかし間違いなく膨らんでいることに、
こころから感謝している。