『思考訓練の場としての英文解釈』という受験参考書がある。

発行元の育文社によると、このところ全国から注文が急増しているそうだ。

実は、これは30年以上前の受験生が使っていた名著で、

私自身も、非常に思い入れがあって、

当時のものをいまだに書架に置いてある。

あの時代、受験生の多くが

通信添削という学習手段を取り入れていたのだが、

東大を中心とする難関大学を目指す上層の受験生は

一つはZ会、もう一つはオリオンのどちらかをやっていた。

Z会は大組織であるが、

オリオンはこじんまりとしたアットホームな雰囲気の小所帯で、

私はオリオン派であった。

そのオリオンで過去の英語の通信添削の問題と解説をまとめて

一冊の本にした参考書があって、

オリオン会員だけが購入できる。

それが『思考訓練の場としての英文解釈』であった。

ここで扱われている英文は、

教養人が書いた、思想と言えるレベルの内容を持った英文であり、

最近の大学入試の英語長文で使用されているような

長いだけで、内容のない、軽いノリの英文とはわけが違う。

その内容豊かな英文を、

稀有な秀才であり、

多士済々の知的牙城であったかの東大仏文科に学んだ

(かつての東大仏文科についていつか紹介したいと思っている)

多田正行先生が解説しているのであるから、

知的水準は他と次元を異にしている。

近年、日本の学生の学力低下が言われ続けているが、

こういう本に対する需要が増大してきていることには

何か希望を感じないわけにはいかない。

少数とは言え、知性の高みへの渇望を持った若者が増えてきているということは、

実にうれしいことである。

さて、この『思考訓練の場としての英文解釈』の

いわば弟分の位置を占めるものとして

GHS理科主任天野先生の

『思考訓練の場としての体系化学』が出版されることになった。

『思考訓練の場としての英文解釈』と並んで出版されるものであるから、

知的水準において一目置かれるべき書ということである。

GHSのホームページにこの書のコーナーを作成中である。

この書の成立・出版のいきさつについては、そこで公開していきたいと思う。

いずれにしても、日本の若者の本質的な知的水準の向上を意図してきたGHSが

『思考訓練の場としての英文解釈』の志を継ぐ形で

後に続くことになるのは、光栄であるとともに

確実にその重責を果たしていくことになるはずである。

真っ当に高き知性への憧れを持つ若者との輪を構築していければと思う。

出版は10月末か11月になると思われるが、

HPで少しずつ、紹介していきたいと思うので

期待していただきたい。