先日、新幹線に乗っていると

場内アナウンスが何度か繰り返される。

「自由席にお座りの方は、荷物を網棚の上にお載せください。

少しでも多くの方が座れますよう、ご協力お願いします。」

というものだった。

指定席車両にいた私は、意味がよく理解できなかった。

「どういうことだ?」

すると、女房が、

「荷物を座席においている人がいるのよ。」と教えてくれた。

そういうことかと納得すると同時に、

腹立たしいというか、あきれるというか、情けないというか

どうしてこんな世の中になってしまったんだろうと

考え込んでしまった。

自分の荷物で座席を占拠し他人を立たせておいて平気でいられるとは。

自分のことしか考えていない人が増えているのは事実であろう。

前回の問題と共通しているのは

やはり他人のことを考えることができない点である。

無論、現在でも相手への想像力が正常な日本人の方が多いであろうが、

仮に、自己中心的な人が社会の1割だったものが

2割に増えたとしたら大問題である。

今はそういう状況になりつつある怖さがある。

他人を思いやる心は生まれもって出てくるものではない。

どこかで何らかの形で育てなければならないものである。

残念ながら、それを育てる場である家庭、学校が

その機能を衰えさせつつあるのだ。

さらにその背景には、社会全体が機能不全に陥っているという問題がある。

しかし、日本人もそんなに愚かな国民ではあるまい。

ここらで、みんながもう一度自覚を持つことによって、

「わが身をつねって、人の痛さを知る」

という基本を学びなおしていくべきであろう。

現在は、情報化社会であるだけに、

悪いことがすぐに広まる。

しかし、逆から言えば、その気になれば

良いこともすぐに広められるということでもはずである。

社会的に影響力の大きい放送局当たりが

こうした役割を率先して果たしてくれないものだろうか。