日本経済がバブル崩壊以降、「失われた20年」と言われてはや久しい。
先日テレビで、1997年の山一證券の自主廃業のドキュメンタリー番組をやっていた。
成功物語とは逆の内容であるから、
私心を超えた幕末の英雄たちとは違って
保身に汲々とする残念な現代日本の人間たちが続々登場するのは致し方ないことであったとは言え、
インタビューアーが最後に
当時の大蔵省・日銀の担当者課長・局長クラスの人物に
「結局私たちはこの事件からどのような教訓を学んだのでしょうか?」
と尋ねると、
その元エリート官僚曰く
「そうですね、やはり、現実から目を背けないとか、
先をよく予測しながら早めに対策を立てるとか・・・。」
・・・・・
私は唖然とするばかりであった。
日本の秀才中の秀才であるエリート官僚がこのレベルの回答しかできないのか・・・
と。
もしかすると、これが現代日本の大人の質を象徴しているのかもしれないのである。
今年表ざたになった私大医学部の不正入試の実態も
現代日本の大人の所業である。
本当は入試問題の質についてもマスコミに取り上げてほしいところであるが
こればかりは専門的な内容になるので
たとえば数学の問題がどう悪いかを社会全体で共有するわけにはいかず、
残念でならない。
こういう問題を出題してどういう実力を測ろうとしているのか
大学教官の質を疑問に思う問題が数学に限らず多々あるのが現実なのである。

日本はもはや昭和のような勢いのある成長期をとうに終えている。
日本がGDPにおいて再び中国を抜き返すなどということは起こり得ない。
その意味するところは、それだけ日本はこれからは量的な成長ではなく
質を求めていかなければならないということであろう。
それはまず大人がまともな価値判断ができることである。
目先の利益ではなく、本物をもとめて歩まなければならないということである。
それはわれわれ教育の世界にいる者は
若者に、中身のない表面的・形式的処理能力ではなく、
「本当の学力」「本物の実力」をつけてやることであり、
まっとうな実力を持つことでたくましく生きていける力を授けてやることであろう。
そして保護者はしっかりと真贋を見分ける力をもって
目先の利益ではなく
長い目で見て、自分の子供が将来にわたって活躍できる力を付けてやることであり、
そのために何をすべきかを考え、行動することであろう。

まもなく本格的な入試シーズンがやってくる。
それはいろいろな意味で若者の将来を決定づける大事な時期である。
その責任は現代の大人にあるのである。