私は浪人経験者なのであるが

変り種で自宅浪人であった。

いろいろな事情があったからで

人に勧めようとは思っていない。

ただ、先日ある生徒に

質問する場がなくて困りませんでしたか、

と尋ねられた。

数学や英語をやっていてわからないことが出てくるはずで

その時自宅浪人の場合はどうしたのかという質問である。

その質問を受けて初めて

なるほどそういう問題があるのか、と思った次第である。

つまり自分が浪人のとき、質問できなくて困ったなと思ったことが

一度もなかったのである。

それはすべてスイスイわかったからという意味ではない。

分からないことを人に聞こうという発想がなかった

ということなのである。

自分で解決するものだと思っていたということである。

もちろん物事には一長一短があって

人に聞けなかったために回り道した面も多かったと思う。

しかし、自分で解決しようとしたから

力がついた面も多かったのである。

今情報の得やすさと少子化による周りの親切さとで

人に聞けるメリットは昔に比べて各段に良くなっている。

しかし、その分自分でよじ登るたくましさが弱くなっていることは

懸念材料である。

若いときに必要なのはすぐに得られる情報ではなくて

なかなか得られない飢餓感であり、

自力でよじ登らなければならない逆境のほうであろう。

ここを受験生に間違えて欲しくない。

表面的な利便性、即効性のある効果と

本当に大事な実力とは別であること

むしろ逆の衣を着ていることを見定めて欲しい。

それを教えることも大人の責務であろうと思うが

いかがなものであろうか。