「共通テスト」の結果が明らかになってきたので、少し触れておきたい。
全国平均はさすが伝統ある予備校であるSの予想が正解に最も近く、
大学入試センターの中間発表によると、平均点は昨年とあまり変わらないか
やや上昇という結果であった。
私は下がると予想したので、やや意外であった。
大手予備校が出すデータリサーチの資料を見て謎が解けた。
全国の受験生の点数の分布(900点型)を見ると、
昨年と比べて
正規分布のピークの位置(ほぼ620~630点)は変わらず、その山の部分の高さが高くなった(人数が増えた)一方、
それより点数が上の部分と下の部分が同じ割合で減っている。
要は昨年よりも分布が中心に集まったのである。
その分、国立大学医学部を受けようとする上位の受験生の層が薄くなっていて
昨年と同程度の点数なら、
むしろもっといい大学を狙えるという状況になっている。
個別の科目に目を移すと、まずい現象がみられる。
社会と理科の中での科目間の平均点の格差の大きさである。
社会では「倫理政経」69点に対して、「政経」51点という激しい開きがある。
理科では「生物」73点に対して、「化学」53点、「物理」59点という異常な開きである。
さらに悪いのは、生物の問題を見ると、
この平均点の高さは結果としての高い点数ではなく、
意図的に高くなるように作問されている。
近年、高校の生物が膨大な量の知識を求められる科目になってきて
受験生が敬遠している現状が問題になっていた。
受験生を引き戻す常套手段が「共通テスト」を易しくすることなのである。
「常套手段」というのは、以前社会のメイン科目が「世界史」に変更になった時にも採られた方法だからである。
しかし、これは
一回の受験に人生を掛けている受験生を翻弄する許しがたき大人の恣意である。
前回も述べたが、日本の教育行政の質を測る試験が必要であろう。
さて、私大医学部の一般入試がすでに始まっている。
まじめに挑んでいる受験生のためにも
良問のオンパレードを望みたい。