いよいよ大学入試が始まった。
まだセンター試験の詳細なデータが集まっていないので
全体像のコメントはできないが、
私なりに目に付いた点をいくつか。
そもそも、センター試験はよくない問題である。
良くないというのは、
頭が軽くなる問題のオンパレードという意味である。
その前提の中で、少しでもまともになってほしいという思いが
常々あるのだが、
その点では、今年英語で会話文がなくなったのは評価できる。
大学生になるための試験で、
どうして外国の会話を、しかも筆記試験で出題する必要があるのだろうか。
二つ目は、国語の第2問。
これはいつも小説文が出ることになっているのだが、
いままでは現代作家が多かった。
私は現代作家の文章を読むことはないので
センター試験の問題を読んで、
この作家はこういう作家なのか…と
始めて知るのだが、
読んで感心するものよりは
寒心するものの方が多い。
特異な感性を持つ主人公の繊細な心理を問題にすることが
全国共通の国語力テストの内容として適切だとは
思われないのである。
今回は翻って夏目漱石が出た。
やはり、ここらで原点に帰るのはよいことだと思う。
さきごろ、芥川賞が決まったとの報道があった。
おそらく受賞作を読む時間は私にはないが
ただ、その受賞者が、若いときに古典文学をしっかり読んでいる
という話に好感が持てた。
人間、土台創りというのはすこぶる重要なのである。
大学入試も
人生の土台創りをする世代に課す試練なのだ
という肝心なことをしっかり押さえた上で
出題内容を吟味してもらいたいものである。
今、『カラマーゾフの兄弟』の新訳が出て
売れているらしい。
そのほかにも、古典文学の人気が上がってきているという。
閉塞感というか、斜陽感というか
そういう空気が社会を覆うときには
原点に帰ろうとする本能が働くものなのかもしれない。
それによって浮き足立った人々の認識が鎮まるものならば
歓迎である。