私は多田先生の添削は受けたことがなかったのだが、
浪人時代『思考訓練の場としての英文解釈』は座右の書であり、
これで英文のみならず、文章読解一般の実力を養ったと言ってもよい。
大学進学後はオリオンの情報からは疎くなったが
時代の流れでオリオン社が閉じたことは知っていた。
時は流れて私がGHSを開校し、
広告代理店として交流を持つようになった育文社の山田社長と話していた時に
ひょんなことから育文社が
『思考訓練の場としての英文解釈』を出版していることを知り驚いた。
経緯を伺うと
オリオン社の鈴木英也社長とお知り合いで
オリオン社が閉じる際『思考訓練の場としての英文解釈』と『同 現代国語』を引き継いだとのこと。
また旬報『ORION』(何しろ昭和33年から平成2年までの膨大な量である)も
引き取って保管してあるとのこと。
何と、貴重な文化遺産が残っていたのである。
昭和の最上位の受験生を
大学教授はじめ教養高き教師たちが
情熱を注ぎこんで指導する営為の中で生み出された知的財産を
この世から消してしまったならば取り返しのつかない大きな損失である。
山田社長が高齢で育文社を畳むことになった際、
GHSが育文社の持つオリオン関係の全てを引き受けたのである。
旬報『ORION』は紙の印刷物であるから劣化が著しい。
たまたま京都大学の教授であった佐藤卓己氏から連絡があり
同じく昔オリオンの会員であったよしみでお会いし
旬報『ORION』を京都大学教育学部図書室に寄贈する流れになったのである。
山田社長が旬報まで引き取って保存されていたということがどれほど賢明な見通しであったか・・である。
これでオリオンの知的財産が国立の大学で永遠に保存されることになったのである。
オリオン社は初代の鈴木英也社長、2代目秀彦社長がすでに故人であり、
秀彦社長の奥様が北海道でご健在であるので
この経緯をお知らせし、たいへんお喜びいただいた。
私もほっとしているところである。
そのうえ、佐藤卓己氏が『受験戦争のメディア史』を上梓され
人々が広く知ることになった今
その価値はいっそう高まっていくだろう。
つづく