勝負の世界に
「ウソ勝ちはあるが、ウソ負けはない」という格言がある。
実力はなかったのだが、たまたま勝ってしまうということはあるが、
完璧な実力があるのに負けることはありえない、
負けたということは何かしらの実力不足があったからだ、
という意味である。
受験についてもかなりの程度当てはまる真理のように思われる。
「ウソ勝ち」についてはまた別の機会に述べるとして
今日は「ウソ負けはない」ということについてである。
最近いろいろな相談を受けていて
気になっていることがある。
それは、模擬試験の成績が良いのに
大学に合格しないというケースである。
これは一種の「ウソ負けはない」である。
何か問題があるのだ。
本番に弱いというのでもないケースである。
実は現在の受験勉強が
入試問題を解くためのマニュアル習得の学習になっている現実がある。
数学の問題は解けるが、実は数学は分かっていない。
車の運転はうまいが、車を分かっていないといえば、保護者の方にはわかってもらえるだろうか。
車の場合はそれでよいのであるが、
学問の世界はそうはいかないのである。
本当は真理を知ることが喜びで勉強をやるはずであるのに
目的が入試問題を解くことに変わってしまい
入試問題の特徴を知り、入試問題のパターンを整序し
マニュアル習得、とりせつ暗記の学習となる。
何という歪みであろうか?
しかし、本人はもとより、
今の日本の教育の現場でも
この本末転倒に気づく人は少数なのである。
個人にとっては別として
日本社会にとっては幸いなるかな
医学部入試がたいへん難しくなってきて
マニュアル習得では合格できなくなってきた。
さて、受験生諸君、
脚下照顧し、自分の学習の本文を見つめなおしてほしい。
もしその歪みに気づいたならば、できるだけ早くまがい物の世界を脱し、
本物を求めるべく、正しい知の歩みへ進路を変更してほしい。
どんなに素晴らしい解法をどんなにたくさん知っていたとしても
それは学力ではないのだということに気づいてほしいと願う。