今年も国立大学の入試が実施され、入試シーズンもピークを迎えている。
すべての大学を見たわけではないが
幸い、国立大学の入試問題は今まで通り重厚な問題が多く、
全体としては受験生の実力をそのままに測る良い問題だったようである。
大学入学共通テストが「思考力を見る」との方針を打ち出したものの、
試験時間が短く、思考力というよりは、瞬発的な情報処理力に傾いたきらいがあり、
英語などは中学生レベルの内容の英文がただやたらと長いだけで、
大学受験生の学力を測るという目的から見れば、
首をかしげたくなる問題であっただけに、
国立大学の入試問題が安定感を保ってくれたことにほっとしている。
入試問題というのは、その大学の表現でもある。
どういう学生に来てほしいと思っているのか、
その大学の理念や哲学の表現であるし、
大学の教授陣のレベルの表現でもあるし、
大学入試に取り組む真摯さ、本気度の表現でもある。
やはり優れた大学は優れた問題を作るし、
その当然の結果として優れた学生が集まるのである。
大学入試が受験勉強のあり方を決めてしまうし、
高校での授業のあり方を決めてしまう。
それがついには日本全体の知的レベル、
将来の日本人の質さえ規定していく重大性を持っていることを
大学はしっかりと認識すべきである。
そういう点で、
日本の大学全体としてはまだまだ貧相な入試問題がある。
どういう意図で、学生のどういう能力を見たくてその問題を作っているのかが分からない問題、
というよりもまじめに作っているとは考え難い問題がまだまだある。
大学入試問題を検証する何らかの組織や
大学入試オンブズマン制度のようなものが生まれないものか、
若者の一生を左右する受験の世界にいる者として
心からそう願わずにはいられない。