多田正行先生の『思考訓練の場としての英文解釈』(3)[育文社刊]が

先月発売されるや、一か月にしてもう第一刷1000部が売り切れである。

『エコノミスト』(毎日新聞社)先週号でも紹介されている。

硬派の受験参考書としては異常な売れ方だという。

そこに書かれている多田先生の文章を読むと

改めてその精神の崇高さに身が引きしまる。

半世紀前の受験生と

いかに真剣勝負でその添削に取り組んでいたかがわかるのである。

「よく受験体験記に、英語は参考書は○○と△△をやれば充分などと馬鹿げたことを書く奴がいるが、

本当に勉強していればこんな卑劣なことは言える筈がないのだ」

と痛烈である。

「『日本歴史全20巻』『日本古代史全8巻』などを自分で教科書に選定して使えば・・・」

とスケールが違う。

書店の学参コーナーに行けば

どこの予備校に通って、どの参考書を使って、○○大学合格!

のオンパレードである今の受験世界は

あまりに幼稚である。

これだけ大学受験が幼稚化してしまうと

日本の将来はどうなるのであろうか。

『思考訓練の場としての・・・』シリーズは

まさにこうした時代の悪しき流れに

大きくくさびを打つためのものである。

市川先生の『思考訓練の場としての漢文解析』も

発売半年で第一刷が売り切れとなっている。

こうした読者が多田先生の精神を多とし

地道に受け継いでくれる限り

希望の火は灯りつづけるに違いない。