今は国立大学の合格発表待ちの期間である。
受験生は発表まで落ち着かない日々である。
自習室から出てきたK君に
「何を勉強しているんだい?
もう受験も終わって発表を待つだけだから
やることがないだろう・・・。」
と声をかけると
「古文をやってます。
僕けっこう古文が好きなんです。」
との返事。
医学部を受験した彼が受験日程も終わり、
受験のための必要ということではなく、
好きだから古文を勉強している。
いいことだなあ、とつくづく思う。
かつて私が受験を終わって大学に入った後、
もう少し勉強しておきたいなあと思ったのも
古文とそれから漢文であった。
古代の人々の考えや心の躍動を知るのが面白かったし、
とくに漢文は人生訓的な意味で学ぶことが多い。
本来はすべての教科が
第一義的には、受験のためではなく
教養として、知的渇望として学ぶべきものである。
K君がそういう意識で受験が終わっても
なお面白そうに古典を読んでいる姿に
妙な感動を覚えたことである。
おそらく彼は今年一年他の科目についても
あくまで知的興奮のもとに学んできたのではなかろうか。
大学の合否は別にしても
この一年彼は大きな財産を自分の中に積み上げたに違いないのである。
こういう浪人の一年間は本当に価値がある。
医学部に進んだ後はなかなかにそういう時間や環境を持てない。
きっと将来この財産の価値に本当の意味で気付くときが来るはずである。

3/7 追記:K君、見事に秋田大学医学部に合格!
いろいろ辛い時期もあったがよく頑張りました。
そして充実した一年間を過ごしました。
心から、おめでとう!