だいぶ間が空いてしまった。
二日前のテレビ番組が興味深かった。
アメリカで数学とコンピューターを得意とする“秀才”たちが
今回の金融危機・経済危機につながる
金融工学を生み出していった過程を追う内容であった。
とにかく“大秀才”である。
難しい数式をすいすい操り、
自信に満ちて早口でしゃべる。
その中に、韓国系の若い大秀才が登場してきて
彼に対する説明として
「その大学の歴史で最も短い時間で首席になった」
というような表現が冠されていた。
これは、実は大変怖いことである。
たとえば、職人芸や芸術技を短期日で身に付けることはできない。
短期日で身に付けられるものは
底が浅いものなのである。
彼らが若くして大秀才になれるのは
現実から乖離したモデル世界を設定して
その世界で通用する数式や記号を扱うに過ぎないからなのである。
ところがその世界でしか通用しない法則や数式を
生身の現実世界である経済にも
そのまま当てはめようとする。
生身の人間世界には
物質世界のモデル化から引き出した法則は
当てはまらない。
モデル世界で遊んでしまった人間は
特急での移動に慣れてしまって
普通(鈍行)での旅の味わいが理解できない。
「どんこう」という響きを味わうことができないのである。
今回の経済危機を目の当たりにしてさえ
上記の大秀才は
「金融工学の失敗は、
新たなより高度な金融工学を開発して
その失敗を埋めていくほかない」
と、真顔で語っていた。
ぞうっとしたことであった。